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複数工場の一括通関で手数料を圧縮しフォワーダ費用の二重取りを防ぐ実務

目次
はじめに:製造現場で不可避となる通関業務とコスト圧縮の重要性
製造業の国際調達やサプライチェーンのグローバル化が進む中、輸入部品や原材料の調達において「通関業務」および「フォワーダー(国際物流業者)手数料」が避けて通れないコスト要因となっています。
特に複数工場を有する大手メーカーでは、物流最適化とともに、通関・フォワーディングに掛かる余計なコストの見直しこそが、利益の源泉になるケースも少なくありません。
この記事では、現場視点で「複数工場の一括通関」に着目し、実際にどのような方法で手数料を圧縮し、よくある“フォワーダーによる手数料の二重取り”を防いでいくべきか。
そして、昭和的な慣行が根強く残る通関・物流業界だからこそ現場担当者が知っておくべき注意点・業界の裏側まで、実務ノウハウを徹底掘り下げします。
通関・フォワーダー手数料構造を現場目線で洗い出す
「知らない間に二重取り」される現場のリアル
日系メーカーの多くで見られる典型は、例えば「A工場」「B工場」「C工場」が同じサプライヤーから同じ時期に同じ製品・原料を調達し、それぞれがバラバラに輸入しているという現状です。
その場合、サプライヤー→フォワーダー→輸出港→通関→国内トラック配送→各工場という流れで、フォワーダーごとに下記の請求がそれぞれに発生します。
・通関手数料
・B/L発行手数料
・書類作成費
・デバンニング(コンテナ開封)費用
・配送手数料
・各種立替実費
これらは全体最適どころか、「同じ船、同じコンテナ」「同じ書類作業」で本来一括処理できる内容です。
それにもかかわらず、工場単位で通関・配送などをバラバラに依頼してしまうことで、同じ作業に対して重複してフォワーダーに手数料を取られる――通称「二重取り」「三重取り」が当たり前のように発生しています。
業界苦笑いの“お約束請求”リストに注意
昭和から今日まで、物流・通関業界では「明朗会計」とは程遠い請求スタイルが根強く残っています。
例えば、
・貨物が同じでも作業ごとに各工場に“通関基本料”を分割ではなくフルチャージ
・書類作成費用も1回の作業を複数工場分として全額請求
・B/L(船荷証券)発行手数料も工場単位で課金
など、「何となく通関代行業者任せにしていたら、同じ作業に何度もお金を払っていた」というケースが後を絶ちません。
現場が物流業者の“言い値・お任せ”となりがちな背景には、グループ会社間の壁、工場購買部の縦割り体質、伝統的な帳票フローといった問題が複合的に絡んでいるのです。
複数工場一括通関の実務的メリット
オペレーション効率とコストダウンのインパクト
一括通関とは、複数工場向けの貨物を港でまとめて通関し、必要に応じて一旦倉庫に集積、あるいは港から分割配送する仕組みです。
主なメリットは、
・通関手数料の削減(1回分の基本料・書類作成費で済む)
・書類作成作業の一本化によるアラ探し防止・検査リスク低減
・フォワーダー交渉力の強化(高単価請求への明細チェックが出来る)
・納期管理・トラッキングの一元化
・万が一トラブル時の調整窓口一本化
そして、大事なポイントは「実はフォワーダー側も一括処理の方が負担が減る(物理的な手間が減る)」ため、合理的な物流戦略として交渉力・選定力によって大幅コスト圧縮が十分に期待できる点です。
一括通関を成功させる3つの条件
1. 貨物が「同一貿易条件」で「同じ出発港・船積日」である
2. 社内(各工場)購買・物流部隊の意思統一がある
3. フォワーダー/通関業者との詳細な費用明細・役割分担の交渉スキル
特に1、2が欠けていると、「結局それぞれでしか手続きできません」という結末に陥りやすいです。
各工場間でスケジュールや発注タイミングを合わせるなど、実行計画段階から確実に仕込む必要があります。
一括通関導入のための現場チェックリスト
ラテラルシンキングで壁を乗り越える
最も高いハードルとなるのは、「社内の壁」「工場間のサイロ化体質」をどう突破するかという現場の課題です。
ここでは「工場長」「調達購買リーダー」「物流担当」が一致団結するための実務的な切り口を紹介します。
1. 年間調達計画の情報共有
各工場ごとの調達品目・時期を可視化、重複がないかマトリクスで確認する。
2. サプライヤー・フォワーダーへの事前通達
納期・物量・指定条件を製造現場の“都合最優先”で合わせるべく、月次定例会議やオンラインミーティングを設け、交渉の場を持つ。
3. フォワーダー見積りの「きめ細かい明細開示」要求
通関基本料、書類作成費、B/L発行費、デバンニング費など「工場ごと」「一括でまとめた場合」の明細を必ず提示してもらい、比較検討する。
4. 一括処理した場合のトラブル対応フロー
現場でありがちな“納入先誤配送”や“数量違い”対策として、港湾エリア倉庫での一時保管や、バーコード・ロット管理の強化も設計しておく。
5. 通関書類のデジタル管理
デジタル化対応が遅れる現場だからこそ、Excelや共有クラウドの活用で「紙の伝票・FAX文化」から一歩踏み出す。
現場感覚で実戦した成功例・失敗例
成功例:大手自動車部品メーカーA社
従来、国内5工場でバラバラに同じ部品を輸入していたが、通関一括化・物流統合のプロジェクトチームを組成。
年間で約1,800万円の手数料圧縮効果。
月次チェック会議を設け、コスト監視・リスクヘッジも同時推進した。
失敗例:建機部品メーカーB社
一括通関の合意は取れたが、納期管理体制が未熟で一部工場だけ必要数を確保できず、納入ミス多発に。
最終的に一部工場だけ個別輸入へ逆戻り。
教訓は「全社横断的な納期・発注計画の徹底」。
昭和的アナログ業界の壁と抜け道・業界動向
通関・物流業界はまだまだ紙文化、属人的な“顔パス請求”、コスト明細ブラックボックス体質が残っています。
一方、IT推進やグローバル企業のプレッシャーによって、徐々に「サプライチェーン全体最適化」への対応力が問われる時代となりました。
先端事例では、EDI連携や受発注クラウド、RPA・AI活用で通関書類や明細作業の自動化が進んでおり、今後は
・物流手数料の完全公開化
・AIによる通関書類の自動生成・ペーパーレス化
・最適配送ルート選定/ダイナミックコストシミュレーション
など、業界自体も大きな転換点を迎えています。
しかし、まだまだこの流れを“現場の実務”に落とし込めている企業は限られます。
本当に現場からボトムアップでコスト競争力を獲得するには、アナログとデジタルを“噛み合わせる”現場主体の改革が不可欠となります。
まとめ:バイヤー・サプライヤー視点から次世代物流を考える
複数工場の一括通関・物流統合の実務は、決して通関担当者一人の努力だけでは成立しません。
調達購買リーダー、サプライチェーン担当者、工場長まで巻き込む新時代の現場改革プロジェクトです。
最先端の理論・ITだけでなく、「いかに現場で横の壁を崩せるか」「物流会社・通関業者と実態明細ベースで交渉できるか」がカギとなります。
また、安易に業者任せにせず、担当者が
・見積り内訳の“二重取り”に敏感になり
・一括に踏み切る勇気と調整力を持ち
・将来のデジタル化の地ならしを今から始める
ことが、これからのグローバル製造業では本質的な競争力となります。
バイヤーを目指す方、サプライヤーとして交渉力や現場目線を磨きたい方は、ぜひ「一括通関・フォワーダー費用最適化」という切り口を、新しい成長の武器として実践してください。
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