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成功する研究開発テーマの設定とそのポイント

目次
はじめに:製造業の研究開発テーマとは
製造業における「研究開発テーマの設定」は、企業の競争力そのものを左右する非常に重要な経営判断です。
新製品の開発、既存技術の進化、コスト削減、品質向上—どの切り口から取り組むかによって、その後の事業展開や市場での立ち位置が大きく変わってしまいます。
昨今の日本の製造業は、長年続くアナログ志向とデジタル化への対応がせめぎ合う現場が多いのが実情です。
昭和型の現場力の良さを活かしつつ、研究開発テーマの設定にもDXの視点や新たな価値観が問われています。
本記事では、現場で培った20年超の経験をもとに、研究開発テーマを成功へ導くためのポイントを実践的に解説します。
なぜ「テーマ設定」が研究開発の明暗を分けるのか
1. 目的不明確な研究開発は失敗の元
研究開発の現場で陥りやすいのが「何となく新しいことに挑戦する」や「他社がやっているから」という発想によるテーマ選定です。
このような場合、プロジェクトが進むにつれてゴールが曖昧になり、結局「何のための開発か分からなかった」という事態になりやすいです。
つまり、テーマの設定時点で全てが決まると言っても過言ではありません。
2. 現場と経営層の意識ギャップが壁になる
経営ビジョンと現場の課題解決が乖離していると、資金やリソースの提供も難航します。
現場からのボトムアップと経営層のトップダウン、両方の視点を融合させることが、着実な成果に直結します。
3. サプライヤーとバイヤーの視座の違い
サプライヤーとしては「自社技術の売り込み」を考えがちですが、バイヤー側で求められるのは「現場の困りごとが解決されること」「自社(バイヤー側)の製造性・収益向上につながること」です。
この意識の差を埋めるところから、成功する研究開発は始まります。
製造業における研究開発テーマ設定の現場的アプローチ
1. 現場発の「痛み」からテーマを掘り下げる
研究開発の種は、現場の課題や顧客ニーズの中に眠っています。
例えば「工程で品質不良が多発している」「歩留まりが他社より悪い」といった“現場目線”の痛みが、現実的かつ価値の高いテーマの原石になります。
実際、筆者が在籍した工場では、月次の生産ラインミーティングで不良品発生原因の深掘りを定例化。
その中で浮かびあがる「現象」に対し、ラテラルシンキングで多角的に原因を推測しました。
例えば「樹脂成形品のバリ発生」を“材料特性×金型微振動”の掛け合わせで捉えたことで、意外な角度から新しい成形条件改良が生まれた、というケースもあります。
2. 「競争志向」から「協創志向」への転換
従来の製造業は、いかに他社よりも高性能・低コストを実現するかが主眼でしたが、現代では“協創型”の研究開発が主流になりつつあります。
バイヤーとサプライヤーが手を取り合い、情報や技術を持ち寄って全体最適化を実現する取り組みが増えています。
例えば自動車部品メーカーの共同開発例では「環境規制への早期対応」を命題に、大手自動車メーカーとサプライヤーが合同の開発会議を実施。
自社だけでは糸口が見えなかった排出ガス低減技術が、市場投入時期とともに最適化されました。
サプライヤー側も「自社開発→営業」で売り込む従来型ではなく「現場課題に直結した寄り添い型提案」が求められるようになっています。
3. テーマの「絞り込み」と「優先順位付け」
現場から吸い上げた課題を並べてみても、全てのテーマに一度に取り組むのは不可能です。
収益インパクト、市場規模、技術ハードル、リードタイム、組織戦略との整合性を整理し、「やるべきテーマ(=攻め)」と「やめるべきテーマ(=守り)」を明確に線引きしましょう。
昭和型企業ほど「全部やろう」「前例があるテーマが安全」と考えがちですが、経営資源の集中と大胆な選択がこれからの鍵です。
4. 現場データを武器に、テーマの「妥当性検証」を徹底
ハイレベルな戦略も、現場データの裏付けがなければ空回りに終わります。
開発テーマの初期段階から、設備データや品質記録、生産性トレンドなどの“現場数字”を徹底的に集めましょう。
今はIoTやセンサーデバイスが手軽に導入できる時代です。
たとえば「ある条件で故障頻度が跳ね上がる」など関連データを時系列で分析すれば、人の勘や思い込みでは見えなかったテーマの本質に迫れます。
また、バイヤー(購買担当)としてはサプライヤーと具体的な“数字ベースの会話”ができるパートナー企業を信頼しやすくなります。
昭和型アナログ業界の壁と、その突破口
「前例踏襲」がテーマイノベーションを妨げる
多くの日本の製造業現場では、「前に成功した例」を踏襲する安心感、いわゆる“昭和型マインド”が根強く残っています。
もちろん実績の再現性は大切ですが、現代の市場変化、グローバル競争、コスト削減圧力のなかでは「何となく前回と同じ方向性」だけでは埋もれてしまいます。
「現場からのボトムアップ」と「ラテラルシンキング」
テーマ設定の際、既存技術の延長線上に答えが見えない場合は、ラテラルシンキング(水平思考)が重要です。
既存技術を「掛け合わせる」発想や、全く異分野の知見を取り入れる柔軟さが、新たなイノベーション創出のトリガーになります。
例えば、食品製造現場で得た「安心・安全・清潔管理」のノウハウが、半導体工場の静電気・微粒子管理にヒントを与える—そんな一見意外な発想の飛躍が次世代テーマの原動力となることも実際にあります。
バイヤー・サプライヤー相互理解への深化
昭和型の「発注者―受注者」という“上下関係”は、いまだ完全には払拭できない企業も多いです。
しかし、成功する研究開発テーマは、バイヤー・サプライヤー間が“フラットな共創パートナー”となった時に、大きな成果をあげやすくなります。
相手の立場を想像し、「彼らが真に困っていることは何か」「どうすればWin-Winのテーマ足掛かりができるか」を複眼的に考えましょう。
テーマ設定の流れと業界成功事例
1. テーマ発掘フェーズ
・現場から上がった苦情・事故・不良情報のヒアリング
・市場や競合の技術動向調査
・バイヤー・サプライヤー間の定例ミーティングによるニーズ摺り合せ
2. テーマの仮説立案・検証
・現場データ解析と因果関係の可視化
・リスクアセスメント、実現可能性の精査
・時に現場作業員も交えた多職種ブレストの実施
3. テーマ選定と優先順位づけ
・ROI(投資対効果)、実施難易度、戦略整合性でスコア化
・経営層の意思決定
・関係部門との合意形成
4. 事例:某大手電子部品メーカーの「歩留まり革新」
課題は「海外新興国製品との価格競争で利益が圧迫」でした。
現場主導で歩留まりデータを全ライン・全工程・全作業員ごとに分解。
一見無関係に思えた「組立ラインの温湿度管理」と「品質逸脱」の相関を見出し、僅かな空調制御見直しだけで歩留まり数%改善を達成。
テーマ創出~仮説検証~実装まで、現場と経営・バイヤー・サプライヤーとの協働が肝でした。
未来を照らす研究開発テーマとは
日本の製造業がこれから真に世界で戦えるためには、「現場志向」と「異分野シナジー」を併せ持つ研究開発テーマをいかに設定できるかが鍵です。
デジタル化やグローバル化の波は止まりません。
成功する企業に共通するのは、現場の声を徹底して拾い、生データで裏付け、多視点で未来を想像するチーム力です。
今日からできることは、会議の在り方一つ変えることからでも始まります。
「なぜそれが今、必要なのか?」を問う癖を。
そして、「現場・経営・バイヤー・サプライヤー」全員が当事者となるテーマ設定を意識してください。
現場で悩む皆さん一人ひとりが、小さな一歩でもテーマ設定イノベーションを起こせば、日本の製造業は必ず再び世界で輝けます。
共に新たな地平線を切りひらきましょう。
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