投稿日:2025年9月5日

OEMで消耗品を製造する際に注意すべき法規制と表示ルール

OEMで消耗品を製造する際に注意すべき法規制と表示ルール

はじめに

製造業界において、「OEM(Original Equipment Manufacturer)」はビジネスモデルの中核の一つです。
とくに消耗品の分野では、信頼できる外部パートナーと連携することで迅速な供給やコスト削減が可能になります。
しかしOEM生産は、単に発注して製品を作れば良いというものではありません。
とくに法規制や表示ルールについては、目をそらしてしまうと重大な経営リスクを背負う可能性があります。
今回は、私が20年以上現場で経験してきた実例や失敗談も交えつつ、OEMで消耗品を製造する際の法規制と表示ルールについて、現場視点かつ最新動向も加味しながらわかりやすく解説します。

OEMと消耗品製造の特殊性とは

OEMの役割とバリューチェーンの構造

元々、自社ですべての工程を担う「垂直統合型」が主流だった昭和の時代、法規制や表示ルールは比較的単純でした。
しかし平成以降、コスト競争やグローバル調達の潮流に乗って、OEMによる部品や消耗品の外部委託が一般化しています。
この結果、バリューチェーンは複雑化し、法的責任や表示の主体も曖昧になりがちです。
特に消耗品は、小ロット多品種・短サイクル、さらには最終消費者の安全に直結しやすい特徴があり、法規制順守の責務はよりシビアになっています。

「誰が」責任を負うのか――OEMで曖昧化する法的責任

消耗品をOEMで生産し、自社ブランドで販売する場合、最終的な責任は「販売者」=バイヤー側が基本的に負います。
しかし、多くのケースではサプライヤー(OEM先)が作成した設計書やラベル情報をそのまま使用してしまい、後に表示偽装や法令違反を指摘されてしまう例が後を絶ちません。
表示ルールや法規制を「人ごと」とせず、OEM元・先両者がきめ細かく理解し合う必要があります。

消耗品OEM製造で考慮すべき主要な法規制

1. 製造物責任法(PL法)

消耗品の欠陥による事故が発生した場合、「誰が」「どこまで」責任を負うのかはPL法が定めています。
OEM形態でもプライベートブランド製品の最終販売者には、厳格な責任が課されます。
製品仕様や性能、品質保証項目などを設計段階からしっかり取り決め、トレーサビリティ(流通履歴管理)を徹底することが求められます。

2. 各種業法・関連法規

消耗品はカテゴリによって適用される法令が異なります。
たとえば工業用潤滑油なら「消防法」や「危険物規制」、食品や食品工場向けの使い捨て手袋なら「食品衛生法」、プリンタートナーなどは「資源有効利用促進法」など、個々の製品特性や用途によって複数の法規制にまたがります。
「どの規格が必要か」「どんな認証を取得すべきか」はOEMメーカー・バイヤー双方のリテラシーが問われます。

3. 意匠・商標・特許関連

消耗品は短期間で模倣品が流通しやすいため、意匠権や商標権の確認・取得も要注意ポイントです。
特にOEM先が海外の場合、現地法に基づく手続きが必要になり、最新法改正にも目配りしなければなりません。
「知らなかった」「うっかり」のミスが致命的な訴訟リスクに直結するのです。

4. 表示にまつわる法規制

最もトラブルが多いのが表示関連です。
製品名や成分表示、原産国の誤表記、管理番号やロット番号の記載漏れなど、非常に些細な人的ミスから指摘を受けることが多いのです。
消耗品は小型製品が多く、記載スペースの問題もあります。
省略表示やQRコード活用など、現代型の運用ノウハウも求められる領域です。

現場ですぐできる!OEM消耗品製造の法規制対策

1. バイヤーとサプライヤーの責任範囲の徹底的な明文化

「あいまいな合意」ほど危険なものはありません。
仕様書や品質管理基準のみではなく、
– 誰がどの法規制の調査を担当するのか
– ラベル誤表記が発覚した際の責任分担
– 新法施行時の対応体制
これらを曖昧にせず、契約書や付帯文書で明文化しましょう。
契約時点で不明点や懸念点がある場合は、専門家(弁護士、社労士、技術士)への事前相談も重要です。

2. サプライヤー監査・現地チェックを怠らない

現場主導による抜き打ち監査や定期監査を実施し、工場内の表示遵守状況や材料保管管理を自らの目で確認しましょう。
近年は遠隔監査やデジタル監査も普及しつつありますが、現場の空気感や作業リーダーの人材レベルまで把握するためには「現地・現物・現実」が最重要です。
これこそが昭和的な「現場主義」ですが、近未来でも価値が失われないアナログ的現実です。

3. 定期的な教育・法規制アップデートの場を設ける

法令は毎年のように改正されます。
現場担当・設計者・品質保証・購買それぞれに必要な最新情報を定期的にアップデートする教育の場を設けましょう。
また、サプライヤー教育もバイヤーの役割です。
専門家を招いたセミナーや、業界団体の最新ガイドラインを活用した勉強会が有効です。

4. 最新のデジタルツール活用による表示・ドキュメント管理

ラベル作成や表示内容の管理ミスを防ぐには、デジタル化が急務です。
統合型ラベリングシステムやクラウドベースの製品情報データベース、電子承認ワークフローを導入すれば、バラバラなエクセル管理から脱却でき、認証漏れや更新漏れも激減します。
また、表示内容の改訂履歴や、根拠となる法規制のバージョン管理も容易に行える時代です。

OEM消耗品ビジネスでよくあるトラブル事例と教訓

消耗品OEMで「ありがちな」失敗例

例えば、プリンター用インクのOEM品で、意図せず純正品の商標に酷似したラベル・外装を貼り、著作権侵害で数千万規模の損害賠償を請求された例。
また、医療現場向け手袋で原材料表示漏れが原因でリコール(回収)命令が発生し、その際にOEM先・販売元双方が責任をなすりつけ合い、顧客離れに発展した事例などがあります。

これらの共通点は、「表示業務が最後の詰め甘さで属人化してしまっていた」「OEM先とバイヤー間の合意が形骸化していた」「現場教育と現物確認を怠った」こと。
属人的な昭和流運用が、デジタル社会では通用しなくなりつつある現実です。

現場長・品質責任者の立場から伝えたいアクション

私が工場長や調達責任者として一番重視してきたのは、
「現場で一時の効率を優先して、リスクを隠蔽・先送りしない」
「記者会見で説明責任が果たせる体制を平時から構築する」
ことです。
逆に、最も危ういのは「指示待ち体質」「他人任せ」になった瞬間です。

OEM時代の今こそ、「全員参加型リスクマネジメント」が必要なのです。

OEM消耗品分野の今後の潮流とバイヤー・サプライヤー双方のあり方

サステナビリティと法規制のグローバル化

今後はSDGsやカーボンニュートラルなどの観点からも、表示内容や化学物質規制(REACH規則、RoHS指令など)のグローバル化が急加速します。
「国内法だけわかればOK」ではなく、海外調達・販売時の複数法規制をどう同時管理するかがカギです。
多言語表示やグローバル監査のスキルも求められます。

新たなバイヤー像・サプライヤー像

従来の買う側/作る側といった「上下関係」ではなく、
「法令遵守のプロフェッショナルネットワーク」
として健全なパートナー関係を築くことが成否を分けます。
現場の知恵と最新のデジタル技術、社外専門家の知見を掛け合わせて、未来型のモノづくりプラットフォームを目指しましょう。

まとめ

OEMで消耗品を製造するビジネスは年々複雑化しています。
法規制や表示ルールは、知っていて当然の「基礎力」と「アップデート力」が問われる時代です。
属人的な昭和流の現場運用から脱却し、バイヤーとサプライヤーが「同じゴールに向かう仲間」として知恵を結集することが、今こそ必要です。
この記事が、すべての現場の方々、バイヤーを志すすべての方、サプライヤーの視点を知りたい全員の一助となることを心から願っています。

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