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ルームウェアの着心地を左右する縫い代処理と糸選びの基本

目次
はじめに:ルームウェアと製造業の意外な接点
ルームウェアは、ただ自宅で過ごすための衣服というだけではなく、現代では「心地よい自分時間」を支える重要なアイテムとなっています。
その一着が、どれほど快適に着られるのか。
その答えの多くは、工場でのモノづくり現場、つまり製造業の知見や技術にかかっていると言えます。
今回の記事では、現場目線で「ルームウェアの着心地」を決定づける要素、特に縫い代処理と糸選びについて掘り下げていきます。
また、アナログな体質が根強く残る縫製分野における最新の業界動向や、調達・生産管理視点からみる品質向上のヒントについても、幅広くご紹介します。
ルームウェアの魅力は“第二の肌”にあり
着心地は細部で決まる
ルームウェアにおいて、単にデザインや素材の善し悪しだけでは、本質的な心地よさは生まれません。
「着ていて気にならない」「脱ぎたくならない」「ストレスを感じない」――これらの感覚を生み出す陰の立役者が、実は縫い代処理と糸選びです。
たとえば、どれだけ高級なコットンを使っても、縫い代の処理が雑だと、肌との摩擦や縫い目のゴワつきが気になります。
そして、使用する糸の選択一つで、見た目や触り心地、さらには耐久性までもが大きく変わってきます。
縫い代処理の基本と現場のリアル
縫い代処理とは何か
縫い代処理とは、生地と生地を縫い合わせた際に余る部分(縫い代)を、どのように処理して仕上げるかという作業工程です。
見た目の美しさだけでなく、着心地にも直結する重要な要素です。
主な縫い代処理には、
- ロックミシンによるオーバーロック
- 袋縫い(二重縫い)
- パイピング処理
- バインダー縫製
- 折り伏せ縫い
などがあります。
現場の熟練工は、生地・デザイン用途に合わせて最適な処理を選択します。
昭和と令和、現場のギャップ
昭和の縫製業界では、「見た目重視」「現場の勘頼み」の傾向が強く、型にハマった作業になりがちでした。
一方、令和の現在では、ウェルネス志向の高まりや脱ストレスのニーズから「肌あたりの良さ」や「縫い目のストレスフリー化」へのこだわりが進んでいます。
機械化や自動化も進んできましたが、まだまだ最後は「人の手と目」による最終確認が欠かせません。
サプライヤー側としてはバイヤーの「着心地」「低アレルギー性」「耐洗濯性」といった複数要件のバランス要求に柔軟に応じる必要があるため、加工工程の柔軟性や技能者の育成がポイントになります。
縫い代が及ぼす着心地へのインパクト
ルームウェアにとって、縫い代の当たりが最も敏感になるのは、首周り・わき下・パンツの裾などです。
ここで、オーバーロックなどで単純処理を行い縫い代の切り口(かがり目)が硬くなると、着用中に「チクチクする」「ヤワな肌に擦れる」といった不快感に直結します。
こうした問題を避けるためには、袋縫いやパイピング、バインダーなど、縫い代が表に出ず、フラットになる加工を積極的に採用します。
また、工場側の生産性・コスト面から見ると、工程が増えれば手数や時間がかかります。
このバランス感覚を工程設計・生産管理が持てるか否かが、製品クオリティを分ける分水嶺です。
糸選びが左右するルームウェアの本質
糸の種類と特性
縫製に用いる“糸”にも多様な種類があります。
代表的なものをあげると、
- ポリエステル糸:強度が高く、伸縮性もある。耐摩耗・耐洗濯性に優れる。
- 綿糸:自然な風合いや吸湿性が特徴。肌への刺激が少なく、ナチュラル志向には最適。
- ナイロン糸:しなやかで摩擦に強いが、熱に弱い特徴がある。
用途やターゲット層・素材との相性によって、最適解は異なります。
伸縮性と刺激のバランス
ルームウェアは、寝返りや体勢変化が多いため、糸には「伸縮性」が求められます。
ポリエステル系の伸縮糸や、低摩擦系のソフトタッチ糸(スパン糸、フィラメント糸等)が使われることが増えていますが、製品によっては「化繊アレルギーに配慮を」「静電気を帯びにくく」といった多様な要望が出てきます。
また、糸の直径(太さ)や撚り(より)のかけ方も着心地にダイレクトに響きます。
極細の120番手糸から、一般的な60番手・30番手まで、目的に応じて細やかに設計されます。
縫い目の凹凸感を最小限に抑える工夫は、現代ルームウェアの必須条件です。
生産現場から見た糸選びの最適化
現場管理職の経験から申し上げると、糸選びは「量産との相性」「入手価格の安定性」「機械の適合性」「不良率の低減」など、多面的な検討が必要です。
また、日本国内縫製か海外縫製かで手配できる糸の種類が変わるため、調達部門と生産現場(工場長や縫製管理者)が密に連携することが不可欠です。
バイヤーの立場で見ると、「繊細な肌触り」「ファブリックケアへの配慮」「長持ちしてコストパフォーマンスが高い」など複数の尺度で評価します。
サプライヤー(縫製工場)は、そうしたバイヤー心理を的確に読み取った提案ができるかどうかが、今後の差別化につながります。
今後の業界動向と現場視点のラテラルシンキング
デジタル化とアナログ技能の融合
日本の縫製業界は、いまだ多くが個人技能に依存し、大規模な自動化・省力化の導入が進みにくい現実があります。
その一方で、IoTミシンやAI検査装置といったデジタル技術の積極活用も、確実に進展しています。
たとえば、カメラ検査による縫い目の品質担保、クラウドでの工程進捗管理。
“アナログな手仕事”と“最新のIT”が共存する時代が到来しています。
製造現場を知る立場から言えば、「バイヤーに受ける付加価値は何か」「機械では実現できない手仕事技術とは何か」を見極めるラテラル思考が欠かせません。
逆に「自動化で標準化できる領域」を大胆に切り離し、人を本当に必要とする局面への特化もひとつの戦略です。
環境・ESG配慮が新たなチェック項目に
近年、アパレル分野でもサステナブルやESG(環境・社会・ガバナンス)が求められています。
エコ糸(再生ポリエステル糸やオーガニックコットン糸)の活用、染色工程の省エネ化、リサイクル率の最大化などが、調達選定や顧客評価の新基準になりつつあります。
たとえば、糸の選定ひとつをとっても「エコ認証」「脱石油系素材」「生分解性」などへの対応が差別化になります。
サプライヤー各社には、こうした新たな要素を盛り込んだ「未来志向の提案力」が求められます。
まとめ:見えない“工場力”が着心地を生む
ルームウェアの最上級の着心地は、素材・デザインだけでなく、「縫い代処理の工夫」や「糸選びの最適化」といった縫製現場の技と知恵によって支えられています。
購買・調達や品質管理、生産現場で長年培った体験から言えば、「見えない縫い目」にこそ、メーカーや工場の“哲学”が宿ります。
バイヤーとしては、単に価格やスペックだけでなく「着た瞬間の感触」まで掘り下げたサプライヤー選定を。
サプライヤーの立場なら、現場発の工夫やラテラルな問題解決思考が新たな価値につながります。
昭和的な“勘と経験”を礎にしつつ、ITやDX、サスティナブルなど現代的価値観を融合することで、ルームウェア市場でも工場の“見えない力”が一層求められる時代です。
一着の快適なルームウェアが生まれるこだわりの裏側を、ぜひ今一度見つめ直してみてください。
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