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輸送中の盗難リスクを最小化するセキュリティ対策

目次
はじめに:製造業の輸送現場に潜む盗難リスク
製造業のサプライチェーンは、原材料の調達から製品の出荷に至るまで、さまざまな段階を経ています。
その中でも「輸送」は、物理的に製品や部品が移動するため、不正・盗難のリスクが最も高まる瞬間です。
近年は自動車部品、電子機器、貴金属、食品など高付加価値品を狙った組織的な盗難や、悪質な内部犯行も増加しており、輸送セキュリティの強化は業界全体にとって喫緊の課題となっています。
私自身も管理職時代に、深夜配送ルートで高額部品が丸ごと失踪した痛恨の経験があります。
安全な取引の基盤構築に向け、昭和のアナログ対応から一歩抜け出した現場目線で、盗難リスク低減のための実践的セキュリティ対策を解説します。
なぜ今、輸送中の盗難リスクが増加しているのか
サプライチェーンの複雑化とリードタイム短縮要請
グローバル化が進み、1つの製品が複数拠点・国・ベンダーを跨いで製造されています。
拠点間輸送の回数が増加し、露出リスクが高まる一方、リードタイム短縮や在庫圧縮が厳しく求めれる状況が続いています。
結果として、夜間や休日の緊急便・直送便も増え、管理の甘さや手薄な時間帯、経路の複雑化が盗難グループにとっての“狙い目”となっています。
IT技術の浸透とアナログな現場運用のギャップ
GPSやIoTトラッカーなど管理技術が発展する一方、「紙伝票」「現場裁量」という昭和的慣習が根強く、企業間・部門間、時に現場担当者ごとにルールのバラつきが残っているのが現状です。
この“隙間”が、盗難グループや内部犯にとっては好都合な抜け道になっています。
内部者関与の新たな脅威
近年の特徴的な傾向として、外部からだけでなく、物流委託先従業員や荷主企業内部の人間による「組織的な情報漏洩・共謀盗難」が増加しています。
セキュリティ対策が”外側”だけに偏ると、“中からの綻び”が最大のリスクになりかねません。
盗難リスク低減のための実践的セキュリティ対策
1. 物理的セキュリティ強化:フェンスから荷役場管理まで
最も基本的な対策は、積み込み場・保管拠点の物理的強化です。
具体的には以下のポイントが重要です。
- 入出門の二重化や警備員による入退場管理の徹底
- 車両へのICカード・PIN管理(運転手個人登録と紐付け)
- 荷役場や待機スペースの明るい照明・監視カメラ設置
- 荷台封印シールの運用、開封履歴の記録
昭和のままの「誰でも出入り自由」「顔パスで積み卸し」という現場も少なくありません。
セキュリティ意識の醸成と、複数拠点でのルール標準化が重要です。
2. デジタル監視とトラッキング技術の積極活用
IoTトラッカーやGPSセンサーの高性能化・低価格化により、以下のような対策が現実的なものとなっています。
- 全車両へのGPS搭載・リアルタイム位置追跡と異常経路逸脱アラーム
- 高額貨物への温湿度・開封センサー付きIoTタグ導入
- 積込み~配送完了まで経路・イベント発生履歴の自動記録
特に高付加価値や機密品では、取引先への「運行状況共有」も信頼醸成の一環です。
アナログ現場でも“スマホで確認できる”簡便さを利用し、現場負荷を増やさずデジタル化を推進しましょう。
3. サプライチェーン全体でのリスク共有・情報連携
複数社を跨いだサプライチェーンでは、自社の対策だけでは不十分です。
- 協力会社・物流委託先・サプライヤーに対するセキュリティ監査
- 盗難発生時の迅速な情報共有ルートの事前構築
- 定期的な合同セキュリティ訓練・問題箇所の洗い出し
また、大手ベンダーでは「定期物流監査にセキュリティ評価を明記」し、納入先選定時の重要項目にする動きも加速しています。
単なる契約条項だけでなく、現場相互の「人的信頼」を土台とした運用が効果的です。
4. 教育・意識向上と内部統制の強化
現場従事者への教育は、紙の資料だけでなく“体験型”や“ケーススタディ”が極めて有効です。
- 盗難手口の実例共有や、内部者による共謀型リスクの疑似体験
- エスカレーションルール(異常発見時の報告フロー)の明示
- 「怪しい行動・不審人物チェック」のワークショップ
昭和からの現場では「長年同じ顔」「阿吽の呼吸」で乗り切ってきた文化がありますが、そこにも死角が潜んでいます。
軽視せず現場リーダー層が率先して“不審行動の声かけ”を実践する空気づくりが不可欠です。
5. 保険・ロス分析によるリスク分散
万全な対策を施していても、盗難リスクをゼロにはできません。
そのため、最終ラインとして「輸送保険の適用範囲見直し」「ロス(損失)分析に基づくPDCA運用」が重要です。
- 高額品・専用便には個別保険契約の設計
- 潜在ロス(未発見・未報告)への意識と早期兆候発見(ロット相違・数量差異・伝票不一致)の徹底
- 損失の定量的把握と定期的な対策見直し
「万一の損害も覚悟した上で、リスクを可視化・最小化する」という考え方が、長期的ビジネス安定につながります。
立場別:バイヤー・サプライヤー・現場リーダーがとるべきアクション
バイヤー(購買・調達者)の視点
購買部門が取引先・納入業者の「物流セキュリティ」を監査し、リスクが高い供給元には改善要請も辞さない毅然とした姿勢が求められます。
加えて、納期遅延や品質逸脱時に「原因が盗難・リスク管理不足にあるか」を見極め、単なる“価格交渉”だけでなく「安心・安全なパートナー選定」に軸足を移す発想が有効です。
サプライヤーの視点
サプライヤー側は、安易に運送コストのみに目を奪われがちですが、「独自の物流管理基準」を設け、自社のセキュリティ対策を強みに変えることが競争力へ直結します。
特に「荷役場・積み込み時の厳格な本人確認」や「デジタル追跡の運用開始」など独自の強みを積極発信することで、バイヤーからの信頼を得やすくなります。
工場・現場リーダーの視点
ラインの現場責任者・リーダークラスは、どうしても目の前の生産数字や現場運営に意識が集中し、「物流セキュリティは業者任せ」になりがちです。
しかし、発生する全ての損失・会計処理・クレームは、結局ユーザー・現場の責任へと返ってきます。
日々の荷役・積卸し時の「ちょっとした違和感」を見逃さない習慣、パート・派遣スタッフ含めた教育・実地訓練の継続的実施が、“未然防止”の最後の砦です。
まとめ:アナログ業界こそ「人と技術」の合わせ技を
輸送中の盗難リスクは、単なるセキュリティ部門や物流業者の課題でなく、「企業価値・ブランドを守る経営課題」として正面から向き合う必要があります。
昭和から現代に至るまでの現場の良さを活かしつつ、新技術・デジタル管理の導入や、社内外との連携・啓蒙活動を合わせた多層的な対策が必須です。
バイヤー・サプライヤー・現場、すべての立場が「盗難リスクはゼロにはできないが、最小化はできる」という前向きな意識で、現場目線の着実な改善を積み重ねていきましょう。
その結果が、健全なサプライチェーン構築と、製造業全体の信頼・競争力向上につながっていくのです。
皆様の現場で今日から一歩、盗難対策強化のアクションをスタートしてみてはいかがでしょうか。