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投稿日:2025年5月16日

航空機・無人機の動作制御装置に関する共同開発の戦略とノウハウ

はじめに:航空機・無人機市場の拡大と共同開発の重要性

近年、航空機および無人機(ドローン)の市場が急速に拡大しています。

産業用ドローンの普及、都市間を結ぶエアタクシー等の革新技術の登場によって、その動作制御装置の開発ニーズがかつてない勢いで高まっています。

この分野での市場獲得や優位性確立には、もはや一社単独の技術力だけでなく、共同開発による多様な知見や柔軟な発想が不可欠です。

本記事では、20年以上にわたり製造業の現場に携わり、調達・生産・品質・工場自動化の全領域を経験した筆者の視点から、航空機・無人機の動作制御装置における共同開発の戦略と現場で役立つノウハウを解説します。

これからバイヤーを目指す方、サプライヤー目線でバイヤーの思考を知りたい方、そして製造現場での成長を望む全ての方に有益な内容となるでしょう。

共同開発が求められる背景と現場の課題

複雑化・高度化する動作制御技術

航空機や無人機の制御装置は、安全性・精密性・信頼性のいずれも最高水準が要求されます。

特にフライトコントローラーなどの中枢装置は、ハードウェアとソフトウェアが高度に融合し、部品点数・インターフェース・データ処理能力ともに飛躍的に複雑化しています。

一つの企業だけで全方位の技術をカバーすることは困難となり、OEM(元請)とサプライヤー、場合によっては同業他社も巻き込んだ共同開発プロジェクトへと発展するケースも増えています。

アナログ業界の慣習とデジタル化のギャップ

しかしながら、製造業は長く「昭和型のアナログ文化」が根強く残る世界です。

たとえば、図面や仕様書の管理が紙ベースで行われていたり、エンジニア同士のナレッジ共有が属人的だったりする現場も未だ少なくありません。

共同開発の現場では、こうした遅れた慣習が円滑な情報共有や意思決定の障壁となる事例も見受けられます。

共同開発を成功させる戦略

キーマンを巻き込んだ初期設計フェーズの「合意形成」

共同開発の成否は、最初の仕様設計段階での合意形成に大きく左右されます。

ここで重視すべきポイントは、双方の「現場キーマン」が初期から密接に関与することです。

サプライヤーであれば、開発部門だけでなく現場の生産技術担当者や品質管理責任者もプロジェクトに組み込みましょう。

これは、机上の技術議論だけでなく、量産に落とし込んだ際のリスクや工数・歩留まりなど、現場目線の課題も同時に設計へフィードバックできるからです。

バイヤー(発注元)側も、調達部門やアセットマネジメント担当が技術部門と連携し、価格競争力・調達リードタイム・保守性までも加味した意思決定をすることが重要です。

徹底した情報の「見える化」とデジタルツールの活用

共同開発のボトルネックの多くは、情報共有の「曖昧さ」と「遅延」にあります。

従来の紙図面やメールベースのやりとりでは、改訂やバージョン不整合、伝言ゲームによる齟齬が頻発しがちです。

これを防ぐには、仕様書・設計レビュー・進捗状況・課題管理などを、共同でリアルタイムに更新・確認できるクラウドツールの導入が不可欠です。

プロセスマップや権限管理をしっかり設計し、お互いの工程負担や意思決定スピードを「見える化」することが成功の鍵となります。

品質保証は「後追い」から「先読み型」へ

航空機や無人機のような高信頼性製品では、「できてから検査する」従来型の品質保証では間に合いません。

共同開発体制では、設計段階からFMEA(潜在的故障モード解析)やDR(デザインレビュー)を共同で実施し、批判的観点でリスクを洗い出す先読み型QAが不可欠です。

特にサプライヤー側は、自社の過去の品質トラブルや不良率・対策履歴も開示し、双方でベストプラクティスを共有する風土を作ることが重要です。

発注者としても、QA担当者を開発MTGや現場監査に積極的に派遣し、「現場での目線」も設計へ織り込むと良いでしょう。

実践的ノウハウ:現場で使える共同開発のテクニック

「擦り合わせ」の極意は“現場巡回”と“フェイスtoフェイス”

どれだけデジタルツールが発展しても、細やかな設計ニュアンスや現場の癖は、画面越しだけでは伝わり切りません。

信頼関係を構築したいなら、意識的に相互の工場に出向き、現場で“なぜこの工程なのか”“なぜこの配線ルートなのか”について直接議論することが不可欠です。

日々の作業をよく知る現場リーダーや職長と、エンジニア・バイヤーが膝を突き合わせることで、図面には表れきれない「現場の知恵」を活用できます。

この“巡回型プロジェクト管理”は、昭和型の現場文化と最新の共同開発手法を融合させる、中間地帯の最強ノウハウです。

バイヤー視点とコストマネジメント

共同開発では、単純な単価交渉より「トータル原価」の可視化・抑制を重視すべきです。

例えば部品標準化・設計共通化・サプライチェーンのシンプル化など、小さな原価低減の積み重ねがプロジェクト全体の競争力に直結します。

バイヤーは原価分析のスキルを磨き、どこにコストドライバーが潜んでいるのかを全工程マップから抽出し、サプライヤーと“コストダウンファシリテーター”として協働する姿勢が現場で評価されます。

サプライヤーの強み発掘と「提案型」営業の重要性

サプライヤーにとっては、“バイヤーの指示待ち”型では生き残れません。

自社にしかできない独自の製造技術や工程ノウハウ、以前の開発実績から得られた学びを積極的に提案し、「ここをこう変えれば工程を短縮できます」「この材料なら強度が上がります」など、バイヤーの想定を一歩先取りした提案がプロジェクトの差別化を生みます。

この“攻めの姿勢”こそが、バイヤーから「パートナー」として頼られるサプライヤーの特徴です。

業界動向:アナログ現場からデジタル連携への過渡期

航空機や無人機の製造現場でも、DX(デジタルトランスフォーメーション)は待ったなしです。

しかし現実には、熟練工の経験や勘、属人的な調達先ネットワーク、昔ながらの「顔が見える」商慣習も、現場レベルで今なお強く残っています。

成功する現場は、最新のデジタルツールを使いながらも、古き良き現場目線(現物・現実・現場の“三現主義”)を維持し、両者をバランスよく組み合わせているのが特徴です。

筆者が見てきた現場でも、「デジタルで全て管理する」と「現場で納得して進める」を行き来する“ラテラル(水平)思考”型リーダーが共同開発を牽引しています。

最後に:共同開発で製造業の未来を切り拓く

航空機・無人機の動作制御装置開発は、一部の天才エンジニアや巨大企業だけに依存する時代から、多様なバックグラウンドを持つ現場担当者が横断的に知恵を出し合う時代へと進化しています。

昭和的な現場力と最新のデジタル戦略を掛け合わせ、従来の価値観を大切にしつつも「交流」(ラテラルな連携)によるイノベーションを生み出すことこそ、今後の製造業に求められています。

本記事を参考に、バイヤーとしてもサプライヤーとしても、共同開発の現場で一歩前に踏み出し、未来志向のものづくりを実現していきましょう。

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