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新技術を提案しても価格で却下される開発のむなしさ

目次
はじめに ~ なぜ「価格」が壁になるのか
製造業の世界では、日々新しい技術や画期的なアイデアが生まれています。
しかし「これが現場を変える」と自信を持って提案した新技術であっても、最終的に価格という壁に突き当たり、却下されることが少なくありません。
この経験は、開発担当者や技術者だけでなく、現場で汗を流す多くの人々の大きな悩みとなっています。
本記事では、製造現場で新技術提案が価格面で却下される背景や、その「むなしさ」にどう向き合い、突破口を見つけていくかを、現場目線かつ実践的に深く掘り下げていきます。
長年製造業の現場に根ざしてきた筆者の実体験も交えつつ、今後の「製造現場発イノベーション」の可能性を考察します。
現場でイノベーション提案が生まれる背景
現場からこそ生まれる「気付き」
日々の生産ラインや工程管理、トラブルシューティングの中で、本当に役立つ改善アイデアや新技術が生まれます。
帳票の自動化、設備異常の検知システム、省人化やコスト低減を実現する自動搬送機など、現場の「これが必要だ」という声が原点である場合がほとんどです。
昭和の発想から抜け出せないアナログ体質
一方、日本の製造業には根強い「アナログ志向」があります。
紙の帳票やハンコ文化、伝統的工程の踏襲、「今までのやり方が一番安全・安心」という意識が現場に色濃く残っています。
そのため、どれほど優れた新技術であっても「現状維持」や「余計なコスト」が優先され、イノベーションが進みにくい傾向があります。
「価格で却下」されるリアルな状況
そもそも製造業の調達スタンスとは
バイヤー(購買担当)の最大のミッションは「QCD(品質・コスト・納期)を守りつつ利益を最大化すること」です。
中でも「コスト削減」は経営層から強烈なプレッシャーを受けている項目であり、現場からの新技術や改善提案であっても「価格面」でシビアな目が向けられます。
特に「これまでのやり方で困っていない」という理由がある場合、多少の効率化や品質向上より、目の前の「コスト上昇リスク」の方が大きく見えてしまうのです。
ROI(投資対効果)の厳しい現実
新技術導入には一定のコストが伴います。
システム改修や新規装置導入、教育コストなどを踏まえると「初期投資が回収できるのか?」というROI(Return on Investment)の基準で判断されがちです。
特徴的なのは、価格で却下される際の「定量的な裏付け=ROI」の要求が厳しい一方、それを説得するための現場の声や臨場感が経営層・バイヤーに伝わりにくいというギャップです。
この乖離が、開発メンバーや現場担当者のむなしさを加速します。
業界動向と競争の「現実」
グローバル競争で「コスト至上」が染みついた
昨今の製造業は、中国や新興国企業との激しいコスト競争にさらされています。
国内工場でも、1円単位で価格比較・グレードダウンの圧力がかかるのが当たり前となりました。
購買部門にとって「できるだけ安く調達せよ」というのは半ば絶対命令であり、「今のままで十分回る仕組みであれば、余計な投資はしない」という傾向は年々強まっています。
革新技術より「当たり前品質・継続性」重視の空気
バイヤー・サプライヤーのやり取りの主流は、「たとえ優れた新技術でも、品質・供給の安定が脅かされるなら避けたい」「既存ラインに追加の手間や課題が生まれる技術は選ばない」です。
好奇心や新規性よりも、「今までうまく回ってきた蓄積」「安定稼働の安心感」が圧倒的に重視されています。
これが、新規メーカーや現場起点のイノベーションが採用されにくい根本理由となっています。
「むなしさ」を乗り越えるには? 実践と視座の転換
「価格障壁」はある意味、健全な壁
一見、価格で却下されるのは理不尽に思えるかもしれません。
ですが、経営を持続的に発展させるためには、安易なコストアップを抑制しリスクを管理することも重要です。
現場からの革新提案を通すには、「感情や熱意」だけではなく、「投資価値の論理的な説明」「最大公約数的なメリット提示」が不可欠です。
むなしさを感じる場合こそ、「バイヤーの立場や視点」を学び直すことが成功への近道です。
サプライヤー目線で「バイヤー思考」を身につける
もしサプライヤーの立場であれば、「技術が優れている」というアピールだけでなく、「なぜ従来法から転換すべきなのか」「他社導入事例でどれだけ省コスト・高効率化できたのか」を明快に数字で伝える工夫が必要です。
また、導入による「教育・維持コスト」や「万が一のトラブルリスク」まで先回りし、バイヤー側の不安を払拭できる資料やサポートプランを提示することで、採用率は劇的に変化します。
つまり、現場の「当たり前」や「暗黙の懸念」まで丁寧にケアし、購買側の心理に立った提案力を身につけることが、業界の慣習を突破する最大の鍵となるのです。
ラテラルシンキングで新提案を通す工夫
「価格評価」を多層的に組み立てる
単純な導入コスト比較で勝負するのではなく、「不良率の低下による全社利益」「省スペースや省人化での人件費圧縮」「高付加価値製品の開発余力」など、経営の複数レイヤーで生まれる実益まで論点を広げます。
ファクトと理論、現場のリアリティ、さらに長期的な成長ビジョンを紐付けて、「価格だけで見れば却下理由であっても、多面的な価値評価で総合的にプラスとなる」ことを積極的に訴求しましょう。
部門横断での「サポーター」を作る
新技術や仕組みの導入は、一部門だけで進めるのが難しい時代です。
品質保証・生産技術・工程管理・調達購買など、複数部門の担当者と定期的に意見交換をし、協力者=サポーターを増やしてください。
「一人の熱意」から「全社的な熱意と合意」へと拡大していくことで、「価格ではなく、企業の未来を創るための投資」という大義名分を作ることができます。
「小さな成功」から「大きな導入」へ
いきなり全社レベル、全ライン導入のようなスケールで戦うと、大抵の場合コスト面で負けてしまいます。
現場で「無料トライアル」「限定ラインでの先行導入」などスモールスタートを提案し、早期に成果事例やユーザーの声を積み上げていきましょう。
社内外の抵抗勢力を「目で見える検証実績」「数字で語れる説得力」で徐々に巻き込み、ヒット商品を生み出してきた企業はこの積み重ねに長けています。
実際に経験した「価格障壁」突破事例
私が現場責任者をしていた際、IoTを活用した設備異常検知システムの導入を提案したことがありました。
導入費用は数百万円と決して安くありません。
最初は、購買部・経理部双方から「現状の点検体系で十分なのでコストアップは不要」と却下されました。
ところが、現場の作業効率化・突発対応遅延の減少・不良再発防止に役立つ具体的数値を毎月データでストックし、数カ月後には「現場の生の声」として社内レポートを提出しました。
この「現場+データ+担当者の熱意」が購買部の“防波堤”を徐々に崩し、最終的に「限定導入」でOKの承認を得ることができました。
この成功体験から、現場担当者がバイヤーの論理を徹底して理解し、小さな実績を積んで大きな承認を勝ち取る重要性を確信しました。
まとめ ~「むなしさ」は次世代の原動力になる
価格で却下されて悔しい思いをした経験がある方こそ、実は現場イノベーションの真価を知っています。
むなしさ・悔しさを糧に、相手の論理を徹底的に分解し、現場からブレイクスルーを起こしましょう。
昭和から続くアナログな現場体質を変革できるのは、現場を知り抜いた人間しか出来ません。
「価格」という厳しい条件があるからこそ、本物の価値や説得力が磨かれます。
バイヤー思考と現場視点、双方を融合することが、これからの製造業の発展を牽引する最大のカギだと私は信じています。
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