投稿日:2025年8月13日

表面処理の共同ロット化で色ブレを無くしながら単価を下げる

はじめに〜なぜ今、表面処理の共同ロット化なのか

製造業に従事している皆様、特に調達バイヤーや生産管理の方々の間で、表面処理の「色ブレ」対策やコストダウンは永遠のテーマです。
多品種・少量を求められる時代が到来し、顧客からは「同じ規格の部品なのに色が微妙に違う」との指摘が飛び交い、調達サイドは対応に追われ現場は頭を抱えます。
さらに、コスト圧縮も同時に求められています。
この相反する課題の突破口が、「表面処理の共同ロット化」です。
この記事では、現場経験に基づいた実践的な視点で、なぜ共同ロット化が有効か、どのように進めるべきか、失敗しないコツと事例、そして今後の展望まで詳しく解説していきます。

表面処理における“色ブレ”の本質とは

なぜ色ブレが起きるのか(業界の現実)

表面処理とは、製品部品の表層に目的に応じた処理を施し、機能や外観を向上させる工程です。
代表例としては、メッキ、アルマイト、塗装などがあります。
一見「同じ処理」を依頼しても、実際の仕上がりには色味や質感に「揺らぎ」が出ることが避けられません。

主な原因は以下の通りです。

– 加工バッチ(ロット)ごとの処理液の性質差
– 処理時間・温度・電流などの管理値の微小な差異
– 下処理(素材の脱脂や研磨など)が均一でない場合
– 加工工員のノウハウの属人性や環境要因
– サプライヤー側の作業負荷やスケジュール事情

このような現場で起こる“ゆらぎ”は、品質管理に厳しい現場や外観基準が高い業界では大きな問題になります。

顧客からの要求レベルの変化と現場負担

近年は大手メーカー主導で「外観品質基準」の標準化が進み、サプライヤーへの要求値はますます厳しくなっています。
ロット間の微細な色差も「交換・手直し」の対象となり、手戻りや出荷停止、取引見直しのリスクにつながります。
結果、サプライヤーもバイヤーもコストダウンどころか損失リスクが高まっているのです。

共同ロット化というラテラルな発想

共同ロット化=複数品種をまとめて一緒に処理する発想

従来は「注文ごと、品種ごと、納期ごと」にバラバラに表面処理を委託するのが普通でした。
これではロットごとに色ブレが発生し、微妙な色差やバラツキが蓄積していきます。

一方、「共同ロット化」とは、複数の注文や品番をまとめて、一度の処理槽で一括処理(バッチ型)することで、できる限り“同じ環境”で表面処理を施す考え方です。

このアプローチにより、

– 同一ロット化による色差の最小化
– ロット単位でのコスト低減
– 処理サイドも作業効率向上と安定生産

が期待できます。

コスト低減のメカニズム(なぜ安くなるか)

表面処理サプライヤーは、少ない量・多頻度の対応(=小ロット多回転)を強いられるほど、準備コスト・液浴消耗・治具交換・管理作業などの手間が増えます。
一方、ロット化し同じタイミングでまとめることで、

– 運搬回数の削減
– 毎回の投入管理コスト削減
– 液消耗や温度管理、電気代などのランニングコスト平準化

が実現し、サプライヤーも「まとめてやってくれるなら単価を下げても利益が出る」状況になるのです。

アナログ業界だからこそ“連携”が突破口

表面処理業界は、まだまだ昭和的な取引や現場対応が根強い分野です。
個別対応の積み重ねや、「職人さんの経験頼み」という空気が残っています。
ですが、ここにDXやラテラルシンキング——つまり「今までバラバラだったものをまとめてみる」発想を持ち込むと、一気に現場もコストも効率化できるチャンスが生まれます。

共同ロット化の進め方:現場実践のステップ

1.品番/工程の棚卸とマッピング

まずは、どの品番(部品・製品)がいつ・どこで表面処理をするのか、全体を「見える化」します。
発注頻度、納期リードタイム、色・品質基準の厳しさ、処理内容ごとに整理し、共同化できる“グループ”を洗い出します。

2.メーカー・グループ内での横断調整

同じ会社の複数製造ラインや、サプライチェーン内の複数工場で「同じ表面処理内容」を求めている部品を横断的に束ねる調整を行います。
受発注システムやエクセル管理でも良いので、とにかく「どれをいつまとめるか」を可視化しましょう。

3.サプライヤーとの協議とルール化

表面処理サプライヤーに「協力依頼」として相談をもちかけます。
– まとめて発注する代わりに、一定の単価ディスカウント。
– 集荷リードタイムが伸びても良いか、納入リズムをすり合わせる。
– 品番ごとの工程管理表や、識別方法(ロット番号管理など)を明確化。

サプライヤー側の受け入れ可能数量や納期、設備キャパシティなども勘案して、現場運用の設計を固めていきます。

4.スケジュール化・PDCAサイクルの導入

初回から理想的に共同化できるケースは稀です。
手間やトラブルも発生しますので、定期的な振り返り(PDCA会議等)を必ず設定し、都度ルール見直しや調整を行いましょう。
ダメだった箇所は小さく「個別対応」に戻しつつ、上手くいく共同ロットの幅を徐々に広げるのが現実的なやり方です。

共同ロット化を阻む“落とし穴”とその回避策

サプライヤーキャパシティの見極めと信頼醸成

サプライヤー設備には物理的な限界があります。
量が増えすぎると品質低下や納期遅延のリスクが高まります。
したがって、“無理なまとめ”は禁物です。
まずは小さな一括ロットから始めて、能力を見極めつつ段階的な拡大がお勧めです。

“色味の管理範囲”の適正化

「まとめれば必ず色差ゼロ」というわけではありません。
全品で完ぺきな統一は現実的に困難です。
顧客や社内で“許容範囲(△E値での明確な基準など)”を定めておくことが後戻りトラブル防止のカギです。

社内・サプライチェーンでの情報共有不足

現場でロットをまとめても、営業や設計、さらには顧客側の伝達ミス・共有不足で、せっかくの努力が“伝わらない”リスクもあります。
根本的な「情報一元管理」や、「工程連携の可視化」が共同ロットの成功に直結します。

成功した共同ロット化の事例と導入効果

大手自動車部品メーカーの事例

A社では、10以上の生産拠点・事業部が、同じ表面処理サプライヤーに個別発注していました。
これを、マスター品番ごとに週1回の合同ロット発注方式に変更。
結果、処理単価が30%低減、色ブレクレームも90%削減、再処理コストが3分の1になりました。

中堅電装サプライヤーのトライアル

B社では「納品ロットごとカラーバラツキ」が多発。
納期に多少の余裕を設けて部門横断まとめ発注を実施したところ、
– バラツキ苦情が激減
– サプライヤーも「大ロットならこの価格でOKです」と前向きな単価交渉
という好循環が生まれました。

今後の展望と、バイヤー・サプライヤーに求められる視点

DXとの連携〜ITでロット最適化が加速する時代へ

品番・工程管理をIT化し、受発注システムと連携させれば、ロット統合はさらに効率化できます。
将来的にはAIや需要予測ツールとの連動で「自動最適化」も視野に入ってくるでしょう。

“取引関係”から“Win-Winパートナー”への進化

共同ロット化は、単なるコスト交渉ではありません。
「安くしてくれ」だけでなく、「双方のロスを減らして生産性を上げる」という本質を共有できれば、サプライヤーもバイヤーも共に成長できるはずです。
「協力してこの仕組みをつくろう」という関係づくりこそ、これからの調達・ものづくり現場に求められます。

まとめ

表面処理の共同ロット化は、「色ブレ撲滅」と「単価ダウン」という、これまで相反してきた現場ニーズの“接点”を生み出す発想です。
従来のアナログなやり方から一歩踏み出し、情報共有や工程連携を推進できれば、製造業現場の生産性も信頼性も次のステージに進化します。
バイヤー志望の方、サプライヤーの皆様、そして現場の工場管理者の方々こそ、ぜひ“共同ロット化”の価値を体感し、変革の一端を担っていただきたいです。

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