- お役立ち記事
- 靴下の口ゴムが跡を残さないためのテンション設計と素材選定
靴下の口ゴムが跡を残さないためのテンション設計と素材選定

目次
はじめに――靴下の進化とユーザーの快適性
靴下は私たちの日常に欠かせないファッションアイテムであり、身近な存在です。
しかし、「口ゴムの跡が足首に残る」、「締め付けが不快だ」と感じた経験は誰しもがあるのではないでしょうか。
一方で、ゆるすぎて脱げてしまう靴下も困りものです。
この絶妙な“フィット感”こそが、靴下メーカー各社の技術競争の最前線となっています。
特に近年、健康志向・高齢化社会の進展・足のむくみ対策需要の高まりなどから“跡が残らない口ゴム”へのニーズが一段と高まっています。
本記事では、靴下の口ゴム部分に焦点をあて、跡を残さず、脱げにくい最適な設計を探るとともに、テンション(糸の張力)設計や素材選定の最前線について、実践的・現場目線で解説します。
靴下の口ゴムとその役割
靴下構造の基礎知識
靴下は“つま先・足底・足の甲・かかと・履き口(口ゴム)”で構成されています。
このうち、足首やふくらはぎを締める“口ゴム”は、履き心地や脱げにくさ、外観など、さまざまな機能が集約されています。
跡が残る主原因――テンションの過剰・素材の選択ミス
口ゴムが足首に強い跡を残す主な原因は、
1)編み機の設定でテンション(糸の引き締め強度)が強すぎる
2)素材が硬い/弾性繊維比率が高すぎる
3)製品サイズが実際の足首周囲より細い
などが挙げられます。
つまり、繊細なテンション設計や素材由来の“伸縮性・柔軟性”が、跡のつきやすさや履き心地に直結しています。
テンション設計の実務――どのように“最適”を追い求めるか
現場でのテンション管理プロセス
靴下工場では、編み機オペレーターが使用糸の種類や本数、設定テンション(引張強度)、編み密度など、幾つものパラメータを調整しています。
経験則に基づき、おおよその引張荷重(上限値/下限値)を決めていきますが、「跡を残さず、脱げにくい」理想の圧力は足首周囲・個人差・時期等によっても変化します。
特に高齢者向け製品や医療用の着圧ソックスの場合、“圧迫圧”としてmmHg(ミリメートル水銀柱)等で厳密な品質基準を設けることも増えています。
テンション測定の仕組みと現代の工夫
口ゴム部は「コース」と呼ばれる糸の往復回数を多めに編み込むことで、弾性を確保しつつ適度な強度も持たせます。
配合する弾性繊維(主にポリウレタン:ブランド名で「ライクラ」「スパンデックス」等が有名)の太さや本数の組合わせで、編み目の戻り・しなやかさをコントロールします。
近年では“テンションメーター”と呼ばれる引張測定器で、
1)新品の状態での口ゴムの伸び率
2)一定負荷を掛けての復元率
3)繰返し伸縮時の劣化挙動
などを評価。
さらに、PC連動の自動制御編み機を使い、正確な伸縮率管理を実現している工場も増えてきています。
重要なのは、現場での“足”評価
しかし、いかに物性的データでOKでも、実際の“履き心地”がユーザーの期待を裏切れば本末転倒です。
開発現場では、自社スタッフ・モニターによる実着試験を繰り返し実施。
「朝着用→夕方脱ぐ」「入浴後すぐ履く」「一日の歩行後にどんな跡か」など、生活シーンを再現することこそが、“働く人”や“歩く人”の本当の心地よさを生み出します。
素材選定の留意点――アナログ現場で培った知恵との両立
従来素材の特徴と限界
もともと靴下業界では、“ナイロン/ポリエステル+天然ゴム”という組合わせが定番でした。
しかし、ゴムは劣化しやすく、洗濯を繰り返すうちに弾力が低下、表面が硬化していくという問題がありました。
特に昭和・平成初期の大量生産品に顕著でした。
最新素材・工法と、その実践的メリット
近年は下記のような工夫が進んでいます。
– ポリウレタン系超弾性繊維(例:ライクラ、ロイカなど)による“しなやかな伸び戻り”
– 肌触りの良い綿やレーヨン、シルク混など、化繊×天然繊維のハイブリッド
– 接着ではなく編み込み方式によるゴム糸カバーリング(ゴム糸を他素材糸で包む)でゴム焼け・劣化の抑制
また、サステナビリティ意識の高まりにより、
– リサイクルポリエステルや再生繊維
– 植物ベースの天然弾性素材(環境負荷軽減)
– 無染色/天然色素染色など肌負担低減
といった、新しい視点からの素材提案も広がっています。
なぜアナログ業界で新素材導入に壁があるのか?
現場では「コストが高い」「既存編み機では扱いにくい」「納期が読めない」などのアナログな理由で、“昔ながら”のやり方が続いています。
熟練工による『数字にできない感覚』も残っています。
しかし、それでも少しずつ“試作→着用テスト→消費者モニター評価”を繰返すことで、踏み出す企業も増えています。
バイヤー・サプライヤー視点で考える“最適化”の鍵
バイヤーが求めるポイント
量販店や専門バイヤーは「脱げない、跡が残らない、長寿命」だけでなく、下記の視点も重視しています。
– 価格競争力と安定供給
– シーズンごとの新提案(付加価値訴求)
– 他社と差別化できる機能・アピールポイント
– トラブル時に迅速対応できる柔軟性
このため、メーカー・サプライヤーからの“現場の声”“本当の特長”の丁寧な提案説明は信頼獲得の要となります。
サプライヤーとして付加価値を生むには?
ただ“口ゴムが跡を残さない”だけでなく、
– 一日中快適な“ふんわりテンション設計”
– 糸・編み方にこだわった“滑らか食い込みレス加工”
– 糸の配色や、デザイン性の同時追求
など、具体的な特徴を伝えることが差別化につながります。
また、「経年劣化試験」「消費者アンケートに基づく改良事例」などの実証データを用意することで、バイヤーからの信頼を強めることができます。
ラテラルシンキングで考える“これから”の靴下開発
従来発想の限界と新しいアプローチ
靴下の跡対策は、編み糸・素材・編機設定など限られた要素で行われてきました。
しかし、本来「靴下は動く足につける道具」である以上、「常に動く・むくむ・熱を持つ」といった“人間の変化”に調和する機能が求められます。
たとえば、
– 体温や湿度で微細に伸縮性が変化する“インテリジェントマテリアル”
– 足のむくみ時、圧力を自己調整する“スマート繊維”
– 運動量や活動パターンに応じて締め付けパターンが変化する“パターン編み+電子制御”
など、異業種からの技術流用・協業こそ、業界に新たな地平線をもたらすでしょう。
“使ってから高評価”の波及を狙うストーリーマーケティング
目立たず地味なプロダクトでも“使ってみて初めて違いがわかる”ことを実感として伝えるストーリーが、顧客ロイヤルティを高めます。
足を思いやる気配り、現場で本気で考えた“やさしい設計”、数字では表しきれない作り手の熱量を、自信を持って発信していきましょう。
まとめ――現場の知恵と技術で快適な未来へ
靴下の口ゴムが跡を残さないためには、編み機設定のテンション設計・最適な素材選定はもちろん、履く人のバリエーションにも寄り添う思考が求められます。
現場の知恵、新素材開発、着用評価の融合によって、「本当にユーザー目線の快適さ」を実現することができます。
そして“昭和”のノウハウと、“令和”の新視点の両輪で、ユーザー・販路双方に選ばれるプロダクトを生み出していきましょう。
製造業に携わる方、バイヤーを目指す方、サプライヤーとしてマーケットの新潮流を掴みたい方にとって、本記事が皆さんの現場目線のヒントとなれば幸いです。
ノウハウ集ダウンロード
製造業の課題解決に役立つ、充実した資料集を今すぐダウンロード!
実用的なガイドや、製造業に特化した最新のノウハウを豊富にご用意しています。
あなたのビジネスを次のステージへ引き上げるための情報がここにあります。
NEWJI DX
製造業に特化したデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指す請負開発型のコンサルティングサービスです。AI、iPaaS、および先端の技術を駆使して、製造プロセスの効率化、業務効率化、チームワーク強化、コスト削減、品質向上を実現します。このサービスは、製造業の課題を深く理解し、それに対する最適なデジタルソリューションを提供することで、企業が持続的な成長とイノベーションを達成できるようサポートします。
製造業ニュース解説
製造業、主に購買・調達部門にお勤めの方々に向けた情報を配信しております。
新任の方やベテランの方、管理職を対象とした幅広いコンテンツをご用意しております。
お問い合わせ
コストダウンが重要だと分かっていても、
「何から手を付けるべきか分からない」「現場で止まってしまう」
そんな声を多く伺います。
貴社の調達・受発注・原価構造を整理し、
どこに改善余地があるのか、どこから着手すべきかを
一緒に整理するご相談を承っています。
まずは現状のお悩みをお聞かせください。