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OEMトレーナーで生地変更を行う際のリスクと検証ステップ

目次
OEMトレーナーで生地変更を行う際のリスクと検証ステップ
はじめに
製造業において、OEM(Original Equipment Manufacturer)製品のトレーナーはニッチから大規模まで幅広い需要があります。
トレンドやコスト削減、市場ニーズの変化に対応するために「生地変更」を検討する機会も増えています。
しかし、生地変更は単なる原材料の置き換えではなく、品質、納期、工場の生産体制、さらには取引先との信頼関係まで影響を及ぼす大きな判断です。
昭和から令和へと時代が進んだ今なお、アナログな意思決定や現場感覚が色濃く残るこの業界で、現場の視点から生地変更時のリスクと、確実な検証ステップを解説します。
OEMトレーナーにおける「生地変更」とは
OEMトレーナーの「生地変更」とは、既存モデルで採用している生地から、別の素材・厚み・仕様へと切り替えることを指します。
一見シンプルな工程のようですが、実際には以下のような多面的な変更が伴います。
- 原材料調達先の変更や追加選定
- 生地スペック(厚み・質感・伸縮性など)の再定義
- 裁断・縫製などの工法再調整
- 完成品としての外観・触感・着心地の再評価
このプロセスはメーカー、バイヤー(購買担当)、サプライヤー(素材・部品供給者)それぞれにとって、大きな分岐点となります。
過去の経験や業界独特の「慣例」に流されず、緻密なリスクマネジメントが不可欠です。
生地変更に伴う主なリスク
1. 品質不安定化リスク
最も大きなリスクは「品質の不安定化」です。
素材が変わることで、仕上がりの色味や光沢、縮み方、摩耗・毛羽立ちへの強さ、洗濯耐久性など、トレーナーとして不可欠な要素が変化します。
特にOEMの場合、完成品の見た目や触感に敏感なお客様も多い。
「以前のものより着心地が悪い」「すぐ毛玉ができる」「色落ちする」などのクレームが集中する恐れがあります。
2. 製造コストの予想外増加
新素材への切り替えによって、調達コストだけでなく、裁断時の歩留まり(材料の無駄にならない比率)、縫製オペレーションの難易度、検査工程の手間などが増え、結果として総コストが跳ね上がることもあります。
テスト段階では見抜けなかった「縫いづらさ」「厚みブレによる検品落ち」が量産開始後に発覚すると、大きな損失につながります。
3. 生産リードタイムの延長・納期遅延
新しい生地の工場ライン導入には、知見やノウハウの蓄積が必要です。
さらに、トレーナーは季節商品としてデリバリータイミングが重要です。
新素材を本格導入したことで、試作回数や本生産立ち上げに想定外の時間がかかり、納期遅延を引き起こすケースもあります。
4. 需要予測のズレ・在庫リスク増大
OEM供給先が大手アパレルの場合、新しい生地の質感や色味によって店頭での「売れ行き」も変化しやすいです。
結果的に需要予測が外れ、余剰在庫や返品リスク増につながります。
これはOEM供給側、バイヤー双方に重い負担となります。
5. サプライチェーンの新たなトラブル
サプライヤーとの契約条件や責任分界点が適切に更新されていない場合、納品トラブルや品質不良時の補償問題が発生しやすくなります。
また、物流面でも新素材特有の輸送中劣化や保管方法トラブルが顕在化することが珍しくありません。
アナログ業界に根付く「生地変更」への現場目線
昭和的なものづくり文化が色濃く残る業界では、「昔からこれで上手くいってきた」という“黒子の精神”や“現場のカン”が信奉されています。
一方で、働く現場メンバーの平均年齢が高く、口頭伝承や暗黙知に頼る部分が多いことも事実です。
こうした現場主義・職人性が「生地変更」という変化の場面ではブレーキや摩擦となることがよくあります。
ベテラン縫製リーダーの抵抗
「この生地は針が通りづらいからやめてほしい」「途中で仕様変更は現場が混乱する」など、ベテラン職人ほど慎重姿勢になりがちです。
現場に「説得と巻き込み」ができずトップダウンで決行すると、納期遅延や品質トラブルの温床となります。
書面文化と口約束のはざま
デジタル化が進む中、発注書や品質仕様書も形式だけの“ハンコ押し”で済まされてしまうことがあります。
「現場で直接頼んでおいた」「あの時言ったじゃない」という口頭伝達と公式文書の乖離が生地変更時の最大の落とし穴です。
「目検」と「根拠ある品質保証」のギャップ
職人の「目」と「手触り」で良否判定してきた昭和流から、科学的な管理やトレーサビリティを重視する令和型品質管理への転換期でもあります。
目検だけでは見落とされる微細な不具合をデータで拾い上げる体制づくりが求められています。
安全に生地変更を推進するための検証ステップ
失敗=大損失につながる生地変更では、「事前検証(バリデーション)」が重要です。
大手メーカーの現場長経験者だからこそ提案できる「鉄壁の検証フロー」を説明します。
ステップ1:関係者の巻き込みと情報共有
生地変更の目的と背景を調達・生産・品質管理・営業・顧客担当など関係者全員に正確かつタイムリーに伝えます。
「今回の変更は何のためか」「誰がどこで責任を持つか」を明文化しましょう。
ステップ2:新生地サンプルの徹底テスト
物理性能テスト(伸縮性・摩耗・洗濯耐久・色落ち)、仕上がり外観・触感評価(専門家・外部評価含む)、縫製現場での実加工テストを省略なく実施します。
特に「量産時再現性」と「旧生地との比較評価」が重要です。
ステップ3:工程変更に伴うリスクアセスメント
QC工程表(品質管理工程図)を使い、どこでどんな新リスクが生じるかを列挙・見える化します。
ベテラン現場リーダー、サプライヤー工場担当者、品証部門など、異なる立場の目線で「思い込み抜き」のディスカッションを行いましょう。
ステップ4:小ロット流動+フィードバックループ
初回量産は限定ロットで流動させ、市場投入前にユーザー評価(着用モニター含む)を回収します。
ここで得た苦情・トラブルは工程や仕様書、協力会社ルールに即反映し、柔軟なPDCAサイクルを回すことが大切です。
ステップ5:品質保証とトレーサビリティ体制の整備
変更前後の生地トレーサビリティ(ロットNo.管理、保管記録)、生地サプライヤーとの品質保証契約書のアップデートを行います。
また、量産後も「抜き取り検査」や市場クレームのトラッキングを継続することで、次の変更時にも生きるノウハウが蓄積されます。
OEMバイヤーが生地変更時に考えていること
OEMトレーナーのバイヤーは、「コストだけを見ている」わけではありません。
トレーナーのファッション性やブランドイメージ、季節商品としてのタイムリーな投入、店頭陳列後の評判や返品リスクまで、総合的な責任を背負っています。
生地選定における重視点
- 着用者の体感に直結する質感・通気性・軽さなど「顧客に届く品質」
- アパレル展示会やSNSでのトレンドと美観性
- 安定供給可能なサプライチェーン(BCP対応含む)
- シーズントレンドに遅れない時間軸での納品
- 他社との差別化やブランドストーリーとの親和性
バイヤーはこうした狙いをOEMサプライヤーにわかりやすく伝え、現場の連携を促す「橋渡し役」でもあります。
まとめ:昭和から令和へ、成功する生地変更の極意
OEMトレーナーの生地変更は、現場視点と全体最適の両輪が求められる経営課題です。
アナログな現場力を活かしつつ、客観的な検証と関係者巻き込みを徹底することで、初めて顧客価値を最大化できます。
令和の製造業は、経験主義とデータ主義の“いいとこ取り”が強みになります。
バイヤー・サプライヤーの双方が「変化をオープンに議論できる関係性」と「失敗から学ぶ仕組み」を持つこと。
それこそが、OEMビジネスにおける真の競争優位となるでしょう。
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