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OEMで製造するペット用アウトドア用品の耐久性試験の重要性

OEMで製造するペット用アウトドア用品の耐久性試験の重要性
はじめに ~ペット市場の拡大とアウトドア志向の高まり~
ここ数年、ペット市場は右肩上がりの成長を続けています。
特にキャンプやハイキング、旅行といったアウトドアレジャーにペットと一緒に出かける愛好家の増加に伴い、「ペット用アウトドア用品」への需要が急速に高まっています。
そうした流れの中で自社ブランドを持たず、OEM(相手先ブランドによる製造)で商品を供給するメーカーも増えてきました。
競争の激しい市場で生き残るためには、機能性やデザインと同等、もしくはそれ以上に「耐久性」が求められる局面が多くなっています。
この記事では、OEMで製造するペット用アウトドア用品における耐久性試験の重要性について、実務を積んだ現場目線で解説します。
経験が浅いバイヤーの方や、サプライヤーの方もぜひご参考になさってください。
OEM製造における「耐久性」の意味
OEMとは、ブランドオーナーの仕様やデザインに基づき、他社が製品を受託生産する方式です。
ペット用アウトドア用品の分野に限っても、首輪やリード、防水シート、キャリーバッグ、テント、ウェア、ギアバッグなど様々な商品があります。
その多くはペットとオーナー双方の命や安全を守る目的もあり、特に「耐久性=信頼性」がブランドイメージに直結します。
この「耐久性」は単に壊れにくい、摩耗しにくいといった機械的な強さだけを意味しません。
アウトドアという過酷な使用環境(紫外線、雨、泥、ペット自身の引っ掻きや噛みつきなど)に耐え抜くこと、そして繰り返しの洗濯やメンテナンスにも耐性を持つことが求められます。
OEMメーカーの評価は、この耐久性をどれだけ客観的に示すことができるかに大きく左右されます。
現場で起きがちなトラブル例とその背景
昭和からの流れを色濃く残す国内製造業では、「うちの職人の勘と実績なら大丈夫」「過去クレームはなかった」といった前例踏襲の感覚が根強い傾向があります。
しかし、OEMによるペット用品生産は、ロットごと・OEM先ごとに設計や素材も変わるため、「前例」は必ずしもあてになりません。
実際に現場では、次のようなトラブルがたびたび起こっています。
・リードが一定期間でほつれて切れる
・縫製部分から水が染み込む
・樹脂製バックルが冬季に割れた
・生地の色が日射で急激に退色する
・洗濯15回でコーティングが剝がれる
こうしたトラブルは、バイヤーやエンドユーザーの信頼を大きく損なうだけでなく、最悪の場合はリコールやPL(製造物責任)リスクにも繋がりかねません。
それを未然に防ぐためには、現場目線の厳格な耐久性試験が不可欠です。
OEMバイヤーが求める耐久性データとは?
バイヤー視点で考えると、アウトドア用品のOEM案件で最も重視されるのは「可視化された耐久性能」です。
たとえば
・何kgの引っ張り力まで耐えるのか(引張試験)
・どれくらいの摩擦で生地が摩耗するのか(摩耗試験)
・どんな環境(気温・湿度・紫外線・雨)で耐用性能は保たれるのか(恒温恒湿/耐候試験)
・洗濯やクリーニングを何回繰り返すと素材・加工はどの程度劣化するか(洗濯耐久試験)
など、具体的な数値や実験条件を事前に求められるケースが増えています。
また、国内・海外の法規制(RoHS、REACH規制など化学物質規制)や業界基準に適合しているデータも安全性の観点からますます重要になっています。
耐久性試験の主な手法とポイント
では具体的に、ペット用アウトドア用品においてはどのような耐久性試験が実施されているでしょうか。
下記は現場でよく行われる主要な試験項目です。
①引張試験
金属や繊維製の部材、縫製部分(シーム)などに一定の負荷を加え、耐久限界を調べる試験です。
JIS(日本工業規格)やASTM(米国試験規格)に基づき、サンプルを専用の装置に固定し、徐々に力を加え破断するまでの荷重(N・kgf)を測定します。
単なる数値だけでなく「どの部分がどんな壊れ方をしたか」も重要な情報となるため、映像記録や写真も添えることが肝心です。
②摩耗・引っ掻き耐性試験
ペット用品ならではの試験がこの摩耗・引っ掻き耐性です。
摩耗試験では専用摩耗機を使用して、布地や塗装がどの程度擦れて劣化するかをテストします(例:マーチンデール摩耗試験)。
また犬猫の鋭い爪や歯に対する引っ掻き試験(手動または自動化装置を用いる)が有効です。
これにより、例えばシートやカバーの「何回の引っ掻きで穴があくか」など具体的なデータが得られます。
③耐候性(加速劣化)試験
アウトドア環境では、紫外線や雨水による劣化が大きな課題です。
耐候性試験ではサンプルを紫外線照射装置内や耐候試験器に入れ、一定時間ごとに劣化の様子(退色、クラック、剥離など)を観察します。
メーカーによっては、地域ごとの気象条件を模した試験シナリオを作成し、より実使用に近い状態でテストすることも徐々に広まりつつあります。
④繰返し洗濯・クリーニング試験
ペット用品は何度も洗うものが多いので、「洗濯にどのくらい耐えられるか」も重要な評価軸です。
工場内で国際規格(ISO6330など)に基づき洗濯テストを繰り返し、その前後で生地の変色・縮み・コーティング剥離・加工損傷などをチェックすることが求められています。
データを活かしたOEMの差別化戦略
耐久性試験の重要性は明らかですが、実際の工場現場では「手間がかかる」「コストがかさむ」と敬遠されがちです。
しかし、いまや「見える耐久性」がブランド・バイヤー双方の信頼を呼び、OEMサプライヤー自身の大きな差別化ポイントになり得ます。
よくあるOEMの語り口は「クレームがありません」「長年この方法でやってきました」といった自己主張が多く、数値や実証データに乏しいのが古い業界体質です。
一方、現代的なOEMパートナーは
・ISO/ASTM規格に基づく試験成績書の提示
・顧客要望に合わせた「耐久性カスタマイズ試験」の提案
・トレーサビリティ(生産履歴管理)による信頼性担保
といった手法で、専門的なデータをもとに商談を進めるメーカーが圧倒的な信頼を獲得しています。
バイヤー側にとっても、「定性的な話」から「定量的な数値」のやり取りができるOEMは頼もしく、リピート依頼や新商品開発を委託したくなるパートナーとなるでしょう。
サプライヤーとバイヤーが歩むべき“次の地平線”
耐久性試験を実施し、数値としてアウトプットできるようにするには、現場スタッフの教育や設備投資が欠かせません。
昭和脳の時代、ベテラン技能者の「経験値と勘」だけで暗黙知を守ってきた現場も、今は若手や海外人材の増加で多様性が求められる時代です。
数値による裏付け(エビデンス)のあるものづくりこそが、今後のバイヤー・OEMサプライヤー双方の競争力強化につながります。
また、IoTや自動化技術の導入で試験業務を効率化したり、AI活用でビッグデータ解析による製品改善・設計最適化を図ったりという動きも、徐々に進んできました。
これは単なる競争相手との差別化だけでなく、業界全体としての品質底上げや、安全・安心なモノづくりという社会的責任にも直結します。
まとめ ~耐久性こそものづくり現場の「守り」と「攻め」~
OEMで製造するペット用アウトドア用品の耐久性試験は、単なるリスク管理や品質保証にとどまらず、取引先からの信頼獲得や差別化という「攻め」の施策にもなります。
従来のアナログ文化を否定せず、そこに「見える耐久性」という現代的な武器を加えることで、より高度な顧客ニーズに応えていきましょう。
現場目線と数値情報、両方の強みを掛け合わせることで、あなたの工場・ブランドはきっと次の地平線に到達できるはずです。
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