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“荷待ち”が物流コストに含まれていない企業の危険性

目次
はじめに:“荷待ち”とは何か?
製造業の現場では、毎日のようにトラックや輸送車両が資材や製品を運び込んだり、出荷したりしています。
この物流工程で頻繁に発生するのが“荷待ち”です。
荷待ちとは、トラックドライバーや運搬担当者が、工場や倉庫で荷物の積み下ろしを待機する時間のことを指します。
一見、些細な時間に思えるかもしれません。
しかし、この荷待ちが実は物流コストに大きなインパクトをもたらしていること、そして荷待ちコストを見過ごしている企業が“見えない経営リスク”を抱えていることを、多くの現場関係者が正しく認識していません。
この記事では、荷待ちコストが物流経費として認識されていない場合の危険性、その理由、そして現場や現行の業界体質をふまえた対策について、現場と経営の両面から掘り下げていきます。
なぜ“荷待ち”はコストと見なされないのか?
昭和時代から続く多くの製造業や物流現場では、「物流はサービス」「運ぶのが当たり前」「ドライバーが多少待つのは仕方がない」といった価値観がいまだ根強く存在します。
特に日本の製造業では“Just in Time”(ジャストインタイム)を代表とする納期厳守文化が強く、ドライバーや運送会社にしわ寄せが行きがちです。
さらに、経理や管理部門としても、物流コストは“運賃”や“燃料費”が中心であり、待機にかかる人件費やロス時間は見過ごされがちです。
結果として、荷待ち=コストという明確な意識改革が進んでいません。
物流2024年問題の本質と荷待ちの関係
近年話題となっている「物流2024年問題」では、トラックドライバーの残業規制強化により、従来のように“待たせることが前提”の運送契約が成り立たなくなると危惧されています。
これは、荷待ちコストを無視してきたツケが顕在化したとも言えます。
荷待ちが引き起こす潜在的リスク
荷待ちを単なる“現場の不都合”と考えてはいけません。
そこには、企業全体にふりかかる数多くのリスクが隠れています。
1. 隠れたコスト増大と収益圧迫
荷待ちによる人件費・車両費は運送会社やドライバーにとっては“持ち出し”となりがちです。
しかし、長期的には運賃の値上げ交渉や、サプライチェーン内のコスト転嫁という形で荷主企業にも跳ね返ってきます。
これが製品原価の見えない増加となり、競争力喪失につながります。
2. サプライヤーや運送会社との信頼関係の悪化
「待たされるのは当たり前」「安く運べ」という姿勢は、協力関係にひびが入り、優秀なパートナーを失うリスクも高まります。
売り手市場になった場合、取引が突然打ち切られる可能性も。
3. サプライチェーンの脆弱化・納期遅延リスク
荷待ちが慢性化すると、ドライバーの拘束時間が長くなり、さらに人手不足に拍車がかかります。
その結果、納品遅延や欠品発生という事態が発生し、サプライチェーン全体の安定性が脆弱になります。
4. 法令遵守違反・企業イメージ悪化
労働基準法や働き方改革関連法に違反していると見なされた場合、企業の社会的責任(CSR)や“ホワイト企業”イメージにも大きく傷がつきます。
SDGsやESG経営の面からも、現代では看過できません。
なぜ荷待ちコストを“見える化”できないのか
実際に荷待ちコストを物流コストとして盛り込むことはなぜ難しいのでしょうか。
現場感覚やアナログ的な思考が強く残る製造業ゆえの三つの理由を解説します。
1. コスト計上の仕組みがアナログ
多くの企業では、物流関連費用は“実際に支払った運賃”のみが管理され、待ち時間や付帯作業の費用は記録すらされていません。
特にExcelや紙の伝票が主流の現場では、待ち時間のトラッキングが仕組み上困難です。
2. サプライヤー側の遠慮・弱い交渉力
サプライヤーや運送会社側も「下請けだから強く言えない」「荷待ちをコスト計算できると取引を切られる」という心理が根強くあります。
結果として、いわば“泣き寝入り”が常態化しています。
3. 誰にも責任が転嫁されない曖昧な体制
待ち時間の責任所在が曖昧であり、「現場でうまくやってくれ」と丸投げされがちです。
業界全体で“慣習”として処理されてきたため、構造改革が後回しにされてきました。
現場発想で“荷待ち”コストを管理するために
これまでの体質や仕組みに根差した難しさを認識したうえで、現場と経営目線の両方から実践的なアプローチを提案します。
1. 荷待ち時間の“計測・見える化”から始める
まず最優先すべきは、荷待ち時間の正確な記録です。
アナログ現場に先端ITをいきなり持ち込むのは難しいですが、簡易なタイムカードやチェックリストの活用、運送会社との情報共有表など、実態把握から始めましょう。
最近ではドライバー用スマホアプリやデジタコ(デジタルタコグラフ)を活用した現場データ収集も進んでいます。
現状把握ができれば、どこに課題のボトルネックがあるかが明確になります。
2. 荷待ちコストの“内部コスト化”による原価管理
単に外注費として運賃のみを管理するのではなく、荷待ち時間に相当する分のコスト(例:ドライバーの時給×待機時間)をわが社の“内部物流コスト”として算出し、原価計算や業務改善の指標とします。
この“見える化”が、改善意欲を引き出す第一歩です。
3. 荷待ち低減に効く“現場改革”アイディア
・積込/荷下ろし予約制の導入(受付システム活用)
・納入/出荷窓口の増設や稼働時間の拡大
・現場での積込/荷下ろし手順マニュアルの明確化
・ロジスティクス担当者の専任化と責任明確化
・繁忙期や閑散期に応じた便数や到着時間の平準化
小さな改善の積み重ねが、習慣(仕組み)として定着するカギです。
4. パートナーと“協働型”関係の構築
運送会社やサプライヤーと「対等なパートナーシップ」を築くことも不可欠です。
荷待ち・付帯作業の有償化、協力会社からのフィードバック制度、双方のコスト構造を“オープン”に話し合うなど、旧来型の“取引先=コストカット対象”という発想から脱却しましょう。
荷待ちに敏感な企業が“選ばれる時代”へ
人口減少・高齢化による“人手不足”、物流業の重要性認識の高まり、2024年問題など外部環境の変化は、製造業・サプライヤー・運送事業者に強制的な変革を迫っています。
“荷待ちをコストとして正しく認識し、改善行動に移す企業”は、今後以下のようなメリットを享受できます。
・サプライヤーや運送会社から“選ばれる荷主”となり、強いサプライチェーンを維持
・見えにくい経費が透明化され、経営課題がより正確に把握可能
・ESG/SDGsやコンプライアンスが重視される社会で企業価値が向上
・現場のロス・ストレスが軽減し、社員やパートナーの生産性が向上
まとめ:アナログ業界こそ“気づき”が変革の最初の一歩
荷待ちコストを物流経費として“見て見ぬふり”をしている企業は、知らず知らずのうちに社内外で大きなリスクを背負っています。
そしてそれは“古き良きアナログ現場の慣習”だけではもはや乗り切れない時代に入っています。
「今この瞬間も、どこかで待たされているドライバーがいる」「その見えないコストは、確実にじわじわと企業体力を蝕んでいる」
その“一歩引いた視点”を持つことが、組織変革の第一歩です。
現場を愛し業界の未来を思う方々こそ、“荷待ちコストの可視化・削減”という新たな地平線に向け、今、具体的なアクションを。
製造業の発展、ひいては日本経済の持続的成長のために、リーダー自ら“見えないコスト”との向き合い方を見直してみてはいかがでしょうか。
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