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投稿日:2025年7月4日

海外調達を成功に導くサプライヤマネジメントとリスク回避

はじめに:グローバル時代の海外調達とサプライヤマネジメントの重要性

製造業の競争が激化する中、利益率改善や品質向上、納期短縮などを目的として、海外調達はますます一般化しています。
「コスト削減=海外調達」という単純なロジックだけでは、今や生き抜いていけません。
グローバルサプライチェーンの中で海外サプライヤとの適切なパートナーシップを築くこと、リスクを先回りして最小化するマネジメント力が問われる時代です。

昭和の時代は、長年付き合いのある国内メーカーとの太い絆、現場の顔の見える関係が、暗黙知となったノウハウや品質管理、場合によっては「なあなあ」の取引も支えてきました。
しかし、今はグローバル調達が必須となり、異文化・異言語・異習慣の壁、政治や社会動向リスクの増大といった、新たな課題が現場を襲っています。
本記事では、現場感覚と管理職の視点を融合し、海外調達を成功させるサプライヤーマネジメントのポイントと、見落としがちなリスクの回避策を、事例を交えて解説します。

なぜ今、海外調達が求められるのか

コストだけではない調達現場の現実

確かに海外調達は、単価や労務費のメリットが大きいです。
しかし、意外と見落としがちなのが、以下のような多面的な狙いです。

– 取引先分散によるサプライチェーンリスクの分散
– 国内市場の縮小に伴う新規市場・新技術の取り込み
– 為替リスクや地政学リスクのヘッジ
– 技術連携や共創によるイノベーション促進

ひと昔前と違って、単価の安さだけでバイヤーが決める時代ではありません。
“グローバルサプライヤ=安かろう悪かろう”というイメージでは、世界の競争力には太刀打ちできないのです。

サプライヤ選定の“見える化”と判断軸のシフト

かつては現場目線の“馴染み”が重要でしたが、今や公正な調達指針が世界的な潮流です。
そのため、

– 品質・コスト・納期のバランス
– 倫理性(人権・環境・法令順守)
– サスティナビリティ(持続可能性)
– サイバーセキュリティ管理

など、多様な評価軸が必要です。
つまり、購買部門だけでなく、品質保証、物流、生産技術、さらには経営やIT部門まで巻き込んだ横断マネジメントが不可欠です。

海外サプライヤマネジメント5つの実践ポイント

1. 現地調達先の見極め〜現場目線のヒアリング力〜

カタログデータや表層的なコスト比較だけで決めてしまうと、一見メリットのある調達先でも、しばしば「現場とのすれ違い」が発生します。
私が工場長時代によく「○○社のサンプルは安いが、小ロット・多品種生産体制がなく、現場が困っている」と直訴されたものです。

必要なのは“現場の目利き”です。
たとえば、以下のような細かい点を実際に現地でヒアリングしましょう。

– 製造現場の5Sや人員配置
– 「不良品ゼロ」の目標値・現場の継続改善活動
– 工程監査時の応対姿勢や情報開示レベル
– トレーサビリティや緊急時対応の体制

このようなポイントの“肌触り”を、現場現物で感じることができるバイヤーこそ、海外サプライヤマネジメントの肝となります。
日本的な“現地現物”の精神は、データ化・IT化時代でも必須です。

2. コミュニケーションと信頼関係の構築

異文化の壁は想像以上に高いものです。
地域によってはYesが本当の“Yes”でない場合も多く、合意形成一つとっても注意が必要です。
ポイントは、「細部にこだわる」日本流の品質感覚を、一方的に押し付けることなく、分かりやすく言語化し、“なぜ重要なのか”を現地の担当者と粘り強く共有することです。

たとえば定期的なオンライン会議や現地訪問、現場スタッフ同士の人間関係構築、QCD(品質・コスト・納期)改善活動の合同ワークショップなど、意図的にコミュニケーションのレイヤーを増やすことが有効です。
“発注元VS受注先”の関係を超え、Win-Winのパートナーシップを築くことが、品質トラブルや納期遅延時の坦々としたリカバリーにつながります。

3. 品質監査とコンプライアンス:アナログ業界の“見逃し”に注意

老舗の工場や、まだまだペーパーレス化が進まない海外サプライヤでは帳票管理やトレーサビリティ体制が不十分なことが多いです。
現場審査ではデータだけでなく「あいまいな現場対応力」を厳しく見極める必要があります。
よくあるのが、「指摘したら今日だけキレイに片付けてある」ケース。
定期的な監査と抜き打ちチェック、デジタル化のサポート支援など、日本企業側も現地サプライヤと“ともに育つ”スタンスが重要です。

また、資材の調達過程で「法規制」「環境負荷」「人権侵害」といった現地特有のリスクも無視できません。
グローバルでの責任ある調達(サステナブル・プロキュアメント)のためには、普段から各工程の透明化、本社との連携を強化しておくことが必要です。

4. 多層的リスクマネジメントの導入

調達現場で起こるリスクは多岐に渡ります。
近年では、地政学リスク(戦争・紛争)、パンデミック、原材料市況変動、サイバー攻撃やBCP(事業継続計画)の問題が表面化しています。
表面的なリスク審査だけでは、対応が間に合わないこともしばしば。

たとえば…

– データのバックアップやサプライヤネットワークの多重構成
– 船便・航空便の輸送ダイバーシティ化
– 主要部品の社内在庫や二次調達先の確保
– 災害発生時の現場対応シナリオ訓練(机上だけでなく実地訓練)

といった、多層防御の仕組みが不可欠です。
2020年以降、コロナ禍でサプライチェーン分断を経験した現場では、「海外依存の一極化」はもはや最大のリスクと認知されています。

5. DX推進と情報共有〜アナログ脱却の現場イノベーション〜

日本の製造業は“紙文化”“ハンコ文化”が根強く残る現場も多いです。
海外調達先との連携でも、デジタル化による“リアルタイム情報共有”が進んでいる企業と、昔ながらのFAXや紙帳票で苦しむ企業の差は明白です。

実際、私が関与したプロジェクトでは、調達から生産・品質データまで一元管理できる“サプライチェーン管理システム(ERPやSCM)”を導入し、納期・在庫・不良発生時の早期アラート構築が飛躍的に進みました。
「最先端IT=大企業だけのもの」と誤解せず、アナログ現場だからこそ小さく始められるIT活用こそ、今後の必須戦略です。

サプライヤも「バイヤーが何を重視しているか」を知ろう

この記事を読むサプライヤ側の方にとっても、上記観点は極めて重要なヒントになります。
バイヤーが海外調達先を選ぶとき、技術力やコストのみでなく、「誠実な現場改善力」「トラブル時のウソ偽りない開示姿勢」「日本流のきめ細かさへどこまで適応意欲があるか」などを無意識下で強く重視しています。

実際、私たちが現地出張で懸念を抱いたのは、ちょっとした見逃しや「まぁいいか」メンタリティの温度差です。
サプライヤの現場から推薦できる人材や日本語スキルを持った担当者の配置、定期交流の積極姿勢は、商談競争力を大きく高めるポイントです。

まとめ:未来志向の海外調達は“現場×IT×ガバナンス”の三位一体

海外調達の現場力は「理屈」だけでは動きません。
現地との目線合わせに始まり、地道な実地監査・リスク感応度・デジタル化推進…このすべてが、調達バイヤーとサプライヤの信頼構築を強く支えます。

製造業の発展は、現場の“腕”や“地道な信頼”から始まり、グローバル競争の“スピード感”や“可視化”といった進化が続いています。
今一度、“昭和的アナログ”の良さを活かしつつも、業界全体が新たなサプライマネジメントを推進し、お互いに知恵を持ち寄ること。
それこそが、日本のものづくりを、世界に負けない新たな地平線へ導いていく力となります。

本記事が、調達バイヤー・サプライヤ双方にとって、よりよい現場改善と持続的成長の一助となれば幸いです。

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