設備投資減税の使い分け——中小企業投資促進税制・経営強化税制と、2026年7月からの即時償却 | newji
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投稿日:2026年10月8日

設備投資減税の使い分け——中小企業投資促進税制・経営強化税制と、2026年7月からの即時償却

この記事のポイント(結論先出し)

中小企業の設備投資減税は、事前の手続きが要らない中小企業投資促進税制と、経営力向上計画の認定を受けたうえで即時償却か税額控除を選べる中小企業経営強化税制の 2 本が中心で、どちらも令和 9 年 3 月 31 日までに取得して事業に使った設備が対象になる[1][2]。2026 年 7 月 31 日からは、投資額の大きい計画を対象に、産業競争力強化法の確認を受けた設備を即時償却できる新しい制度も始まった[3]。どの制度も、対象になるかは設備の種類と 1 台あたりの取得価額で決まり、認定や確認の手続きと発注の順番を誤ると使えなくなる。発注の前に、経理・税理士と使う制度を決めておく。

この記事は、国税庁のタックスアンサー(No.5433・No.5434 は令和 8 年 4 月 1 日現在法令等、No.5924 は令和 8 年 7 月 31 日現在法令等)と、2026 年 10 月 8 日時点で e-Gov 法令検索に載っている現行の法令をもとに書いている。税制は毎年の改正で期限や要件が変わる。申告に使う前に、その年度の国税庁の案内と、中小企業庁・経済産業省の手引きで確かめてほしい。

設備投資の税制優遇は「いつ損金にできるか」を前に倒す仕組み

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機械を買った代金は、普通は耐用年数にわたって減価償却費として少しずつ費用になる。設備投資の税制優遇は、この費用化を前倒しする特別償却(取得価額の一定割合を上乗せして償却する。全額を初年度に償却できるものを即時償却という)か、法人税額そのものを減らす税額控除(取得価額の一定割合を法人税額から差し引く)のどちらかを選ぶ形が多い。

特別償却は、償却を早めるだけで、償却できる総額は変わらない。初年度の税負担が軽くなる代わりに、翌年度以降の償却費はその分少なくなる。税額控除は税額そのものが減るが、控除できる額には法人税額の一定割合という上限がある。どちらが得かは、その年度の利益の見込みと資金繰りで変わるので、設備を選ぶ購買の担当者が単独で決めるものではない。ただ、対象になる設備かどうかは、何を・いくらで・いつ買うかで決まるので、発注の前に購買の側が押さえておくべき条件は多い。

3 つの制度を並べる

製造業の中小企業が設備を買うときに検討することの多い 3 つの制度を、国税庁のタックスアンサーの記載で並べる[1][2][3]。中小企業者は基本的に資本金 1 億円以下の法人をいい、詳しい範囲は国税庁のコード 5432 で示されている[1][2]。

項目 中小企業投資促進税制 中小企業経営強化税制 特定生産性向上設備等の特別償却・税額控除
事前に要るもの なし(青色申告が前提) 中小企業等経営強化法の経営力向上計画の認定(計画に設備を記載) 産業競争力強化法の経済産業大臣の確認(指定期間は 2026 年 7 月 31 日から令和 11 年 3 月 31 日まで)
取得・供用の期限 令和 9 年 3 月 31 日まで 令和 9 年 3 月 31 日まで 確認を受けた日から 5 年を経過する日まで
特別償却 基準取得価額の 30% 即時償却(取得価額から普通償却限度額を控除した額) 即時償却
税額控除 7%(資本金 3,000 万円以下の法人等に限る) 7%(資本金 3,000 万円以下の法人等は 10%) 機械装置・工具器具備品・ソフトウエアは 7%、建物・附属設備・構築物は 4%
機械及び装置の規模 1 台または 1 基 160 万円以上 1 台または 1 基 160 万円以上 1 台または 1 基 160 万円以上
工具・器具備品の規模 測定工具・検査工具で 120 万円以上(40 万円以上のものの合計が 120 万円以上の場合を含む) 1 台または 1 基 40 万円以上(令和 8 年 3 月 31 日以前の取得は 30 万円以上) 1 台または 1 基 120 万円以上(同じ投資計画で 40 万円以上のものの合計が 120 万円以上の場合を含む)
ソフトウエアの規模 70 万円以上(合計 70 万円以上を含む) 70 万円以上 70 万円以上

税額控除の上限は、中小企業投資促進税制と中小企業経営強化税制の税額控除を合計して、その事業年度の調整前法人税額の 20% 相当額までとされ、控除しきれない額は 1 年間繰り越せる[1][2]。特定生産性向上設備等の制度も、控除の上限は調整前法人税額の 20% である[3]。

中小企業投資促進税制:手続きなしで使える代わりに対象が限られる

中小企業投資促進税制は、青色申告書を提出する中小企業者などが、平成 10 年 6 月 1 日から令和 9 年 3 月 31 日までの間に新品の機械装置などを取得または製作して、国内にある製造業・建設業などの指定事業の用に供した場合に、特別償却または税額控除を選べる制度である[2]。経営力向上計画のような事前の認定は要らない。

そのぶん、対象になる資産が限られる。機械及び装置(1 台または 1 基 160 万円以上)、製品の品質管理の向上等に資する測定工具・検査工具(120 万円以上)、特定のソフトウエア(70 万円以上)、貨物運送用の一定の普通自動車(車両総重量 3.5 トン以上)、内航海運業用の船舶が対象で、一般の器具備品は入っていない[2]。税額控除を選べるのは資本金または出資金が 3,000 万円以下の法人等で、それを超える中小企業者は特別償却だけになる[2]。

なお、経営力向上計画の認定(特定認定)を受けた法人のうち、その計画に投資促進税制の対象となる機械装置等を記載している法人は、投資促進税制の対象(特別償却・税額控除とも)から除かれている[2]。計画に書いた設備は経営強化税制で扱う、と整理しておくと迷わない。

中小企業経営強化税制:計画の認定と設備の要件の二段構え

認定を受けた計画に、設備を書いておく

経営強化税制を使うには、中小企業等経営強化法第 17 条第 1 項の経営力向上計画の認定(タックスアンサーでいう「特定認定」)を受け、その計画に記載された新品の設備を取得して指定事業の用に供する必要がある[1]。経営力向上計画には、経営力向上の目標、経営の向上の程度を示す指標、経営力向上の内容と実施時期、必要な資金の額と調達方法、そして経営力向上設備等の種類を書くことが法律で定められている[4]。設備を計画に書かずに買っても、この税制は使えない。

計画の申請・認定と設備の取得の順番には、中小企業庁の手引きに具体的な取扱いが示されている。取得後に計画を申請するような順番が認められる場合があるかどうか、認められるならその条件は何かを、発注の前に手引きで確かめておく。購買の側から見れば、「計画の認定前に発注してよいか」を経理に確認してから注文書を出す、という一手間を手順に組み込んでおけば足りる。

設備のほうにも要件がある

計画に書けば何でもよいわけではない。経営強化法の「経営力向上設備等」は、経営力向上に特に資するものとして経済産業省令で定めるものに限られる[4]。施行規則第 16 条は、そのうちの代表的な型を次のように定めている[5]。

  • 生産性が上がる新しい型式の設備:型式の販売開始が、設備を導入した日から見て、機械及び装置は 10 年前、器具及び備品は 6 年前、測定工具・検査工具とソフトウエア(設備の稼働状況等の情報収集・分析・指示機能を持つもの)は 5 年前、建物附属設備は 14 年前の日の属する年度の開始の日以後であること。そのうえで、一つ前の型式と比べて、単位時間当たり生産量・歩留まり率・投入コストのいずれかの指標が年平均 1% 以上向上していること。ただし、ソフトウエアと、比べる一つ前の型式が販売されていない設備には、この 1% の要件は課されず、販売開始の時期の要件だけになる
  • 投資計画で収益が上がる設備:事業者が作った投資計画で、年平均の投資利益率が 5% 以上になる見込みであることについて経済産業大臣の確認を受け、その投資の目的を達成するために必要不可欠な設備

前者の「一つ前の型式と比べて年平均 1% 以上」は、設備の型式の比較なので、買う側の社内のデータだけでは示せない。国税庁のタックスアンサーは、経営力向上設備等に係る生産性向上要件証明書(工業会等による証明書)について、中小企業庁のホームページを参照するよう案内している[1]。型式ごとの情報を持っているのは設備の製造業者なので、見積を取る段階で、メーカーや販売店にこの証明書に対応できるかと、どれくらいの日数がかかるかを聞いておくのが、購買担当にできるいちばん確実な準備である。

即時償却の上限と、規模の要件

経営強化税制の特別償却限度額は、取得価額から普通償却限度額を控除した金額、つまり事業に使い始めた年度に全額を償却できる額である[1]。税額控除を選ぶ場合は取得価額の 7% で、資本金 3,000 万円以下の法人等(特定中小企業者等)は 10% になる[1]。

対象になるのは生産等設備を構成する減価償却資産で、本店・寄宿舎等の建物、事務用器具備品、乗用自動車、福利厚生施設のようなものは該当しない[1]。規模の要件は、機械及び装置が 1 台または 1 基 160 万円以上、工具・器具及び備品が 40 万円以上(令和 8 年 3 月 31 日以前に取得・製作したものは 30 万円以上)、建物附属設備が 60 万円以上、特定のソフトウエアが 70 万円以上である[1]。建物を新設・増設する場合の「経営規模の拡大」に資する設備には、建物とその附属設備も含めた別の区分があり、建物は基準取得価額の 15%(一定の特定建物等は 25%)の特別償却、または 1%(同 2%)の税額控除になる[1]。

2026 年 7 月 31 日に始まった、大きな投資向けの即時償却

2026 年 7 月 31 日の改正産業競争力強化法の施行日から、特定生産性向上設備等を取得した場合の特別償却または税額控除の制度が始まった[3]。中小企業に限らず、青色申告書を提出する法人が対象で、産業競争力強化法の「特定生産性向上設備等」に該当し経済産業大臣の確認を受けた設備を、確認を受けた日から 5 年を経過する日までに取得して事業に使った場合に、即時償却か税額控除(機械装置等 7%、建物等 4%)を選べる[3]。

確認の基準は省令で定められていて、中小企業にとっての敷居はかなり高い[6]。

  • 投資計画の年平均の投資利益率が 15% 以上見込まれること(建物のみの取得等は除く)
  • 投資計画に基づいて取得する設備の取得価額の合計が 35 億円以上(中小企業者等が策定した計画は 5 億円以上)であること
  • 確認を受けてから 5 年以内に取得し、事業の用に供されること
  • 投資計画の策定が取締役会その他これに準ずる機関で決議・決定されていること
  • その決議・決定が、経済産業大臣が定める日以後にされていること(それより前に決議した投資計画を変更した場合は、変更の決議・決定が同日以後であることなど)
  • 試験研究用・貸付用などの設備でないこと

数千万円規模の設備更新では、まず投資促進税制か経営強化税制を検討し、工場の新設や生産ラインの大規模な入れ替えのように投資額が億単位になる計画で、この制度が候補に入ってくる。

この制度と、ほかの 2 制度との重なりにも注意がいる。この確認を受けた法人は、その確認に係る特定生産性向上設備等投資計画の実施期間内の日を含む各事業年度について、中小企業経営強化税制の適用を受けられない[1]。大型投資の確認と、別の設備での経営強化税制を同じ時期に考えている場合は、どちらで受けるかを発注の前に経理・税理士と決めておく。また、中小企業者以外の法人は、継続雇用者の給与等と国内設備投資に係る一定の要件(国税庁のコード 5449「特別税額控除規定等の不適用措置」で示されている)を満たさない事業年度には、この制度の税額控除を使えない[3]。

購買担当が発注前に確かめること

「1 台あたりの取得価額」は代金だけではない

規模の要件は「1 台または 1 基の取得価額」で判定する。購入した減価償却資産の取得価額は、購入の代価に、引取運賃・荷役費・運送保険料・購入手数料・関税その他購入のために要した費用を加え、さらに事業の用に供するために直接要した費用を足した額とされている[7]。据付の費用が設備本体と別の見積で来ている場合、それを含めるかどうかで 160 万円の線をまたぐことがある。見積は本体・付属品・運搬・据付を分けて取り、どこまでが 1 台の取得価額になるかを経理と確かめておく。

逆に、本来は一体で使う設備を見積や発注の上だけで分けたりまとめたりして、1 台あたりの金額を調整しようとするのは避ける。何を「1 台・1 基」とみるかに迷う設備は、発注の前に税理士に確かめておく。

新品であること、指定事業に使うこと

3 つの制度とも、対象は製作・建設の後に事業の用に供されたことのない設備、つまり新品である[1][2][3]。中古の機械を安く手当てする計画では、税制優遇は使えない前提で比べる。また、事業に使い始めた日を含む事業年度に適用するので、年度末に納入された設備が据付・試運転の遅れで期末までに稼働しないと、適用の年度がずれる。納期の約束を取るときに、稼働開始の見込み日まで確かめておく。

リースで導入する場合

所有権移転外リース取引で取得した設備については、特別償却は適用できないが、税額控除は適用できるとされている[1][2]。購入とリースで比べるときは、この違いも試算に入れる。

補助金と重ねるとき

経営強化税制について、国税庁は、一の資産について特別償却と税額控除の重複適用は認められず、租税特別措置法上の圧縮記帳、他の制度による特別償却または税額控除との重複適用も認められないと注意している[1]。補助金で取得した設備の扱い(補助金の圧縮記帳と、税制優遇の基準になる取得価額の関係)は、組み合わせ方で結果が変わる。補助金の制度の選び方と申請の段取りは設備投資の補助金の記事で扱った。両方を考えている設備は、発注前に税理士に経理処理を決めてもらう。

少額の資産は別の制度で

数十万円程度の工具や測定器、パソコンなどは、ここで扱った制度の規模の要件に届かないことが多い。こうした資産は、少額減価償却資産の特例などの別の制度で扱われる。金額の区切りと、改正で引き上げられた上限については、コストダウン提案書の書き方のなかで、提案に設備を含むときの税務の扱いとして整理している。

よくある質問

投資促進税制と経営強化税制は、どちらを選べばよいですか

機械装置を買い、即時償却や 10% の税額控除を使いたいなら経営強化税制が有利になりうるが、計画の認定と設備の証明の手間がかかる。手続きの時間が取れない、または対象設備が計画に間に合わない場合は、手続き不要の投資促進税制(特別償却 30%、条件により税額控除 7%)が候補になる[1][2]。どちらにするかは、設備の発注前に決めておく。

工業会の証明書は誰が取りますか

申請の手順や、誰が工業会等に申請するかは、中小企業庁の手引きで確かめる[1]。証明の対象は設備の型式なので、型式の情報を持つメーカーや販売店の協力が要る。購買担当は、見積依頼のときに「経営強化税制の証明書に対応できるか」を確認事項に入れ、対応できる場合は発行までの日数を納期と同じように聞いておくとよい。

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赤字の年度でも意味はありますか

即時償却で費用を前倒ししても、もともと課税所得がない年度では、その年度の税負担は変わらない。税額控除も法人税額の 20% が上限なので、法人税額が小さければ控除できる額も小さい(控除しきれない額は 1 年間繰り越せる)[1][2]。利益の見込みが立たない年度の投資では、税制優遇を前提にした投資判断をしないほうが安全である。

期限の令和 9 年 3 月 31 日までに発注すればよいのですか

期限は「取得または製作をして、指定事業の用に供した」ことにかかっている[1][2]。発注しただけでは足りない。期限が近い時期に長納期の設備を発注するときは、納入と稼働開始がいつになるかを確かめておく。期限は改正で延長されることもあれば、要件が変わることもあるので、その年度の案内で確かめる。

まとめ

設備投資の税制優遇は、2026 年 10 月 8 日時点で、手続き不要の中小企業投資促進税制(特別償却 30% または税額控除 7%)、経営力向上計画の認定を前提にした中小企業経営強化税制(即時償却または税額控除 7%・10%)、大型投資向けに 2026 年 7 月 31 日から始まった特定生産性向上設備等の制度(即時償却または税額控除 7%・4%)がある。どれも新品の設備を事業に使った年度に適用し、1 台あたりの取得価額で対象が決まる。購買担当にできるのは、見積を本体・運搬・据付に分けて取ること、証明書の発行の可否と納期を聞くこと、計画の認定と発注の順番を経理に確かめてから注文書を出すことである。

設備を入れても、在庫や生産計画の持ち方が変わらなければ現場は楽にならない。在庫の見える化の進め方は在庫を見える化する記事で、社内で設備投資の稟議を通すときの書き方は購買システムの稟議書の記事で扱っている。

出典・参考資料

  1. No.5434 中小企業経営強化税制(中小企業者等が特定経営力向上設備等を取得した場合の特別償却又は税額控除)(国税庁/令和 8 年 4 月 1 日現在法令等)
  2. No.5433 中小企業投資促進税制(中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は税額控除)(国税庁)
  3. No.5924 特定生産性向上設備等を取得した場合の特別償却又は税額控除(国税庁/令和 8 年 7 月 31 日現在法令等)
  4. 中小企業等経営強化法(第 17 条 経営力向上計画の認定)(e-Gov 法令検索(デジタル庁))
  5. 中小企業等経営強化法施行規則(第 16 条 経営力向上設備等の要件等)(e-Gov 法令検索(デジタル庁))
  6. 経済産業省関係産業競争力強化法施行規則(第 6 条の 4 特定生産性向上設備等の確認の基準)(e-Gov 法令検索(デジタル庁))
  7. 法人税法施行令(昭和四十年政令第九十七号)(e-Gov 法令検索(デジタル庁))

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