オリジナル商品化に向けたペット用品OEM工場との試作プロセス

はじめに：ペット用品OEMの新潮流

ペット市場の拡大と共に、オリジナル商品を展開したい企業や起業家が急増しています。

その中でも、OEM（Original Equipment Manufacturer）工場と協力し、自社ブランドの新商品を開発するケースが目立つようになりました。

特にペット用品分野は、ニッチなユーザーニーズが細分化されており、独自性の高い商品で勝負することが求められています。

今回は、ペット用品のOEM商品開発で核となる「試作プロセス」に焦点を当て、現場経験を踏まえながら具体的な進め方や成功のポイント、さらには業界特有の課題や動向も解説します。

OEM開発の全体像とは

OEMとは、発注側のブランドで販売する商品を製造委託することです。

自社で製造設備や技術がなくても、市場ニーズに合わせた商品開発が短期間で実現できる方法として、多くの企業が参入しています。

しかし、製造業の現場では「設計・材料調達から生産・品質保証」まで幅広い知識と地道な調整作業が必要になります。

特にペット用品は、安全性や耐久性、素材選定の厳しさに加え、感性やトレンドも商品の命です。

よって、OEM工場選びから設計・試作・量産まで、一連のプロセス全体を理解した上で臨む姿勢が問われます。

試作プロセスが持つ意味

なぜ試作が重要なのか

試作は、アイデアが現実の商品になる第一歩です。

設計段階でイメージしていた形状や機能が、実際に具現化した時に初めて気づく課題や改良点が噴出します。

特にペット用品は、動物の安全性・快適性を考えると、実際に使用した際の「使い勝手の良し悪し」が大きな評価基準となります。

そのため、ラフスケッチやCADデータだけでなく、試作品をもとに実際のペットによる検証や社内外の意見集約が不可欠です。

OEM工場との役割分担

試作プロセスでは、発注側（バイヤー）とOEM工場それぞれの役割が明確に分かれます。

バイヤーは「どんな機能や見た目が欲しいか」「どの価格帯を想定するか」など、企画・仕様をクリアに伝える必要があります。

逆にOEM工場は、図面やサンプルの仕様に基づいて「実現性やコスト」「量産時の品質安定性」など技術的判断を加えます。

双方のコミュニケーションミスがそのまま商品力や納期、トラブルの有無に直結するため、「何を・どこまで・どう表現するか」現場目線の調整力が重要です。

ペット用品OEMにおける試作プロセスの実際

1. 開発初期での要件整理

OEM開発で最も陥りやすいミスは、「何を作りたいか曖昧なまま工場に丸投げする」ことです。

例えば、「環境に優しい猫用ベッドを作りたい」という企画があったとします。

この時、「どの素材を使うか」「どんなサイズ・形状か」「洗濯耐久性は？」など、具体的な仕様を洗い出す作業が不可欠です。

現場では、『ペルソナ設定（ターゲットユーザー像の明確化）』『カタログや展示会での競合調査』『SNSや口コミでペットオーナーの不満点抽出』など、事前リサーチを徹底する企業が成果を上げています。

2. OEM工場選定の目線

世の中には数多くのOEM工場がありますが、全てがペット用品に精通しているわけではありません。

特に昭和的なものづくり精神が根強い中小工場ほど、「大量生産の慣習」「柔軟な設計変更に弱い」「試作要求に消極的」といった特徴がみられます。

選定ポイントは、次の3つが柱です。

– ペット用品の実績（特に該当カテゴリー）
– サンプル対応や設計変更への柔軟さ
– 材料調達や検証体制の充実度

最初から複数社に打診する「サンプル相見積もり」も、コストと品質の両面から比較検討する上で欠かせません。

3. 試作〜サンプルフィードバックの流れ

ペット用品の場合、少ロット多品種の傾向があるため、1回目の試作で想定通りの仕上がりになることは稀です。

素材サンプルや簡易モックアップ、部分的なパーツの試作品など、段階的な“プロトタイピング（試作評価）”が一般的です。

この時、コストをかけ過ぎず、かつ評価者（バイヤー・顧客・ペットオーナー）から「ここがイマイチ」「もう少しこうしてほしい」と忌憚ないフィードバックを集めます。

OEM工場側も、「量産ラインで生産可能か」「歩留まりやコストは想定内か」など、量産視点のコメントを併せて進言します。

4. 改善サイクルと量産設計への着地

試作後のフィードバックを元に、設計修正や仕様変更を重ねていきます。

ここで昭和型・アナログ工場にありがちな“属人的ノウハウ”が障害となる場面が多いです。

たとえば、「担当者の経験則だけで判断」「図面にない細部を現場任せ」などは、情報伝達ミスや品質ばらつきの温床となります。

現場を知る筆者としては、設計変更点や仕様の根拠を『指示書』『工程表』『品質基準書』など、ドキュメントで明示して合意形成することがベストだと推奨します。

また、最近ではIoTやデジタル化が進む一方、小さな工場ほど「FAX・電話・手書き伝票」が日常です。

このギャップを埋めるためにも、コミュニケーションルールや検証データのデジタル共有推進がこれから一層重要となります。

現場のプロが語る、成功する試作プロセスの秘訣

1. 理想論と現実の橋渡し力

バイヤーが描く理想の商品像と、現場の工場が実現できる工程やコストには乖離がつきものです。

「できる・できない」ではなく、「どうすればできるか」を一緒に考える“ラテラルシンキング（横断的思考）”が、OEM開発成功のカギとなります。

たとえば「コスト的にこの素材は無理だが、類似のこんな素材なら量産可能」「この部分は設計を簡素化すれば歩留まりを上げられる」といった代替案提示が重要です。

2. 適度な現場同行と一体感醸成

積極的に工場現場に足を運び、現場担当者と直接顔を合わせることで、「なぜこの設計なのか」「なぜこの手順が必要なのか」背景や意図を共有できます。

現場目線のリアルな意見や悩みを汲み取りつつ、バイヤーの思いも伝えることで“共創型”の関係構築ができます。

古き良きアナログ工場ほど、こうした人間関係づくりが量産や長期的な信頼に直結します。

3. 小さなPDCAと情報の見える化

大規模自動化工場では「データで判断」「書式統一」が進んでいますが、町工場型OEMではアナログの壁が依然として厚いです。

そこを補うには、試作ごとに「QCD（品質・コスト・納期）」チェックリストを設計し、記録・評価・改善サイクル（PDCA）を回す地道な姿勢が不可欠です。

また、チーム間での情報共有ミスを避けるため、「トレーサビリティ管理」「変更履歴の見える化」「サンプル現物・デジタル写真管理」など、小さな工夫が最終的な成功に繋がります。

今後のOEMペット製品業界はどう変わるか

1. サステナビリティと企画力の両立

環境配慮素材や動物福祉への配慮は、今後ますます重要な評価軸となります。

単なるOEM生産だけでなく、「ユーザー目線の商品設計」「ストーリー性のある素材選定」がブランド競争力に直結します。

2. DX・自動化vs. アナログ現場の二極化

大手化学素材・繊維メーカーなどではIoT活用や自動化ロボット導入が進んでいますが、一方で地方のOEM工場はアナログ運用にとどまっています。

発注側は、両者の得意・不得意を見極め、必要に応じてデジタル分野の支援や教育もセットで提案する視点が今後求められます。

まとめ：バイヤーとOEM現場の“共創”が未来を拓く

ペット用品をはじめとするOEM開発は、単なる“商品発注”ではなく、“理想と現実をすり合わせて共に創る”ものです。

バイヤーには現場のリアルな制約やノウハウを理解した上で、柔軟にアイデアを形にしていく力が、OEM工場には市場変化に対応しながら技術力を磨き上げ、情報共有や改善活動を地道に積み重ねる姿勢が求められます。

あらゆる壁を超え、現場で培った経験から新しいオリジナル商品を世界に届ける、その一歩が試作プロセスです。

今後もこの現場目線と挑戦の精神で、ペット用品業界全体の発展に貢献していきたいと考えています。