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OEMアウターの販売後クレームを減らすための品質保証設計

目次
はじめに:製造業現場から見たOEMアウターのクレーム問題
OEMアウターのビジネスが隆盛を極める中、販売後のクレーム対応に苦しむ現場は少なくありません。
実態として「作り手」と「売り手」双方の認識不足、また昭和から続くアナログな体質が根底に影響している場合も多々あります。
製品の不良や顧客満足度低下といった直接的損失にとどまらず、ブランドイメージ毀損、サプライヤーとの関係悪化、最悪の場合は訴訟リスクさえ生じます。
本稿では、長年現場で鍛えられた経験と、管理職としてOEMビジネスに携わってきた立場から、OEMアウターの「売った後のクレーム減少」を実現するための品質保証設計を徹底解説します。
OEMアウターのクレーム発生の実情と背景
OEMならではの「責任の分散」と危険性
OEM取引は、発注元と製造元という二つの会社が関わるため、どうしても「うちで作ったけど、設計は先方の指示だ」「作ったものの仕様がはっきりしない」など、責任の所在が曖昧になりやすい特徴があります。
その曖昧さが、品質トラブルやクレーム発生時に「たらい回し」の温床ともなり、根本解決を難しくしています。
昭和的仕事観とアナログ文化の壁
多くの中小企業や老舗メーカーでは、設計・仕様の書面化が徹底されておらず、熟練工やベテラン担当者の「勘」や「経験」に頼る部分が今なお色濃く残っています。
図面や作業標準の電子管理も進まず、「前にこうしたから、今回もこうだろう」と過去の経験に頼るアプローチが主流です。
これが、不良の見逃しや顧客期待とのズレを生み、アウターの返品や交換要求が絶えない根源にもなっています。
現場でできる「クレームを減らす品質保証設計」とは
1. 要求仕様の徹底的な見える化
OEMビジネスのクレームを減らす第一歩は、顧客からの要求仕様を徹底的に見える化し、「これ以上でもこれ以下でもない」基準を明確にすることです。
設計書や仕様書はもちろん、必要であれば現場の写真や動画、NG事例も積極的に活用し、主観的判断を排除します。
また、バイヤーやOEM発注担当者がその仕様にどういった「こだわり」「最終顧客の使用シーンへの配慮」「過去のクレーム経験」があるのか、背景まで把握すると誤解がぐんと減ります。
2. バイヤー目線の「潜在的クレーム箇所」洗い出し
現場目線だけでなく、バイヤーやエンドユーザーがどんな使い方をし、どんな小さなトラブルでもクレームとしてカウントするか――これを徹底的にシミュレーションすることが重要です。
たとえば、「ジッパーの引っ掛かり」「生地の色ムラ」「ロゴプリントの剥がれ」など、現場基準で合格でも市販時には不良扱いされるポイントは必ず洗い出しリスト化しましょう。
3. 不良発生のメカニズムを現場で可視化する
品質問題の多くは、“なぜ”という問いを深堀りすることで初めて根本にたどり着きます。
現場で「ヒヤリ・ハット」や「バラツキ」を毎日収集し、小さな異常も“最終製品”にどう影響するか逐次レビューします。
昭和的な“目視検査一辺倒”から、工程ごとのチェックポイントを組み込む「フェールセーフ設計」や、「ポカヨケ」(うっかりミス防止)の技法も有効です。
4. 量産立上げ前の厳格な品質保証プロセス
OEMアウターはサンプル段階での品質確認が極めて重要です。
初期流動の段階で、エンドユーザー目線での検証(着心地試験・耐洗濯性試験など)を必ず複数回実施します。
サンプル合格後も「量産品がサンプルの品質を再現できるか」「ロット間差はないか」などを、抜き打ちやロット移行のタイミングごとに検証することがポイントです。
5. ファクトリー全体の「気付き」と「再教育」
現場の作業者一人一人が、「なぜこの作業が必要なのか」「どこをミスするとどうクレームにつながるか」を腹落ちさせる教育が重要です。
一方で、ベテランの“過去の成功体験”が邪魔をすることも。
定期的な品質会議や、現場主催の問題共有会を設け、「新しい観点」「失敗事例」「お客様視点」での再点検を繰り返します。
デジタル×現場力でクレームを予防するために
ペーパーレス化・デジタル記録の導入
昭和的アナログ文化からの脱却には、可能な限りのデジタルツール導入が不可欠です。
工程の履歴管理、検査記録の電子化、現場からのリアルタイム報告など、ツールの導入が「記憶」から「記録」へのシフトを実現します。
これにより、「誰が、いつ、何を基準に作ったか」「過去に同じ不良は起きていなかったか」を即時参照でき、クレーム発生時の責任所在や再発防止策もスピーディに講じられるようになります。
生産管理システム(MES)の活用
生産現場では、MES(製造実行システム)を導入することで、不良発生の「点」情報を「線」として追跡できるようになります。
どの工程でどんな異常が起きていたか、作業者や設備の状態と結びつけて解析することが、「再発防止=クレーム減少」につながります。
また、不良兆候をAIが検知し、“未然防止”まで実現可能です。
取引先との関係を良好に保ちながらクレームを減らすためには
サプライヤー・メーカー双方の「納得解」をつくる
バイヤー・サプライヤー双方で「どこまで対応するか」「ここから先は顧客責任」といった線引きを事前協議で明確にしておくことが大切です。
納期やコストだけでなく、不良発生時の再生産分担・コスト負担・緊急対応プロセスまで合意文書化しましょう。
誤解や思い違いが後々の大きな揉め事に発展するのを未然に防げます。
現場同士のコミュニケーション・見学会の推進
年1回でも良いので、現場チーム同士での交流・見学会を開催し、疑問点や誤解を生の現場で直接ぶつけ合う場を持つと、両社間の信頼度がグッと増します。
アウターの使用実態、現場の困りごと、エンドユーザーの声などを「自分ごと化」して共有することを習慣にすると、クレームゼロを本気で目指す空気が生まれてきます。
未来志向:日本のOEM現場をアップデートするラテラルシンキング
「品質保証」は現場の作業手順だけの話ではない
品質保証というと検査体制や設備精度向上に目が向きがちですが、意外なところにもクレーム減少のカギが隠れています。
たとえば、営業担当が現場実態を知らないまま受注・約束をしてしまう場合、後々大きなクレームとなるリスクをはらみます。
現場だけでなく、設計・調達・営業・管理まで全てのプロセスを「横断」し、部門横断的な問題点の洗い出しも、今後の日本の製造業には必須の視点となります。
AIやIoT技術と現場力融合による差異化戦略
アナログ文化とデジタル技術は対立するものではありません。
作業ノウハウの見える化→AI蓄積→自動検知、あるいはIoTで生産ラインの異常を早期警告する仕組み……。
現場最前線の知恵と最先端テクノロジーの掛け合わせで、OEMビジネスの信頼性は飛躍的に高まります。
「人は人、デジタルはデジタル」と役割分担して考えるよりも、「最初は人、安定したら自動化」のラテラルな発想で効率アップとクレーム削減を両立することができます。
まとめ:OEMアウター×品質保証は「見える化」と「想像力」がカギ
OEMアウターのクレームを減らすためには、要求仕様・検査基準の見える化、バイヤー目線のリスク想像力、現場デジタル化、そして取引先との良好な合意・連携が欠かせません。
「なぜクレームが発生するのか?」をラテラルに深く深く掘り下げ、現場知見と時代の変化を融合させてアップデートすることが、今後の日本の製造業の競争力を支えます。
今こそ「昭和」から一歩抜け出し、未来のものづくり現場を共に進化させていきましょう。
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