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飲食業が自社ブランドソースを製造するためのレトルト殺菌と賞味期限設定

目次
はじめに:飲食業の自社ブランドソース製造が注目される背景
飲食業界では、「自社ブランドソース」の開発・製造が一つのトレンドとなっています。
外食需要の多様化やSNS映えする商品訴求に加え、コロナ禍で増えたテイクアウト・通販需要が背景にあります。
料理の味を決定づける「ソース」は、店舗ごとのこだわりや特色を表現できるため、お客様との“つながり”を強化する重要な要素となっています。
一方で、業務用調理とは勝手が異なる“レトルト殺菌”と“賞味期限設定”には専門知識と現場知見が不可欠です。
本記事では、20年以上大手メーカー現場に携わってきた知見から、実践的なポイントを解説しますので、自社ブランドソース化を目指す飲食業の方や、OEMを受託する工場、バイヤー初心者、サプライヤーの皆様も是非ご一読ください。
自社ブランドソースの製造を成功させるための基礎知識
“業務用”から“商品化”への大きな壁
自店舗で使う調味液やソースと、店頭・ECで販売する「パッケージ商品」とでは、衛生管理・流通環境・消費期限設定・表示法など、まったく別のレギュレーションが求められます。
特に、「常温保存できるレトルト殺菌済み製品」と「未殺菌の要冷蔵品」では、製造フロー・物流・コスト・ターゲット市場が大きく異なります。
レトルト化は常温流通で販路開拓が容易になり、SDGs的にもフードロス低減につながるメリットがある反面、製造に高い専門性が必要となります。
レトルト殺菌とは?:現場目線の工程解説
「レトルト殺菌」とは、加圧加熱によって、食品中の細菌・微生物を死滅させるプロセスです。
一般的には120℃、4〜30分間(製品・内容量・粘度により異なる)で加熱します。
主な殺菌条件の種類は以下の通りです。
– 水噴射レトルト殺菌(レトルトパウチ食品等。多品種少量に対応しやすい)
– 蒸気式レトルト殺菌(缶詰やびん詰加工に多用)
殺菌条件の決定には、「食中毒菌(ボツリヌス菌等)」の芽胞菌制御を基準とし、厳密なF値管理(加熱殺菌値)が求められます。
F値とは、「どれだけ熱ダメージを細菌に与えたか」の指標です。製品設計・HACCP管理の両面で必須となります。
レトルト殺菌の現場で発生しやすい問題点
加熱工程での「味・風味への影響」
これが一番現場で苦労する部分です。
高温・長時間の加熱で、原レシピとは
・色の変化(褐変・退色)
・香気成分の飛散
・粘度ダウン
などが顕著になります。
とりわけ、香味野菜やスパイスを多用するソースでは、「味がぼやける」「スパイス臭が弱まる」といった変化が起こりやすくなります。
現場では“計算上はOK”でも「試作で味見しながら逐次調整」が原則です。新規商品の場合は、最初から5%-10%程度、味付けを濃いめに仕込むのが鉄則となります。
分離・沈殿、容器適合性の問題
レトルト殺菌による高温環境は、デンプン系増粘剤や乳化剤の分解、あるいは油分と水分の分離などを引き起こします。
特に、カレーやトマトソースのように水分・油分・固形分が混在するものは、製法や配合を一工夫しないと製品安定性が損なわれます。
また、「容器の選定」も重要です。
レトルトパウチなら、ナイロンポリ袋、ロートポリ袋(高酸性用/アルカリ性用)など内容物と熱条件に適合したものを選ばなくてはなりません。
缶詰やガラス瓶では、内容物のpHや粘度と、容器の涼味性・密封性とのバランスも設計課題です。
賞味期限の設定:科学的根拠と現場の注意点
「経験値」で決めないことの重要性
多くの飲食店や小規模メーカーが、“今までの経験”や“原材料の賞味期限”をもとに期限設定してしまうことがあります。
ですが、商品として世に出すなら、「科学的に検証した根拠」を持った賞味期限設定は絶対条件です。
なぜなら、流通・販売において安全性毎も消費者・取引先を守る“品質保証責任”が発生するからです。
賞味期限設定に必要な試験内容
一般的な製品の場合、以下の検証が求められます。
1. 微生物検査(一般生菌、大腸菌群、耐熱性菌など)
2. 理化学検査(pH、水分活性(Aw)、食塩濃度)
3. 官能評価(色調・味・匂い・分離・沈殿など外観含む)
4. 保存試験(実際に製品を製造し、指定条件下において定期的に検査)
証明データをもとに、「設定日数+安全マージン」を加えて期限ラベルを設計します。
現場ノウハウ:
製造ロットでばらつきが出ないか、季節による環境変化がないか、粘度・分離・色調など微調整が必要な場合は、必ず複数ロットで耐久試験することを強く推奨します。
表示法・規制対応まで:バイヤー視点で知っておくべきポイント
食品表示法とアレルゲン表示の注意
ソース類の販売には、正確な原材料名、添加物の記載、アレルギー物質28品目の適切な表示が義務付けられます。
業務用で仕入れているスパイスや調味料・出汁類の原材料詳細も、すべて遡及し表示する必要があります。
もし、「商社経由で調達している化学調味料などの詳細が不明」という場合、バイヤーは必ずサプライヤーに確認を徹底し、証明書を確保しましょう。
ロット管理・トレーサビリティの厳格化
昨今、食品事故や回収事例が急増していることから、バイヤー側は「ロットごとの履歴管理」「使用原料の入手経路と到着日」「万が一の回収時、1時間以内に履歴提示できるシステム」が標準化されています。
このためOEM工場側でも、「誤ったロット混入」や「原料の流用」を防ぐラベルスキャン・記録IT化が強く求められています。
昭和の“ノート記帳”や“現場担当の記憶”だけに頼る方法はもう通用しません。
小さな飲食店ブランドであっても、「きちんとした品質保証書の発行体制」がある製造パートナーの選定がバイヤーの眼目となっています。
OEM製造パートナー選定で失敗しないコツ
強い現場力・品質保証体制があるかを見極める
単純なコスト競争よりも、「きちんとレトルト殺菌と賞味期限の理論を理解している現場力」のあるパートナー選びが成功のカギです。
おすすめのチェックリストを記載します。
– 食品衛生責任者や品質管理者が常駐しているか
– HACCP認証(あるいはこれに準じる体制)があるか
– 設備能力(容量、殺菌機のサイズ、試作スピード)
– 表示法・行政監査対応の実績が豊富か
– 新しいレシピ提案や試作フィードバックの経験値が高いか
価格だけでなく「実際に現場を見て、衛生・工程管理のレベルを体感する」ことが大切です。
受託先と自社の“連携力”が商品力につながる
OEM依頼側(飲食業者)は、“イメージ・理想”を伝えるだけでなく、「現場で守るべき要件」「許容できる味・見た目の範囲」も一緒にシェアしましょう。
工場側は、「プロから見た殺菌条件・期限・味の折り合い点」を率直に提案するのが、お互いに“いい商品”を作り出す秘訣となります。
この連携サイクルをしっかり回すことで、「見た目だけでなく、食中毒事故ゼロ、強い信頼とリピートにつながる自社ブランドソース」が構築されていきます。
まとめ:昭和の慣習を超え、“今”求められる現場目線の商品設計を
自社ブランドソースの商品化は調理現場の創意工夫と、衛生・食品工学の知見、そして最新の法律順守が問われる分野です。
現場の肌感と科学、両方が揃って初めて「エンドユーザーから信頼されるヒット商品」が生まれます。
飲食業・バイヤーを目指す方・サプライヤー各位には、昭和的な「なんとなく」や「これまで大丈夫だったから…」を脱して、最新の現場力と連携で、業界全体が進化する起点を担っていただきたいと願います。
その上で、“食の安全・安心”と“自社の特色”を両立させるソース製造にチャレンジしてみてください。
製造業100年のノウハウを生かし、皆様とともに未来の食を創ってまいりましょう。
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