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車載電子部品の信頼性評価と放熱実装設計で品質を確保する方法

目次
はじめに:なぜ車載電子部品の信頼性が問われるのか
車載電子部品は、現代の自動車の機能や安全性を大きく左右する重要な要素です。
自動車業界では「走る」「曲がる」「止まる」といった基本性能に加え、自動運転や電動化への移行が加速する中で、電子部品一つ一つの信頼性や品質が厳しく求められています。
幾多もの厳しいロードプロファイルや気温、湿度の変化、長期間にわたる高負荷連続動作など、自動車という移動体特有の過酷な環境下で電子部品がどれほど正常に機能し続けられるのか——その評価力こそが、これからのものづくり企業の競争力を決定づけます。
本記事では、車載電子部品の信頼性評価の考え方と業界の最新動向、さらに放熱を重視した実装設計の実務について、現場目線で掘り下げていきます。
バイヤーやサプライヤー、製造業に従事する皆様が、「昭和から続くアナログ的なやり方」だけにとらわれず、新しい地平を切り拓ける知見にしていただければ幸いです。
車載電子部品の信頼性評価とは?
信頼性評価の基本:なぜ大切なのか
自動車用の電子部品は、家庭用や産業機器用に比べ、圧倒的に厳しい品質基準で管理されています。
ブレーキECUや電動パワーステアリング、エアバッグなど「命」に直結する制御回路は、一瞬の不具合が大事故を招きかねません。
そのため、バイヤーや設計部門は、「想定外の環境」や「最悪の使われ方」を徹底的に想定し、その上で長期の信頼性を保証できる厳格な部品選定、品質確認のプロセスを敷いています。
この「何十年も壊れない」ことを実証するために行うのが、信頼性評価です。
車載業界定番の信頼性評価試験
車載電子部品で行われる主な信頼性評価項目は以下の通りです。
– 高温動作・保存試験(125℃以上)
– サーマルサイクル試験(−40℃⇔125℃繰り返し 1000サイクル以上)
– 振動試験
– 耐湿・耐塩害試験
– 電気的ストレス・ESD(静電気破壊)試験
これらは製品仕様ごと、搭載される位置や役割ごとに個別にカスタマイズされます。
設計時点からあらかじめ「どんな壊れ方をしそうか」を推測し、そのリスクが許容範囲にあるかを試験や解析で確認していきます。
顧客(自動車メーカー)ごとの要求仕様
日本国内外のOEM(トヨタ、日産、ホンダ、GM、VWなど)によって試験方法や求める評価基準に差異があることも特徴です。
この差を埋めるため、バイヤーら仕様策定部門とサプライヤーは膝を突き合わせてディスカッションし、「なぜこの評価値なのか」「本当にそこまで高い基準が必要なのか」といった理由のすり合わせを行います。
近年では「IATF16949」などグローバル規格が浸透し、ある程度標準化が進む一方、完成車ごとの「現場ノウハウ的なカスタム要求」は未だ強く根付いている業界です。
放熱設計の重要性と現場での失敗例
なぜ放熱実装設計が要求されるのか
EV化や高度な電子制御化の進展により、小型で高性能な半導体デバイスを「狭い」「密閉度が高い」自動車内部に実装する機会が急激に増えました。
これらのデバイスから発生する発熱が部品自体や周囲の配線・基板などに悪影響を及ぼし、熱暴走、誤作動、寿命劣化など品質トラブルの直接原因となるケースが増加しています。
設計者は「この部品のどこまでが熱に強いか」「放熱が不十分だとどんな壊れ方をするか」を的確につかみ、最適な放熱経路やヒートシンクの選定、基板パターン設計に反映させる義務があります。
失敗すれば、量産後に大規模なリコールや市場不良を招くリスクも現実にあるのです。
放熱設計失敗の典型例とその教訓
現場の具体例を挙げると、次のような失敗が起こりがちです。
– 気密筐体内での半導体チップの温度上昇を甘く見積もり、設計寿命の半分以下で故障
– 熱伝導グリースや放熱パッドの塗布・組み付けが現場ごとにばらつき、性能に大きなばらつき発生
– PCMやFPC、LEDなど、熱設計の知見が浅い分野で設計担当が十分情報連携できていない
これらの失敗を未然に防ぐには、「現場で想定外の熱トラブルがどう発生しうるか」を設計初期段階から抽出し、根拠ある熱シミュレーション、材料選定、工程管理まで一貫させておく必要があります。
デジタル時代の放熱設計:シミュレーションの活用
一方で、近年は3D-CADや熱流体解析ソフトの進化で、以前に比べ格段に正確な「放熱シミュレーション」が可能になりました。
ただし、シミュレーション結果だけに頼りすぎると「現物評価」「現場の勘・ノウハウ」を蔑ろにするリスクも伴います。
観察実験や物理モデルによる初期評価で「この材料は実際にどうあつかうべきか」をしっかり把握し、シミュレーション結果と突き合わせることが、放熱設計の精度を上げるためには不可欠です。
業界動向:アナログからデジタルへの過渡期、変化をどう乗り越えるか
「昭和的アナログ仕事」の課題と残る強み
未だ多くの現場では、図面レビュー一つとっても設計者・現場作業者・品質保証担当者が紙を囲み「口約束」で重大な議論を進めているケースが頻発しています。
一見非効率に思えるこの「アナログ仕事」ですが、熟達者の直感や現場リーダーの暗黙知、そして「想定外」の問題を掘り出す底力は侮れません。
とりわけ、車載品質に求められる“ゼロ不良”志向や“万一”への備えは、表計算やマニュアル管理の積み重ねから生まれることも多々あります。
デジタル化推進と、現場ノウハウとの融合
一方で、グローバルサプライチェーンへの対応や、開発・生産サイクルの短縮が求められる現代において、紙・FAX・手作業を超えた「デジタルによる効率化」は避けて通れない課題です。
– CAD/CAEデータの一元化による情報共有
– 品質トレーサビリティの自動化
– 信頼性評価データのデジタル管理
– 放熱シミュレーションと各現場担当者の知見集約
こうした流れと、「現場での小さな気付き・勘所」とをどこまで融合できるかが、今後の製造業の差別化ポイントになるでしょう。
バイヤー・サプライヤー双方から見た品質確保の本質
バイヤーの視点:「安さ」よりも優先すべきもの
多くのサプライヤーは「コスト要求」にのみフォーカスしがちですが、長期信頼性や放熱設計への積極的な取り組み姿勢、その根拠説明力こそが、選ばれる条件です。
バイヤーが求めているのは「なぜこの設計・この部品が最適か」を科学的に説明できる力量と、過去の不具合情報・市場トラブルから謙虚に学び、継続的な品質改善に努めている組織文化です。
サプライヤーの視点:「バイヤーが考えていること」を想像せよ
サプライヤー側、とりわけ開発・設計部門は、「納期・コスト」管理だけでなく、発注者の求めている真の価値、すなわち「製品ライフサイクルにわたる安全性保証」の視点を持つことが重要です。
自社の取り組み(放熱試験データ、信頼性解析、追加設計カイゼン例など)を積極的に開示し、それがいかに最終製品の信頼性に寄与するかを説明することが、コンペティションを勝ち抜く秘訣になります。
まとめ:未来のものづくりに向けて
車載電子部品はこれからますます高性能・高集積化が進み、今まで以上に熱膨張や経年変化、過酷な外乱に起因する品質リスクが増えていきます。
バイヤーにもサプライヤーにも必要なのは、「現場から生まれる勘」「デジタル技術の活用」「地道な評価とカイゼン」の3本柱を組み合わせ、自社の品質保証体制を進化させることです。
昭和的アナログ仕事が持つ底力を正しく継承しつつ、IoT・AI技術が提供する新しい道具や評価軸を、現場レベルの実務にしっかり根付かせる。
そんな“現場目線×最先端”のハイブリッドアプローチが、これからの製造現場の新しい地平を切り拓く鍵となるはずです。
製造業の発展に貢献するため、今一度「本質を見極める力」「現場と顧客の声に耳を傾ける姿勢」を、皆さまとともに磨いていきましょう。
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