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非破壊検査の代表的試験法とその効果的な活用事例

目次
はじめに:非破壊検査とは何か?
製造業の現場では、「検査」の重要性は年々高まっています。
品質第一を掲げる現場において、製品や部品が設計通りに仕上がっているか、内部欠陥がないかを正確かつ迅速に検出することは、顧客満足や安全性確保のために不可欠なプロセスです。
そこで注目されるのが「非破壊検査」です。
非破壊検査の最大の特長は、対象物を壊さずに、表面や内部のきずや欠陥を検出できる点です。
これは、ものづくりに携わる者として最も求めていたアプローチと言えるでしょう。
デジタル化が進みつつある製造業ですが、まだまだ「昭和気質」のアナログ文化が根強く残る現在でも、非破壊検査のノウハウと運用の巧拙が、現場品質や生産性に大きく影響しています。
本記事では、非破壊検査の代表的な試験法と、その効果的な活用事例、さらには現場での実践的なポイントについて、管理職・技術者・バイヤー目線で深掘りします。
非破壊検査の主な目的と導入効果
非破壊検査の導入目的は主に以下の3点です。
1. 製品や部材の品質保証(欠陥の早期発見・ロスの削減)
2. 設備やインフラの安全維持(劣化・損傷の予防保全)
3. コスト削減・生産効率向上(再加工や廃棄の削減)
特に昨今はサプライチェーンのグローバル化、複雑化に伴い、調達購買段階の品質保証がよりシビアになっています。
例えば自動車・インフラ・鉄道・航空機など、命に直結する領域では「非破壊検査ありき」で調達基準やリスクマネジメントがなされています。
非破壊検査の代表的な試験法
1. 浸透探傷試験(PT: Penetrant Testing)
浸透探傷試験は、表面に開口した微細なきず(割れ・ピンホールなど)の検出に優れた方法です。
染料や蛍光液などの浸透液を検査対象の表面に塗布し、ある一定時間が経過した後余分な液を拭き取ります。
その後現像剤を使うと、液が入り込んだきず部分だけが染まり、肉眼や紫外線ランプ等で欠陥箇所が浮き上がります。
主な用途は、溶接部品、アルミやステンレス素材の製品、精密機械部品等の微細クラックの発見です。
工具も簡易で現場対応力が高く、コストパフォーマンスの良い試験法とされていますが、「開口欠陥限定(表面以外は不可)」という弱点もあります。
2. 磁粉探傷試験(MT: Magnetic Particle Testing)
磁粉探傷試験は、鉄鋼やニッケル系など磁性体材料の表面・近表面部のきずを検出するのに適しています。
検査対象に磁界を印加し、その上から磁粉を振りかけることで、きず部分に磁束漏洩が生じ磁粉が集まります。
肉眼で判別しやすく、かつ素早く広範囲にチェックできるため、自動車産業等での大量部品検査や鋳物検査にもよく使われます。
但し、非鉄金属や飽和した磁性体では適用できないため、素材の判断が必要です。
3. 超音波探傷試験(UT: Ultrasonic Testing)
超音波探傷試験は、高周波の超音波を製品内部に伝播させ、欠陥からの反射波(エコー)を利用して内部きずの有無・大きさ・位置などを判定します。
厚み測定と並行して行えるため、鍛造品・溶接部・配管・タンク等、あらゆる産業分野で採用されています。
欠陥を数値化できたり、データ履歴が残せることから、昨今のトレーサビリティ志向とも相性抜群です。
操作には一定の習熟が必要ですが、デジタル技術との親和性もあり、今後はロボットや自動化ラインに組み込む事例も増えています。
4. 放射線透過試験(RT: Radiographic Testing)
放射線透過試験はX線やγ線を用い、素材内部を透過した時の減衰パターンから内部欠陥を可視化する方法です。
工業用X線フィルムまたはデジタル検出器で画像として記録できるため、板厚のある溶接構造物や鋳物などの内部部のボイド・割れ・圧迫痕検出に優れています。
「見えない箇所を見える化できる」ことが最大の強みですが、放射線漏洩防止や健康管理、検査コスト・設置スペースなど制約も多いのが実情です。
5. 渦流探傷試験(ET: Eddy Current Testing)
渦流探傷試験は、導電性材料の表面や近表面のきず検出、厚さ測定などに利用される方法です。
コイルに流れる交流電流によって生じる磁界で渦電流を発生させ、欠陥の有無で変化するインピーダンス成分を測定します。
接触不要で高速スキャンが可能、塗膜や非接触環境でも効果を発揮するため、航空機部品やロール材、配管の保守点検にも重宝されています。
非破壊検査導入の現場的メリットと最新動向
調達購買担当にとってのインパクト
非破壊検査の導入・活用は、調達購買段階での「入口品質」を飛躍的に向上させます。
サプライヤー選定時点で非破壊検査能力を持っているか、結果の信頼性・標準化体制はどうかまでチェックすることで、工程内不具合やクレーム、コストロスの低減に直結します。
また、最近では「検査データの納入要件化」「ロットごとの非破壊検査報告書提出」など要求レベルも高度化しています。
バイヤーに求められるのは、非破壊検査方式ごとの特徴と限界、適正コストや納期、工程全体最適視点でのバランス感覚です。
現場管理者・工場長の視点
現場では、非破壊検査の導入と運用が「品質管理そのものの強化」につながります。
単なる不良摘出ツールとしてだけでなく、工程異常の予兆把握や製造条件の最適化、技能継承にも寄与します。
また昭和から続くアナログ文化の工場では、熟練技能者の「勘と経験」に加えて、科学的根拠(非破壊検査結果)を判断材料に使うことで、若手や非熟練者でも高品質な検査が再現できます。
人手不足や技術伝承の難しさが叫ばれる中、検査ノウハウの形式知化・マニュアル化が推進しやすい点も、現場導入の大きな価値です。
サプライヤー・メーカー側からの提案事例
サプライヤー側からは、「非破壊検査による全数検査・データ保証」をバイヤーへ提案することで、差別化を図る事例も増えています。
例えば鋳造部品や鍛造製品のライン上検査、省人化&省工程化への寄与、IoT/AIとの連動(自動判定・遠隔モニタリング)をアピールし、バイヤーとの信頼構築・受注獲得に一役買っています。
また、あらかじめサンプル検査・検査協議を通じて双方合意の基準を明確化しておくことで、納入後トラブルリスクを未然に防ぐという動きも業界全体で進んでいます。
最新事例:工場の自動化・スマート工場と非破壊検査
近年、工場自動化やスマートファクトリー実現に向けて、非破壊検査の自動化・高度化が進んでいます。
例えば、溶接ラインの「自動超音波検査装置」による100%オンライン検査や、AIを活用した検出結果の自動判定化。
また複雑形状部品の「ロボットアームによるX線CT検査」や、IoT連携によるリアルタイム検査ログ管理など、現場の課題解決と生産現場DXが密接に結びついています。
これにより、「簡易で正確、属人性の排除、トレーサビリティ確保」という新しい価値創出が実現しています。
一方で、昭和時代からのアナログ現場では、最新技術への「人材教育」や「コストと効果のバランス」が課題となることも事実です。
だからこそ、既存手法+最新技術の「ハイブリッド型」運用を志向し、現場の実態に合った最適解を模索していく姿勢が求められます。
まとめ:非破壊検査はバイヤー・現場・サプライヤーの共通言語
非破壊検査は、単なる品質保証ツールにとどまらず、製造現場と調達・購買、サプライヤーの相互信頼を支える”共通言語”のひとつです。
検査種別ごとの特徴や限界、工程全体の中での最適活用ポイントを理解すれば、メーカーも調達者もサプライヤーも、一歩先ゆく品質競争力が手に入ります。
日本の製造業が次なる成長を遂げるには、現場目線×デジタル×業界動向をふまえたラテラルシンキングで、非破壊検査を武器にすることが不可欠です。
時代を超えて磨かれてきた“現場力”と、進化し続ける検査技術――。
この2つをしっかりと融合し、ものづくりの新たな地平線を一緒に切り拓いていきましょう。
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