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*2025年6月30日現在のGoogle Analyticsのデータより

組込みソフト品質を高めるテスト設計と結果分析プロセス

目次
はじめに:製造業で求められる組込みソフトの品質向上
製造業において、組込みソフトウェアの品質は製品の安全性や信頼性、顧客満足を左右する極めて重要な要素です。
特に、近年ではIoTや自動化、スマートファクトリー対応といったトレンドの中、ハードとソフトの複雑な連携が求められ、その品質確保が以前にも増して重要視されています。
本記事では、自動車や産業機器など幅広い製造業での現場経験から得た知見に基づき、アナログ的な伝統が今なお色濃く残る現場でも実践しやすい、組込みソフトウェア品質向上のためのテスト設計とその結果分析プロセスについて、深く、そして実践的に掘り下げていきます。
組込みソフトとは何か?基礎をおさらい
組込みソフトとは、電子機器や機械に内蔵され、本体を制御したり特定の機能を実現するためのソフトウェアを指します。
たとえば、自動車のABS制御、産業用ロボットの動作指示、家電の運転プログラムなど、表には見えなくても製品の中枢を担っています。
製造業のグローバル競争、ユーザー要求の高度化、事故リスクへの社会的関心の高まりにより、組込みソフトの不具合が与える影響は年々大きくなっています。
品質問題は即、リコールやブランド価値の低下、信頼喪失につながりかねません。
昭和的アナログ現場とデジタル化の溝
今も多くの現場では「匠の勘と経験」「テストは慣れた担当者の勘所で」といった昭和時代からの文化が根強く残っています。
一方、設計プロセスにおけるデジタル化・モデリングやシミュレーション、AIを活用した予兆管理といった新しい手法も徐々に浸透しつつあります。
しかし、「過去の成功体験への執着」や「現場が主導する属人的な判断」が、品質問題の温床となり、さらに”暗黙知”が継承されず消えてしまうことで、同じミスを繰り返す要因にもなっています。
これからの製造業には「アナログの強み(現場の知見)」と「デジタルの力(標準化・見える化)」を融合し、体系的な品質改善ループを確立することが不可欠です。
なぜテスト設計が肝なのか
よいテスト設計とは、無駄なテストを省きつつ、致命的なバグや想定外動作をもれなく摘み取る力学に根差しています。
しかし、属人的な現場では重点ポイントが曖昧になり「とりあえず全部テストして安心」あるいは「例年通りやれば大丈夫」といった、非効率で危険なテスト文化も散見されます。
逆に、あらかじめ「何のためのテストか」「シナリオの抜け漏れはないか」「発見した不具合をどう分析・再発防止へ生かすか」までを体系化することで、現場クオリティを一気に引き上げることができます。
失敗体験に学ぶ現場のリアル
20年を超える現場経験から確信するのは、「ソフト自体よりも設計プロセスの方がむしろボトルネック」だという点です。
ソースコードにばかり目が向き、要件定義やユーザーストーリーに対するテスト設計が甘くなり、不具合が市場に出てしまったというケースが後を絶ちません。
また、納期優先やコスト削減を名目に「妥協のテスト」「予算内でやれる範囲だけ」「設計レビューを形骸化」した結果、品質問題が量産直前や市場投入後に一気に噴出するパターンも多く経験しました。
組込みソフトのテスト設計、一歩進んだ実践法
1. 要件分割・階層化
どんなに手間でも、上位要件→中位要件→ソフト仕様 という分解を明確にします。
品質トラブルの多くは「誰がどの要件を保証するか」が曖昧になった領域で起こります。
特に、現場用語や昔ながらの機能追加依頼(いわゆる口約束仕様)は見逃されやすいため、必ずドキュメントに落とし込み、要件ごとにテスト条件をつけて「もれ防止チェックリスト」を作りましょう。
2. ケース粒度とカバレッジの徹底管理
すべてをテストするのが正解ではありません。
リスクベースドテスト手法を用い、「致命的な失敗=人身事故・ライン停止につながる要因」を優先順位1に設定します。
また、バウンダリ値テスト(境界値分析)や組み合わせ爆発の制御技術(直交表、ペアワイズ法)も、現場レベルで浸透させるべきです。
これにより、テスト対象数の削減と効率化、抜け漏れの発見が格段に改善されます。
3. 現場知見の活用と標準化のバランス
ベテラン作業者の「危ないと感じる勘」を仕組み化しましょう。
例えば「過去にトラブルが多発した状況」をヒヤリングしてテストケースへ反映するだけでも、抜け穴予防に効果的です。
一方、仕組みに落としすぎて「現場が考えなくなる」ことも避けましょう。
属人的な知見と標準化テンプレートを並行して運用し、「なぜこのテストをやるのか?」を現場全体で意識づけします。
テスト結果分析の重要性とプロセス改善
1. テストログ・障害票のデータベース化
貴重な不具合情報を「次に生かす資産」として管理していますか?
組込みソフトは、同じような失敗が世代や機種を超えて起きることが多々あります。
障害データベースを作り、分析⇒要因⇒対策のPDCAを回しましょう。
2. KPT法やコレクティブレビューの導入
失敗を直視し改善する文化が根付く現場は強いです。
Keep(続けるべき)、Problem(問題点)、Try(挑戦すべき)のフレームワークで、定期的にレビューを行いましょう。
「現場が隠したがるバグ」「言いづらい指摘」も受け止められる風土づくりが不可欠です。
3. データドリブンな品質マネジメント
単なる件数統計や合格率だけでなく、不具合カテゴリ別・機能別・工程別の発生傾向分析が効果を発揮します。
AIやBIツールも活用し、人的なパターン認識を超えた洞察も加味しながら再発防止策を具体化してください。
バイヤー・サプライヤー双方が意識すべき品質基準
製造業のバイヤー(購買・調達担当)は、単なるコスト比較でなく「品質文化の可視化」を意識してください。
品質管理体制、テスト実行プロセス、過去不具合対応の履歴と改善実績など、ソフト設計だけでない“現場運営の質”をしっかり監査することが大切です。
一方サプライヤーは、「結果が出ればOK」の姿勢では長期信用を失います。
仕組み化、見える化、ナレッジ共有こそが、次の取引拡大や信頼獲得につながるという認識が求められています。
また、「自主提案型の品質改善活動」を通じ、顧客=バイヤーとの協働力を高める姿勢が差別化要素となります。
まとめ:製造業発展への新地平に向けて
デジタル技術の進展やグローバル化を背景に、組込みソフトウェアの品質要求はますます厳格になっています。
アナログ文化の強い現場ほど、「設計」「テスト」「分析」の一連のプロセスに風通しを良くし、現場知見と最新手法をセンスよく掛け合わせることが、他社との差別化につながります。
これからの時代、単にテスト件数を積み上げるだけではない、「なぜこのテストを行うのか」「どうやって失敗を次に生かすのか」を現場レベルからデータで裏付けながら、持続的な品質向上サイクルを確立しましょう。
バイヤーを目指す方、さらに現場で汗をかく技術者や管理者の皆さんが、この記事をきっかけに自社・自分の現場で“新しい品質文化”を実践し、製造業全体の発展に貢献していただけたら幸いです。
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