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生産技術者が知っておくべき設備導入時のROI計算の考え方

目次
はじめに
生産技術の分野では、設備投資が経営判断の大きな分かれ道となるケースが非常に多く見受けられます。
設備導入の判断基準として、「投資回収期間」や「コスト削減効果」ばかりが語られがちですが、実際の現場ではそれだけで十分とは言えません。
昭和の時代から続くアナログ的な考え方や慣習も根強く残っているのが日本の製造業界の現実です。
今回は、設備導入時に欠かせない「ROI(投資利益率)」計算の基本的な考え方を、長年現場で培った筆者の実践知も交えながら解説します。
バイヤーやサプライヤーの皆さまにも読み応えのある内容を意識しました。
ROIとは何か? 現場目線で理解する
ROI(投資利益率)とは?
ROIは「Return On Investment」の略で、投資した金額に対してどれだけリターン(利益)が得られるかを数値で示します。
計算式はシンプルです。
ROI=((投資による利益 − 投資額)÷ 投資額)× 100(%)
ここで言う「投資による利益」とは、ざっくり言えば新しい設備を導入したことによるコスト削減や生産性向上による増益分を指します。
なぜROIが重要なのか?
昭和時代の現場では、「もう機械が古くなったから」「壊れかけて対応できないから」といった理由だけで設備更新が許された時期もありました。
しかし、バブル崩壊・リーマンショック・コロナ禍を経た現在、設備投資に対して経営層は徹底的な合理性を求めるようになっています。
また投資資金の配分がシビアになり、多拠点の競合も激化し、単純な数値根拠が評価される時代となりました。
ROI計算の基本プロセス
1. 投資額を正確に把握する
設備本体価格だけではなく、周辺設備・設置工事費・プログラム開発費・教育コスト・保守費用など、あらゆる初期およびランニングコストを積み上げる必要があります。
意外と見落としがちなのが「現場への調整負担」「立上げ期間中の生産減」など間接的なコストです。
ここを漏らさず積み上げることが、経営層から信頼される生産技術者への第一歩です。
2. 投資によるメリットを定量化する
新設備の導入によるメリットは多岐にわたります。
– 省人化による人件費削減
– 生産性向上による製造数量アップ
– 不良率低減による廃棄・再加工費用の圧縮
– エネルギー効率向上による電気代ダウン
重要なのは、これらをきちんと「数字」で見える化することです。
現場の感覚や経験則だけで判断せず、日数・時間・金額で積み上げることが求められます。
3. 回収期間(Payback)も併せて確認する
ROlだけ見ると20%や30%でも高いように感じますが、どれだけ早く投資を回収できるか=回収期間も評価します。
一般的に2~5年以内での回収を目安としますが、この判断は会社の規模やキャッシュフロー、事業戦略によっても異なります。
具体例で学ぶ:実際のROI計算ステップ
ケーススタディ:省人化ロボットの導入例
例えば、部品の組立ラインに協働型ロボットを導入したケースを考えましょう。
導入初期費用:1,000万円
工事・周辺機器:200万円
プログラム開発・教育:100万円
合計初期投資:1,300万円
保守・消耗品コスト:年間30万円
① 毎年の人件費削減効果
1人分の人件費=500万円/年(諸経費込)
ロボット導入で2人→1人に省人化=500万円の削減
② 環境改善・不良削減によるコストダウン
不良率が3%→1%に減少し、1年で材料・再加工のコストが50万円下がる
③ ROIの計算
年間利益=500万円+50万円−30万円(保守等コスト)=520万円
初期投資1,300万円に対し
ROI(初年度)=(520万円 ÷ 1,300万円)×100=40%
約2.5年強で投資回収が見込める計算です。
現場で起こりやすいROI計算の落とし穴
「現場負担」「時間損失」の過小評価
ライン切り替えや新設備の立上げ期間中は、想定以上に生産効率が落ち込むことが多いです。
従業員のストレスや異動による間接損失、新人教育の負担なども見落とされがちですが、ここもROI計算に組み込むべき大事なポイントです。
「古き良き慣習」に引きずられるROIの弊害
昔から「数値化できないメリット」を強調しがちな業界文化が根強く残っています。
「機械が新しいから安心だ」「最新技術だから導入は当然」といった、根拠に乏しいポジショントークはROI評価を曇らせます。
必ず、経営層や関連部門が納得する「客観データ」を用いましょう。
「バーゲニングコスト」「事例調査費用」の見逃し
バイヤーやサプライヤー双方で、商談・交渉・法令対応などの調査期間にかかるコストを過小評価しがちです。
ROI計算の際には、これら「見えないコスト」も加味する視点が必要です。
現代の製造現場で求められる新しいROIの考え方
品質・納期・環境負荷もROIに含める時代へ
これまでのROIは単純な「金銭リターン」だけを重視しがちでしたが、時代は大きく変わりました。
工場DXや脱炭素化、SDGs目標などが叫ばれる現代の製造現場では、品質向上や安定納期体制の実現、環境負荷削減などもROI要素に含めて評価するべきです。
– 品質改善によるブランド価値向上
– 環境認証獲得による新規取引機会の増加
– 働き方改革推進による採用力向上
現場技術者は、こうした「見えにくいが定量化できる」付加価値も積極的にROIへ反映し、経営判断をサポートする必要があります。
バイヤー・サプライヤー両視点で考えるROI
バイヤーとしてROIをどう考えるか
バイヤー(調達・購買担当)が設備投資を社内説明する際、ROIは最大の説得材料になります。
ROIの高さ、回収期間の短さはもちろん、リスク対策や将来的コスト上昇要因(人件費高騰、法令規制強化など)も織り込んで提案することで、経営層の納得度と承認スピードが格段に上がります。
サプライヤーが提案時に理解しておくべきROI思考
サプライヤー視点では、バイヤーがどこに懸念を持つか、どんな合理的根拠を欲しがるかを予測しておくことが競争力になります。
単なる「機能・性能」アピールだけでなく、「この設備導入でこれだけコストが下がります」「これだけ品質リスクが減ります」と具体的なシミュレーションを提示できれば、強い武器になります。
まとめ 〜ROI思考で現場と経営をつなぐ〜
設備投資に対するROI計算は、製造業に携わる全ての方にとって必須スキルです。
現場感覚と数値根拠、双方の視点を兼ね備えたROI計算こそ、”昭和的感覚”と”令和の論理性”をつなぐ鍵となります。
また単なるコスト・利益計算だけでなく、品質・納期・環境へのインパクトも見逃さない「広義のROI評価」が今後の常識になるでしょう。
設備投資で悩むすべての方へ、現場の目線と経営判断の両立ができるROI思考の導入を強くおすすめします。
経験を活かし、積極的に新しい設備や技術にチャレンジするとともに、数字と納得感のある提案力を磨いていきましょう。
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