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シナリオプランニング手法を活用した戦略的ロードマップ策定とその具体的な進め方

目次
はじめに
シナリオプランニング手法は、近年の製造業の現場において、戦略策定の強力な武器となりつつあります。
複雑かつ不確実性の高い環境下で、いかにリスクを抑えながら柔軟な戦略を設計し、着実に目標達成へと導くのか。
この記事では、私が長年製造業の現場や管理職で培ってきた視点と、アナログな現場文化が色濃く残る業界の実情も踏まえつつ、シナリオプランニングを活用した戦略的ロードマップ策定の具体的な進め方を徹底解説します。
従来型の計画策定の限界とシナリオプランニングの必要性
昭和体質が残る製造業における“プラン=予算”思想
多くの日本の製造業では、未だに次年度計画は「前年ベース+α」で組み上げられ、PDCAサイクルの「計画」部分は極めて固定化されやすい傾向があります。
この考え方の背景には、「できるだけ意外性のない安定成長」を求める風土や、現場からのボトムアップによる組み立てといった良さも確かに存在します。
しかし、グローバル競争やサプライチェーンの多元化、原材料高騰、コロナ禍など、予測困難な出来事が常態化した現在、従来通りの計画主義や微調整型ロードマップでは乗り越えられない壁が立ちはだかっています。
シナリオプランニングとは何か
シナリオプランニング手法は、従来型の「1つの見込みをベースにした線形計画」ではなく、
「あらかじめ複数の将来像(シナリオ)を描き、それぞれのシナリオ下で最適な手を考える」という”マルチプランニング”の発想です。
シェル石油が1970年代の石油危機を乗り越えるために使ったことで有名ですが、その本質は「未来の不確実性を許容し、それでも勝ち残る道筋を築く」ことにあります。
シナリオプランニング型ロードマップ策定の全体像
5つの基本ステップ
1. 環境要因・ドライバーの抽出
2. 主要なシナリオの作成
3. 各シナリオにおける影響分析と課題抽出
4. 共通施策および個別シナリオ施策の策定
5. モニタリング体制・ピボット条件の設定
これらについて、現場実務に即した具体例を交えて詳しく解説します。
1. 環境要因・ドライバーの抽出
現場で起こる「変化の源」を拾う目線
市場環境、技術トレンド、規制、顧客の価値観、競合、地政学リスク、物流問題など、製造業の現場に影響する「変化のドライバー」を抽出します。
ここが表層的になりやすいのですが、ベテランの購買担当や現場スタッフの「肌感」も重視しましょう。
たとえば、「特殊鋼材の納期遅れがアジア市場で多発している」「半導体チップの流通が特定国集中」など、些細な違和感も立派なドライバー候補です。
2. 主要なシナリオの作成
未来の「ありうる分岐点」を複数描く
抽出したドライバーをもとに、「Aが起きればBになる」「その逆もありうる」と複数のルートを仮定してシナリオを構築します。
例えば、自動車部品メーカーであれば
「内燃機関車需要主導継続」シナリオ
「EV転換一気加速」シナリオ
「原材料高の長期化とサプライヤー淘汰」シナリオ
など3~4パターン程度を目安に設定します。
各シナリオについては、「現場の声」「営業・調達の日常的な気づき」もヒアリングして肉付けします。
経営層だけでなく、リーダー層や中堅社員も巻き込むことで、よりリアルで納得感のあるシナリオが描けます。
3. 影響分析と課題抽出
シナリオごとに「もしこうなったら」を全工程で点検
現場目線で各シナリオが自社に与える影響を、調達購買、生産管理、品質、設備保全など、バリューチェーン全体で点検します。
例:
・部品調達コストは?納期リードタイムは?
・設備投資は現有ラインで賄えるのか?
・今の品質管理体制はどこまで対応可能か?
・新しい工程や材料導入にはどんな障壁があるか?
こうした議論を「机上のシミュレーション」ではなく、現場ウォークやスタッフヒアリングを通じて洗い出すのが、実践的なアプローチです。
設備や購買の「属人化領域」など、アナログゆえの課題も必ず表出させましょう。
4. 共通施策と個別施策の策定
どのシナリオでも効く「逃げ筋」と、特化型の打ち手を分ける
全シナリオに共通する施策(例:多様なサプライヤー開拓、標準工程の普及、DX導入など)は優先投資で実行します。
一方、特定シナリオにだけ効く施策(例:EV化急進時のスペシャル生産ライン整備、逆に内燃車継続時の長期資材契約)は、トリガー条件を明確化し「スイッチ式」で構えておくのがポイントです。
現場教育・巻き込み・標準化の重要性
施策実行段階では、現場リーダーや調達・生産管理など中核部門の「自分ゴト化」とツール導入・変更アレルギーの克服が最大の壁となります。
昭和的な「変化を嫌う文化」も手強い部分ですが、現場で日常的に“なぜこれをやるのか”を対話し、ポイント施策はスモールスタートで実証実験することをお勧めします。
5. モニタリング体制・ピボット条件の設定
「いつ」「どんなシグナル」で路線変更するかを明確に
どんなに優れたロードマップでも、予想外の事象は必ず発生します。
ここで重要なのが「トリガーポイント(ピボット条件)」の明文化です。
「特定サプライヤーの稼働停止が3ヶ月続いたらプランB」
「市場シェアが一定水準を下回ったら、DX投資をもう一段上げる」
など、事前に条件とアクションプランをセットで決めておきましょう。
加えて、毎月・四半期のKPIレビューや現場ラウンドの場で、シナリオの現実化度合いと運用状況を点検することが必須です。
現場で実践するコツ:購買、サプライヤー両視点での応用
バイヤーとしての強みの育て方
戦略購買・調達の実務では、シナリオプランニング的な視点を「次善策の用意」「一社依存のリスク見極め」「コストベースだけでないバリューチェーン最適化」に活かすことができます。
サプライヤーとの交渉時も、「今はこの条件、でも○○が起こった場合は貴社とこの対策を…」といった複線的な会話ができると、信頼と最適提案を得やすくなります。
サプライヤー側に立った場合の視点
発注側がどんなシナリオで意思決定をしているかを知ることで、サプライヤー側も「自社の強みを押し出す最適タイミング」「先回りした提案で新規案件を取りにいく機会」などをつかみやすくなります。
現場こそが“未解決のシグナル源”
製造現場の日々の変化、「あの設備が動きにくい」「部材の納入ミスが増えている」…、
こうした生の声が、戦略レベルのシナリオ策定にも直結します。
管理職や戦略スタッフだけに任せず、ぜひ現場スタッフ全員で「変化の兆し」を拾い上げ、シナリオ議論に参加しましょう。
まとめ:シナリオプランニングで“勝てる工場”になる
製造業における不確実性は、この先も減ることはありません。
むしろ、過去に経験したことのない新たな変化が頻繁に現れる時代です。
そんな中で、シナリオプランニング手法を活用して複線的かつ現実的な戦略ロードマップを策定することが、競争力維持・組織の持続的成長の大きなカギになります。
昭和のやり方を否定せず、その良さを生かしながら一歩ずつ現代的な戦略へとバージョンアップする。
その実践は現場と経営、バイヤーとサプライヤーをつなぐコミュニケーションから始まります。
変化を恐れず、実践的なシナリオプランニングをぜひ現場に取り入れてみてください。
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