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投稿日:2025年7月5日

自動車部品耐久性向上を実現する表面処理技術と事例

はじめに:自動車部品と耐久性向上の重要性

自動車産業は、日本を代表する基幹産業の一つです。
近年ではEV化や自動運転技術の発展など、目まぐるしい進化と競争が続いていますが、根幹をなす「部品そのものの耐久性向上」は、いまなお絶対条件です。

とりわけ、自動車部品の長寿命化、品質安定化、省メンテナンス化は、ユーザー満足度向上だけでなく、リコールリスクやトータルコスト削減、さらにはカーボンニュートラル達成にも直結します。
しかし、依然として多くの現場では昭和から続く「作って終わり」の発想やアナログ的な調達業務が根強く残されているのも現状です。

そこで今注目されるのが、表面処理技術。
素材の選択や設計そのものだけでは解決できない「使い続ける現場目線」の要求を、どれだけ満たせるかが勝負になる時代です。

本記事では、自動車部品に求められる耐久性の最新トレンドと、表面処理技術の実践的な活用事例を現場目線で解説します。
バイヤーの視点、サプライヤーの視点、そして今後必要となる戦略的な考え方にも深く切り込んでいきます。

自動車部品の耐久性を左右する主な劣化要因とは

自動車部品は過酷な使用条件下にさらされています。
それは設計図の上だけでなく、実際の道路、温湿度の変化、さまざまな腐食や摩耗要因に耐える現場で、製品価値が初めて証明されます。

1. 摩耗と摺動損傷

エンジンやトランスミッションの内部、サスペンション部品、ブレーキ部品などでは金属同士、あるいは金属と他素材との直接接触による摩耗が避けられません。
摩耗粉による二次損傷も無視できない課題です。

2. 腐食と酸化

車両下部に使われるシャシーやボディ部材は、雨水、塩分、泥などによる腐食に常にさらされます。
冬場の融雪剤や沿岸部の大気環境は、部品劣化を一気に進行させる要因です。

3. 熱、紫外線、薬品曝露

エンジン周辺の高熱、紫外線劣化が懸念される外装、さらにはバッテリー周辺の電解液やオイルによる化学的悪影響も、無視できません。

4. 繰り返し応力と疲労

毎日数千回の振動や負荷に繰り返しさらされるサスペンションや足回り、エンジン部品は、長期的な「金属疲労」が寿命を決定づけることも多くあります。

昭和的手法からの脱却:表面処理技術の進化

昭和から続く製造業の中では、「安い材料を多量に仕入れ、熟練工の勘と経験で仕上げる」というやり方が根強く残っています。
しかし、グローバル競争、少子化による労働力減少、サプライチェーンの多様化など、現場は昭和流の精神主義では太刀打ちできなくなっています。

そこで、設計や材料の限界を超えた性能を引き出す技術こそが「表面処理」です。
部品“そのもの”は変えずとも、「部品の表面」だけに高機能層を持たせることで、従来不可能だった耐久性・コストパフォーマンスを劇的に高められるようになりました。

従来からの表面処理技術

– 電気めっき、溶融亜鉛めっきなど腐食保護
– 硬化処理(窒化処理、浸炭など)による摩耗対策
– 塗装・コーティングによる美観と環境耐性強化

進化した表面処理技術

– PVD(物理蒸着)、CVD(化学蒸着)による高機能薄膜コーティング
– DLC(ダイヤモンドライクカーボン)による超低摩耗・低摩擦性
– 機能性皮膜(+ナノテク)の積層による高難度要求への対応
– グラフェン、セラミック複合など新素材活用

こうした数々の先端技術は、“コストが高い割に実績不足”と思われがちですが、近年は量産化も進み、特定分野では標準採用にまで至っています。
大手メーカーのみならず、中堅・中小の部品サプライヤーにとっても差別化の大きな武器となります。

調達・バイヤー目線で押さえたいポイント

バイヤーや購買担当にとって、部品の表面処理は「ただの外注工程」ではありません。
現場目線で抜本的に見なおすべき視点をまとめます。

QCDの再定義:『長寿命』重視への転換

価格(Price)、納期(Delivery)、品質(Quality)は当然重要ですが、トータルコスト(TCO=耐久性・保証コスト・交換頻度も含む評価)で調達方針を再構築することが重要です。
目先の価格競争力だけでなく、使用中の耐久性バラツキやリコールリスク、メンテナンス現場の意見を必ずヒアリングし、「結果としての安定性と低コスト実現」にコミットしましょう。

量産立ち上げ時の『表面処理パートナー』選別

– ライン安定性および大ロット再現性の有無
– PPAPやIMDSなどグローバル自動車業界基準への対応力
– イノベーション(次世代処理)への投資状況

特に、トラブル発生時の供給責任・技術対応力を見極めることが、信頼できるパートナー選定につながります。

現場で成果を生んだ、代表的表面処理の実践事例

「どこまで表面処理で伸びしろがあるのか?」「実際どんなメリットがあったのか?」について、現場で成果をあげた事例をいくつか紹介します。

事例1:DLCコーティングによるエンジン部品の摩耗寿命3倍

ある大手エンジンメーカーでは、小型エンジンのピストンピン、カムシャフトに従来の浸炭焼入れ+DLCコーティングを追加。
油分なしの摺動環境での摩耗粉発生量が85%低減、従来比3倍の長寿命化を実現。
摩耗による異音クレームも激減し、保証コスト削減にも直結しました。

事例2:高耐食Zn-Ni合金めっきでボディ部品のサビ保証10年達成

シャシーやサスペンション部品など広範な部品で、単なる溶融亜鉛めっきからZn-Ni合金めっき+高機能シーラーにアップグレード。
沿岸部や北国など、過酷環境での「赤サビ/白サビ」耐性が大幅向上し、10年サビ保証対応モデルの標準採用へ。
現場工数や補修コストも大幅削減。

事例3:PVDコーティング刃具による金型・加工工程のコストダウン

自動車プレス部品製造現場では、金型の寿命がライン効率を大きく左右します。
従来のコバルト系焼結金属にPVDコーティングを施し、摩耗寿命が2倍、調整工数30%削減、調達コスト全体で20%低減へ繋がりました。
サプライヤー側の価値提案がバイヤー採用の決め手となりました。

表面処理導入現場でよくある失敗例

– 部品図面に表面処理を指示した後、現場・ユーザー使用条件とのミスマッチ
– 素材メーカー、表面処理メーカー、部品メーカー間の認識ズレ、連携ミス
– 評価基準の曖昧さ(社内モノサシのみ適用でグローバル基準未達)
– 立ち上げ時短納期で無理な工程スケジュール(焼入れ後処理、シーケンス無視)

現場起点の「一次情報収集」と部門間連携が重要です。

サプライヤー視点で知っておきたいバイヤー心理

– 「こういう技術なら決め手になる」「ここがネックでコスト削減を進めたい」など、バイヤーは目に見えない運用コストや保証リスクも大きく気にしています。
– 単なる技術紹介ではなく、「導入によるトータルコスト/市場競争力強化」を数値で示す。
– 信頼関係構築(現場で不具合が出た際の迅速・誠実な対応)が、次のビジネスにつながる。
– 昭和流「言われたことだけをやる」から、「提案型・協業型」スタンスへの転換が、中長期のポジション確立のカギです。

まとめ:これからの表面処理戦略と現場の役割

自動車部品の耐久性向上は、これまで以上に全社横断で「現場・調達・設計・技術・品質」の連携が求められています。
とくに、表面処理技術の適用は単なる品質確保にとどまらず、グローバル競争力、ブランディング、カーボンニュートラルなど、広がる期待に直結する領域です。

伝統的なやり方に固執せず、「多様な情報・最新動向を学び、立ち止まらず前進する」現場力こそが、新たな製造業の地平線を切り拓いていきます。

今後、生産・購買・開発の各分野で業界標準から半歩先へ踏み出すには、表面処理技術の最前線に目を向け、サプライヤー・バイヤー間の戦略的対話が不可欠です。

ぜひ、貴社の現場でも積極的な技術活用・部門連携による持続的成長を目指して下さい。

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