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トートバッグの縫製順序とテンション管理で見た目を整える方法

目次
はじめに:トートバッグ製造の現場から見える本当の課題
トートバッグは日常使いからノベルティ、アパレル用途まで幅広く活用されている人気アイテムです。
一見単純な袋物ですが、製造現場では意外と多くの技術とノウハウが込められています。
特に縫製順序やテンション管理は、最終的な見た目や耐久性、コストに直結する重要な工程です。
本記事では、大手製造業の現場で培った視点と、未だに昭和的な慣習が根強いアナログ業界の実情も交え、トートバッグの縫製順序とテンション管理による品質向上の方法を深堀りします。
これから工場の改善を目指す方やバイヤーを目指す方、またサプライヤーの方にもバイヤーの視点が理解できる、実践的な内容になっています。
トートバッグ縫製の基本プロセス
設計段階の重要性
トートバッグ製造をスタートする上でまず重要なのが「設計」です。
この段階で寸法、ポケット配置、底マチの形状、持ち手の幅や長さなど細部をきちんと決めていきます。
設計が曖昧だと、後の工程で形状のバラつき、ポケットのズレ、マチ部分の歪みが起きやすくなります。
特に量産品の場合は、紙パターンやCAD設計によって寸法精度を担保し、標準化することが重要です。
生地裁断のコツ
設計が固まったら次は生地の裁断に入ります。
生地の地の目(繊維方向)を合わせて裁断しないと、完成品で型崩れやねじれが発生します。
また、量産現場ではCAD型を使い、「一度に何枚重ねてカットできるか」「カット面のズレをどう防ぐか」も重要なノウハウです。
裁断時は余分な生地のロスを減らすこともコスト削減に直結します。
トートバッグの縫製順序
実は、トートバッグの縫製工程には「ベーシックなパターン」と「現場ごとで工夫された順序」が混在しています。
標準的な縫製順序は以下の通りです。
1. ポケット(外側・内側)の縫い付け
2. 持ち手の作成、持ち手の本体仮留め
3. 本体表地の縫い合わせ(サイド→底まちの順)
4. 角や底のマチを作る(場合によって縫い代処理も)
5. 内袋の作成
6. 本体と内袋の合体(中表で縫い合わせ→ひっくり返す)
7. 口元(開口部)のステッチ・仕上げ
最適な縫製順序は、形状やデザイン違い、素材特性、数量生産か個別対応かで多少前後します。
特に手縫い工程が多い場合や厚手生地のときは、縫い難さを考慮して順序を組み替えることも現場ではよくあります。
テンション管理とは何か-“ゆるみ”や“つれ”を防ぐ勘所
テンション管理の基礎知識
ミシンで布を縫うとき、「テンション」とは上糸・下糸・布地それぞれにかかる張力のことを指します。
適切なテンションに保たれていないと“糸のほつれ”“つれ”“ゆるみ”や、縫目が波打ったりする原因になります。
ミシンごとに調整ノブがありますが、経験豊富な職人は「指で布を引っ張る感触」「縫い進めるときの音」の微妙な違いで見極めています。
近年は自動テンション機能搭載の工業用ミシンも普及しましたが、アナログ現場では“人の手”で管理することが今も主流です。
縫製順序とテンションの関係
ここに現場で軽視されがちな落とし穴があります。
例えばサイドから底へ続けて縫う工程では、途中で布地を回転させたり方向転換する場面が出てきます。
このとき、布を強く引っ張りすぎてテンションが過剰になると、一方だけ“つれ”が生じてきれいな四角形が保てません。
逆に、布をしっかり張らずに無理に進めると、縫い目がたるみ、仕上がりが膨れた印象になります。
特にキャンバスや帆布のような厚手生地では、縫目の伸び縮みが目立ちやすく、テンションの管理がより重要になります。
現場でできるテンション管理の工夫
– ミシン糸調節は「始業時」と「生地を変える」ごとに確認を徹底する
– 長辺・短辺・角部で試縫いを変える
– 大きめサイズは途中で“休みポイント”を設けてズレ修正
– 厚手や重ね縫い部分は、ミシンへの“送り”を補助する道具を使う(テンションリリースシート等)
– 再現性確保のため、ベテランと新人の手順・注意点を作業手順書で明文化
厚手素材・曲線・角マチなど、工程ごとに適切なテンション管理方法を身につけることで、見た目の美しさも格段に変わります。
昭和のアナログ現場でも活きる:見た目を整える7つのヒント
1. 事前のアイロンがけは手を抜かない
裁断後や縫い合わせた後、都度生地のしわやクセをアイロンで“伸ばす”ことで、その後の工程が格段にやりやすくなります。
昭和の現場でも「とにかくアイロンかけろ」は合言葉でした。
2. 縫い始めと終わりの“返し縫い”はしっかりと
角やサイドでは必ず複数回返し縫いを行い、ほどけ予防だけでなく、形崩れ・端ほつれを防げます。
3. “しつけ糸”を使う
仮止めにクリップやまち針だけでなく、しつけ糸での仮縫いを丁寧に行うことで、不意のズレを大幅に削減できます。
4. 内袋(ライナー)でのゆがみ防止
外袋・内袋での合体時、内袋の大きさは外袋より5mm程度小さく設計することが美しい仕上がりの秘訣です。
昭和の現場での隠れた“コツ”でもあります。
5. 角部の“切り込み処理”
四隅やマチ部分は、縫い代に小さな切り込み(ノッチ)を入れることで、ひっくり返した時に生地がつっぱらず、角がシャープに出ます。
6. 端ミシンの“押さえステッチ”
開口部やハンドル部分に“押さえ”ステッチを施すことで、形崩れ防止とデザイン性UPにもつながります。
7. 最終工程の“最終整形”
仕上げに再び丁寧にアイロンを掛けて全体の形を整え、「検品」では開口部、ハンドル、底マチの歪みを目視と定規でチェックし、微修正を行います。
業界の変化とバイヤー・サプライヤーに求められる考え方
アナログ的慣習とデジタル化のせめぎ合い
アパレル・雑貨業界では長年、職人の手作業に大きく依存してきました。
近年、IoTや自動化、大規模自動カッター機の導入も広まりつつあります。
しかし縫製やテンション管理のような微妙な“勘”や“経験知”は、まだまだデジタル化一辺倒では補いきれない部分が多いというのが実情です。
特に、“安かろう悪かろう”から“見た目の美しさ”や“耐久性”まで求められる今、バイヤーは“どのような工程と仕組みで作られているか”に注目する時代となりました。
バイヤーの考える品質と現場視点のギャップ
バイヤーが重視するポイントは以下の通りです。
– 一定以上の寸法精度・外観の均一性
– 端始末・縫製強度・引っ張り強度の明示
– 見た目(歪み、波うち、糸のほつれ等)のクリア
– ロットごとの品質安定
– コストと納期のバランス
一方、サプライヤー(縫製現場)からすると「どこまでこだわるか」「どこまで省力化できるか」というせめぎ合いがあります。
バイヤーとしては、見た目や品質の“基準”を明文化し、定量評価(寸法基準・引張試験など+外観基準)を伝えることが大切です。
工場側も、現場ベテランに頼るのではなく、工程ごとにチェックポイントを作成し、標準化と再現性向上を意識しましょう。
まとめ:縫製順序とテンション管理がもたらす“違い”を見極めよ
トートバッグの製造は、裁断から縫製、仕上げまで一つ一つの工程が最終品質に大きく関わっています。
特に縫製順序の最適化とテンション管理は、見た目の整い、変形しにくさ、量産時の安定性とコストのバランスを大きく左右します。
アナログが根付く昭和の現場技術から、現代の標準化・自動化へ。
双方の良いところを生かし、現場の工夫を“明文化”“可視化”し続けましょう。
バイヤーもサプライヤーも、プロセスそのものを深く理解することこそが、強い調達力・高い顧客満足につながります。
製造現場から新たな地平線を切り拓く一歩として、縫製順序とテンション管理を見直してみてはいかがでしょうか。