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シャツのプレス工程でシワを防ぐ温度と湿度のコントロール

目次
はじめに:シャツのプレス工程こそ品質管理の要
シャツ製造の現場において、プレス工程は単なる仕上げ作業ではありません。
むしろ製品の価値を左右すると言っても過言ではない重要な工程です。
アイロンの熱と圧力で形状を整え、最終的なお客様の満足度につながる「美しいシルエット」と「しわのない滑らかさ」を実現するポイントとなります。
特に、現代の消費者が求める品質水準は年々高まっています。
昭和から続くアナログなプレス工程でも、その根底には極めて繊細な温度・湿度管理のノウハウが蓄積されています。
本記事では、その実践知を持つ元現場管理者の視点から、シワが発生するメカニズム・ベストな温度と湿度の管理方法・品質保証の新潮流まで、現場で明日から活かせる内容を掘り下げて解説します。
シワの発生メカニズム:意外と奥深い「熱・水・圧力」の三位一体
繊維内部の「水分移動」が鍵を握る
シャツのプレス工程では、繊維内部の水分が大きな役割を担っています。
繊維は一見乾燥して見えても、ミクロの世界では水分子が束ねた分子鎖や水素結合に強く影響しています。
熱を加えることで、水分が繊維内を移動し、分子の動きが活発になり、形が変わりやすくなります。
しかし熱だけでは不十分で、最適な湿度が揃ってこそ表面のしわが伸び、平滑性を確保できるのです。
プレス時の「圧力」も無視できない
アイロンや大型プレス機が生み出す圧力は、分子配列を強力に固定させます。
ただし、過度な圧力や温度の設定ミスは逆効果で、生地がテカったり、繊維が潰れてしまったりといった品質不良の原因にもなります。
「熱・圧力・湿度」が三位一体となってこそ、シワのない美しい衣服が完成する。
これが最前線で働く職人たちの共通認識なのです。
現場で起きる「シワ再発」5大原因
1. 温度不足による蒸気の力不足
2. 湿度管理の不備による繊維の乾燥
3. 過剰な水分で逆にパリッとしない
4. 冷却不十分による「戻りシワ」
5. 保管環境の悪さ(圧縮・湿気)
特に見落とされがちなのが、「プレス後の冷却工程」です。
熱と圧力で成形しても、充分に冷却されないままに次工程へ進めたり、すぐ梱包したりすると繊維が元に戻ろうとする「戻りシワ」が顕著に出現します。
高度な品質を求めるなら、冷却後に形が落ち着くまで静置する管理も欠かせません。
ベストなプレス温度と湿度設定とは
素材特性を見極めることが最重要
現場では以下の素材別に最適な温度・湿度が基本となります。
– 綿(コットン):温度150〜170℃ 湿度40〜60%
– ポリエステル混:温度120〜140℃ 湿度30〜50%
– ウール混:温度100〜130℃ 湿度50%前後
高温に強いコットンでも、繊維が乾きすぎると「パリッ」と仕上がりすぎ、柔らかさが失われます。
一方、化繊は高温に弱く、焦げや融解のリスクが増します。
よって、素材ごとに最適条件を見極める「五感」と「データ」の両方が求められます。
温度・湿度は“1工程内の変動”も重要
一部上場メーカーの最先端工場でも、プレス室の前半と後半で温湿度が微妙に変化する「ムラ」が品質差を生み出します。
現場では、プレス機への衣類投入前の「予熱」や「事前加湿」も活用し、一定のコンディションを保つことで高品質を維持しています。
最新現場での温湿度管理テクニック
目標は「ばらつき最小化」と「再現性の確保」
– IoTセンサーで温湿度を常時計測
– 書面記録だけでなく、グラフ化して「傾向把握」
– 空調と加湿器、排気の相互調整によるゾーン管理
– 定期的な機器校正による信頼性担保
特に、IoT化による見える化の推進は、現場オペレーターの“勘”に依存しがちな従来スタイルから脱却する一歩です。
リアルタイムなデータ管理により、不良品の予防・解析スピードも格段に向上しています。
AI活用による「自己最適化制御」
最近は、AI学習によって「過去の不良パターン」や「気温・湿度変動」に応じ、自動で温湿度・加圧条件を補正するシステムも登場しました。
省エネ化にも貢献し、人的依存を少なくしつつ品質のばらつきを抑えています。
未だ健在のアナログ業界に潜む“落とし穴”と克服法
日本の縫製業界は、熟練職人の経験値を重視するアナログ文化が色濃く残ります。
その一方、現場環境の「温湿度管理」は管理職が意識していない現場も珍しくありません。
空調があっても「毎日まじめに温湿度を記録しているか?」と問えば、まだ答えに窮する現場は多い。
現場の進化には、以下のような変化が必要です。
– 定期的な勉強会で「なぜ温湿度が肝心か?」を現場に落とし込む
– KPIに温湿度維持項目を設定し、成果と紐づける
– 現場リーダーや班長の温湿度管理責任を明確化
「どうしても急ぎの納期」「とりあえず見た目がキレイならOK」という意識が根強い現場に、科学的根拠による“新たな職人芸”を根付かせる地道なプロセスも、日本の製造業が国際競争力を維持するポイントです。
サプライヤー・バイヤー視点で考える「現場管理」
サプライヤーにとっては、「適切な温湿度管理=品質安定=信頼」に直結します。
バイヤーの目線で見れば、納入されたシャツにシワ・形崩れが起これば、最終消費者のクレーム・返品につながりビジネス上の信用も損ないます。
グローバル調達の時代だからこそ、現場のマネジメントレベルが一段と問われる部分です。
そのため、バイヤーはチェックリストや監査表に
– 各工程ごとの温湿度の記録有無
– 装置の定期点検・校正履歴
– シワ発生時のトレーサビリティ体制
などが整備されているかを必ず確認しています。
サプライヤー側は「うちは昔からトラブルないから大丈夫」と油断せず、業界水準での取り組みを怠らないことが、バイヤーの信頼を勝ち取る秘訣です。
まとめ:未来を見据えた“プレス工程の品質革新”を
工場のプレス工程は、単なる手作業から科学的な品質管理の時代へとシフトしています。
昭和的な感覚や場当たり的対応で良品を作れる時代は終わりつつあります。
IoTやAI、温湿度管理の自動化と記録・解析の活用が、製造現場に大きな進化をもたらしつつあります。
サプライヤー、バイヤー、そして現場の作業者すべてが「温度と湿度がなぜシワを防ぐのか」を本質的に理解し、「人任せにしない科学的管理」に目を向けることが、日本のものづくりがグローバル競争を生き抜く鍵になります。
明日からできる一歩として、現場の温湿度を「まず知る・可視化する」ところからはじめ、全工程での品質向上を目指していきましょう。
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