投稿日:2025年10月13日

スナック菓子袋の静電気を防ぐフィルム帯電防止処理と搬送制御

はじめに:スナック菓子袋と静電気問題の現場実態

スナック菓子の包装工程で最も現場担当者が頭を悩ませている課題のひとつが、静電気による「袋のくっつき」や「異物吸着」、「搬送エラー」です。

昭和時代から使われ続けている設備や、アナログ的な運用フローが根強く残る製造現場では、時に静電気によるトラブルが製品品質や生産効率の向上を阻み、新たな自動化への壁となっています。

この記事では、長年現場で培ってきた経験や最新の技術動向を踏まえて、帯電防止フィルムの選定や帯電防止処理技術、さらに自動搬送ラインにおける搬送制御の工夫まで、現場目線の課題解決法を余すことなくご紹介します。

スナック菓子メーカーや関連サプライヤー、また調達・バイヤーを志す方にとっても、現場のリアルな課題認識と打ち手のヒントになる内容です。

スナック菓子包装袋に発生する静電気の正体

なぜフィルム袋は帯電しやすいのか?

スナック菓子の袋によく使われるのは、ポリプロピレン(PP)やポリエチレン(PE)、あるいはPETフィルムなどの樹脂系素材です。

これらの合成樹脂は絶縁体のため電子が移動しにくく、機械での巻き取りや袋成形・充填搬送・シール工程の中で、摩擦や剥離が繰返されると静電気を帯びやすくなります。

特に袋同士や装置部材との接触、ローラーとの擦れ、充填後の箱詰め時など、「どの工程でも」「どの箇所でも」帯電トラブルが起こり得るのが現実です。

静電気がもたらす主な現場問題

– 袋同士や袋と機械部材がくっつき、搬送・充填時に詰まりやジャムが発生
– 詰め合わせラインで複数袋が束になって混入、欠品や充填過多の品質不良
– 塵や微細異物、特に粉体調味料の飛散物が袋表面に付着して見栄えや清潔感低下
– シームやラベル貼り、重量計測など自動化工程でセンサー誤作動やエラー停止

製品品質への影響だけでなく、歩留まりや生産性、安全管理にも直結する重大な問題といえます。

帯電防止処理の基礎知識:何が一番効くのか?

加工現場でよく使われる帯電防止策の種類

対策は大きく「フィルム自体の帯電防止」「現場設備の静電気除去」「包装工程の制御」の3つのポイントで進められます。

– 帯電防止剤添加型フィルムの採用
– 表面コーティング(帯電防止剤塗布や親水処理)
– 吸湿性材料との複合ラミネート
– 搬送ライン・成形装置へのイオナイザー設置
– 床や機械フレームのアース・除電ブラシ活用
– エアブローや帯電防止マットによる局所対策

「何が一番効果が高いか?」は、現場環境や生産品目、包装材仕様で大きく異なるため、試作による評価が欠かせません。

帯電防止剤ってどんな材料?

帯電防止剤は、「界面活性剤型」と「高分子系」の2つが主流です。

– 界面活性剤型(アニオン型・カチオン型・両性型など)は手軽でコストメリットも大きいですが、徐々にフィルム表面から抜ける(ブリードアウト現象)があり、長期保存や水分が多い環境では効果が薄れやすい特徴があります。
– 高分子系(イオン導電性ポリマーなど)は耐久性と表面洗浄性が高く、医薬食品パッケージなどの高品質用途に用いられますが、コスト高・フィルムの透明度低減・表面粘性増加といったデメリットも考慮が必要です。

「ただコーティングすればよい」ではない、現場での“落とし穴”

実際の現場では、帯電防止剤を塗布や押出しでフィルムに添加しても、

– フィルムメーカーのロット違いで性能のバラつきが生じる
– 高温多湿や乾燥空間で効果が大幅に変動する
– 時間経過や摩擦による帯電防止成分の消失

といった「実運用ならではの盲点」が多くみられます。

最適な帯電防止フィルム選定には、実サンプルを使って生産現場での検証(ドライ/ウエット条件、摩擦耐久、微細異物吸着度合いの実測)が必須です。

搬送・包装工程の制御:現場力でトラブル撲滅

本当の意味での「自動化」とは

アナログな現場ほど、「静電気に強い包装材」づくりだけに頼りがちです。

しかし本質的な解決には、「設備と包装材の相性」「それぞれの工程で静電気が帯電しやすいポイントを見抜き、段階的に対処する」ことが不可欠です。

– 充填・搬送搬送初期でのイオナイザー設置(袋開口部に近付ける設計)
– 袋ストッカやピッカーグリッパーに導電ラバーや除電ブラシを追加
– シール部や検査工程ではフィルム自体よりも設備のアース設計を徹底
– 段積み箱詰め前の微小粉ダスト除去フィルムを巻き付け、付着物ごと除去
– 合理化・省人化で各工程の「無人化セル」間に局所除電ステーション設置

小手先の工夫だけでなく、包装ラインの構造自体を「静電気ありき」で捉えなおす発想が、昭和から抜け出せない現場にこそ求められています。

現場スタッフの「気づき力」とのコンビネーションが最強

たしかに最新鋭のイオナイザー導入や高コスト帯電防止フィルムに切替えることは効果があります。

しかし実際のトラブルは、「取り出し時に袋が2枚くっつきやすい場所」「ラインスピードが速い時だけ発生」「同じロットでも気温湿度でばらつく」…といった現場でしか見えない“クセ”に起因するケースが多いのです。

そのため現場スタッフ自身が、工程ごとに

– どこで袋がくっつくのか?
– どこでゴミが付くのか?
– どこでセンサー誤作動が起きやすいのか?

を日々観察し、こまめな改善PDCAを繰り返していくことが、根本対策につながります。

バイヤー・サプライヤーの視点:帯電防止仕様の交渉で押さえるポイント

“帯電防止フィルム”は誰の責任で選定するのか

製品トラブルが起きると、「これはサプライヤーのフィルム仕様が悪い」となりがちです。

しかし静電気は、「フィルム×包装設備×現場環境」による総合作用が原因です。

そのため、バイヤーにとっては

– 「フィルム側」と「現場側」のどちらの仕様が本質的解決につながるか?
– どの程度の費用対効果で帯電低減できるか?

を総合的に議論した上で仕様交渉する姿勢が重要です。

サプライヤー側も、「帯電防止剤の添加量だけ上げればOK」といった安易な提案でなく、現場ヒアリングや設備同行をしながら、実用面重視の共同改善を行うことが、信頼関係の構築につながります。

仕様交渉時に重視すべき「あるある」トラブル

– 品質クレームは「厳冬」「乾季」に激増
– ライン速度アップ時、包装機のローラー・ブロワー付近で特定の袋形状でトラブル多発
– 多品種小ロットの共用ラインやOEM先で思わぬ不具合(包装資材・ライン帯電性能差による)
– 新規帯電防止剤への切替時、摩擦や溶剤耐性・食品衛生法適合性に差が出る

過去の事故事例を分析し、“どこで・いつ・どんな条件下で問題となりやすいか”をサプライヤーとオープンに共有することで、現場に最も適した仕様選定に近づけます。

今後の業界動向:脱・昭和!本質的な静電気トラブルフリー現場へ

DXと連携した帯電・搬送制御の最新潮流

昨今は、製造現場のDX化・スマートファクトリー化の流れにより、帯電トラブルも「データ駆動」でマネジメントする時代に変わりつつあります。

– 静電気センサーやIoT対応帯電モニターでリアルタイム状況を可視化
– 異常帯電時に「自動でイオナイザーON」「自動アース切替」「ライン減速」する連携制御
– 材料ロット・温湿度データと帯電トラブルとの統計的関連性分析
– AIを活用した「トラブル予測」や「最適投入タイミング」提案

単なるスポット対策でなく、現場スタッフの勘・手作業に頼るだけでなく、システム全体で「静電気を帯びにくい包装ライン」へと進化しています。

サステナビリティ・コスト最適化と両立する風土づくりを

脱プラ・薄肉化・植物由来バイオマスフィルムなど、新素材導入が進む一方で、これらは「従来以上に帯電しやすい」場合も多くなっています。

本質的な解決には、現場の小さな改善活動と、新技術の導入を融合し

– 安全・品質 × 環境対応 × コスト最適化
– 設備投資と現場プロセス改善のハイブリッド
– サプライヤー・バイヤー・現場担当が“お互いの立場”を理解した全体最適

こうした「製造業本来の楽しさと難しさ」を意識した改善風土がカギとなるはずです。

まとめ:現場ノウハウと技術革新で静電気トラブルゼロへ

スナック菓子袋における静電気問題は、一つの素材、設備、誰か一人の頑張りだけでは解決しきれない、複雑な“現場の壁”です。

しかし、「現場ならではの視点」と「新しい技術的アプローチ」「サプライヤー・バイヤーの協力体制」といった多方面からのラテラルシンキングで、着実にトラブルは減らせます。

これから静電気トラブルフリーの製造現場づくりに取り組む皆様の一助となれば幸いです。

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