投稿日:2025年8月19日

端子台から基板直付けへ変更して部品費と工数を削る電装設計

はじめに:なぜ今「端子台から基板直付け」なのか?

製造業において「電装設計」は常に現場の効率化とコスト削減の最前線にあります。
20年以上の現場経験から断言できるのは、昭和から続く”端子台配線”という手法が今、大きな転換点に差しかかっているという事実です。

従来は「誰でも扱いやすく、メンテナンスも楽」「柔軟な現場仕様に即座に対応できる」といった理由で端子台配線が主流でした。
一方、基板直付け方式への移行が進む背景には、部品費削減・作業工数圧縮・品質安定化という、製造業経営にとって避けて通れない要請が挙げられます。

本記事では、現場目線で端子台から基板直付けへの変更をどのように進めるべきか、そのインパクトと落とし穴、そして根強いアナログ志向の製造現場でも無視できない業界動向までを網羅し、実践的な洞察・ノウハウを徹底解説します。

端子台方式の魅力と限界

端子台配線のメリット

端子台方式は、日本の製造業現場で長年使われてきた標準的な電装設計です。
大きなメリットとして、現場での配線変更や増設が容易であり、トラブル発生時も迅速に対応しやすい点が挙げられます。

また「図面通りに配線すれば誰がやっても正しく作れる」「教育コストが抑えられる」といった、技能継承の容易さも重視されています。
これらの特性は、変種変量生産や少量多品種のライン、古くから続く企業の現場では特に好まれてきました。

端子台方式が抱える課題

しかし現代の製造現場では、端子台方式の”手間・コスト”が大きな痛手になっています。
まず端子台そのものがメカニカルな消耗部品であり、手配・在庫管理も複雑になります。
加えて、配線作業は熟練度や人によるバラツキが大きく、確実なねじ締めやトルク管理で品質確保が必要です。

工数の面でも配線1か所ごとに作業時間が嵩み、「人件費高騰」「人手不足」に直面している現場ほどツケが重くのしかかっています。
さらに、配線ミスや締め付けトルク不足によるトラブルが、ライン停止や火災危険の要因となるため、品質管理の負荷も増す一方です。

基板直付けによる設計革新の可能性

基板直付け方式の特徴

基板直付けとは、従来の「制御盤内で端子台を経由して各種部品・ケーブルをつなぐ」やり方をやめ、プリント基板(PCB)上に必要な回路・コネクタを実装し、その基板に直接ケーブルを半田付け・コネクタ挿入する手法です。

この方式により、基板上の配線ルート・接続点が一元管理され、配置ミスが大幅に減ります。
また、部品点数が減り、組立工数も統一化できるので、大きなコスト削減効果が見込めます。

部品費削減の効果

端子台方式では、端子台本体・導線・圧着端子・ラベル・ケーブル結束材など細かな部品が数多く必要です。
それぞれ調達管理や部番管理にも負担がかかります。

基板直付けへ切り替えることで、これら周辺部品の多くが不要となり
「端子台1列数百円、圧着端子数十円、作業コスト数百円」
という積み重ねが一気に削減されます。

サプライヤーとのコスト交渉でも、より高い効率化を武器にした積極的な提案が可能です。
結果として、ボリュームディスカウントや調達リスクの低減も実現できます。

工数削減の具体的メリット

基板直付けの場合、複雑な手配線作業やラベル貼付、ケーブル取り回し作業がほぼ不要となります。
しかも、半田付けやコネクタ挿入は自動化ラインでの一括作業もでき、人の熟練度によるバラツキが激減します。

特に工場の自動化(FA化)が進む現在、「手作業から自動実装へ」のシフトは
“現場力”の底上げにつながります。

製造リードタイムの短縮や、誰が組み立てても同じ品質となる標準化体制は、海外工場や多拠点展開でも強みを発揮します。

現場で見落としがちな基板直付け化の“落とし穴”

設計初期の工夫が鍵を握る

基板直付け化は一見万能策のようですが、設計段階での“緻密な仕様詰め”がなければ逆に大きなトラブルを呼び込むこともあります。

例えば、現場での仕様変更が発生した場合、従来の端子台方式であれば「ケーブルを差し替える」「一部の配線だけ入れ替える」といった即応がききましたが
基板直付け化後は、基板自体の改版・再設計が必要になり、その分のリードタイムや費用が跳ね上がります。

現場の“融通の利きにくさ”は、思った以上に経営インパクトも大きくなります。

メンテナンス・現場修理の視点

端子台方式であれば、異常発生時に導線・端子を目視確認・交換できるため、現場の保全担当や協力工場などでもスムーズに対応できます。

これに対し、基板直付けは
「半田剥がれ」「コネクタの経年劣化」など物理的なトラブル対応があった場合に、現場での即時修理が難しいケースがあります。
現場力を維持するためには、基板部品の選定・保全マニュアル整備・交換モジュールの標準化などが必要不可欠です。

業界動向と今後の標準化ロードマップ

自動車・家電業界から始まった流れ

実は国内外の先進的な自動車、家電産業では10年以上前から「基板直付け化」の流れが進んでいます。
配線ミス削減・部品コスト削減・大量生産性強化によって、グローバル競争を勝ち抜く”ウラ技”としてノウハウが蓄積されています。

生産設備業界や産業用ロボット分野でも、国際標準のIEC規格やUL規格を遵守した基板設計がスタンダード化しつつあります。

アナログ志向の産業でも避けられない流れ

一方で、装置産業や重電、食品・医薬系の古くからの工程では「仕様の頻繁な変化」「現場の即応性重視」「少ロット多品種対応」を理由に端子台配線が根強く残っています。

しかし、省人化圧力や技能継承問題が重くなるなか
「一時的な便利さ」よりも「抜本的な工数・原価削減」へと重心が移りはじめています。

事実、現場のリーダーや工場長クラスでは、「使い分けが肝」と捉えて
標準モデルは基板直付け、特注・短納期品は端子台方式というメリハリ設計が浸透しています。

導入ステップ:段階的な基板直付け化の進め方

1. 現行品の工程フロー・コスト分析

リプレイスを進める場合は、まず既存の電装工程を「部品費」「組立工数」「ミス発生率」など細かく現状数値把握し、「どこをどう置き換えれば効果が最大化できるか」を可視化します。

とくに特定ラインや量産機種・ユニット単位でトライアルを開始し、段階的に標準適用割合を拡大します。

2. サプライヤー・基板メーカーとの共創体制

単なる部品の置き換えにとどまらず、サプライヤーや基板設計メーカとの早期連携が不可欠です。
現場要求にマッチしたコネクタの選定、基板設計の変更余地や生産リードタイム短縮施策に至るまで、積極的に歩み寄ります。

部品調達・購買視点からは、「類似機種」や「調達数量拡大」「納期一元管理」など、全体最適を狙ってコスト交渉の余地も広がります。

3. 保全・現場対応力の維持対策

変化に弱いアナログ現場にも「標準化された保全ポイント」や「モジュール交換型設計」を導入することで、最低限の即応性・メンテ性を担保します。
特に重要なのが、「現場向けの保全教育」「現場ハンドブックの標準化」といったナレッジ共有の仕組みづくりです。

バイヤー・サプライヤー双方に求められる視座

バイヤー視点:コスト削減だけでなく、付加価値提案へ

購買・調達担当にとって、端子台から基板直付けへ切り替えるチャンスは「全体コストをロジカルに見直す」好機です。
一方、単に安い基板・安い作業を追うだけでなく、異常対応時の体制や保全性、物流効率まで網羅した企画が必要です。

サプライヤー交渉でも、「開発工数の平準化」「品質起因ロスの削減」「組立作業の見える化」など、中長期の付加価値提案力がカギになります。

サプライヤー視点:ユーザーニーズに応える技術・提案力強化

一方、基板直付け化の時代には製品供給だけでなく、現場ニーズに応じた
「カスタマイズ基板設計」「現場導入サポート」「リードタイム短縮」に価値軸が移っています。

顧客仕様への柔軟な対応や、調達・検品の負荷低減、現場教育資料の充実化も含めて、提案型・現場密着型サプライヤーへの進化が強く求められています。

まとめ:新たな現場力を引き出すための視点

端子台から基板直付けへという流れは、単なる「部品の置き換え」にとどまるものではありません。
生産現場の抜本的な工程革新、品質安定化、そしてサプライチェーン全体の進化への布石です。

一方で、現場ニーズを無視したトップダウン型の導入は失敗リスクも内包しています。
段階的な導入と現場・サプライヤーの知恵の融合で、「工数」「原価」「現場即応性」のバランスを最適化することが、これからの製造業において不可欠です。

これからの時代をリードするためには、ラテラルシンキング――“枠を超えた発想”と“多層的な現場目線”が欠かせません。
自社の強みを磨き上げ、他に負けない現場競争力を高めていきましょう。

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