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*2025年6月30日現在のGoogle Analyticsのデータより

熱可塑性エラストマーTPOレーザー溶着無溶剤自動車ウェザーストリップ

目次
はじめに:自動車業界におけるウェザーストリップの進化
自動車の性能や快適性を大きく左右する部品の一つが、ウェザーストリップです。
ドアや窓の周囲に取り付けられ、雨風やほこり、騒音を遮断する役目を果たします。
この地味ながらも重要な部品が、近年大きな変革期を迎えています。
そのキーワードが、熱可塑性エラストマー(TPO)、レーザー溶着、そして無溶剤化です。
昭和の時代から自動車業界を支えてきたアナログな製造現場も、脱炭素とサステナブル志向の高まり、さらには生産効率や歩留まり向上といった課題を受けて、まさに今“大きな地殻変動”が起きています。
この記事では、現場目線で、TPO材料、レーザー溶着技術、無溶剤化の最前線を詳しく解説します。
また、これらの技術動向が調達購買、生産管理、品質保証、取引先との関係にどのような変化をもたらすのか、新たな視点も織り交ぜてお伝えします。
なぜTPO(熱可塑性エラストマー)が選ばれるのか
従来の材料とTPOの違い
自動車のウェザーストリップで長年主流となっていたのがEPDMというゴム素材です。
しかし、EPDMは原材料費の高騰やリサイクル性の課題、そして工程での溶剤使用といった弱みがありました。
そこで、近年注目されているのがTPO(Thermoplastic Polyolefin)です。
TPOはプラスチックの持つ成形性と、ゴムの柔軟性・弾力性を両立した素材です。
射出成型や押出成型にも適しており、ウェザーストリップの大量生産には最適です。
また、繰返し加熱することで再成形できるというリサイクル性の高さが、今の時代に強く求められています。
材料面だけでなく、歩留まり改善やコストダウンにもつながることから、材料選定の段階からバイヤーやサプライヤー間でTPO化が強く推進されています。
サステナビリティとTPO
自動車メーカー各社はカーボンニュートラルの達成を宣言していますが、やはり部品一つひとつのリサイクル性や環境負荷低減がその根幹にあります。
TPOは廃材の再利用が容易なだけでなく、焼却時の有害ガス排出も少ない傾向があります。
調達購買部門が取引先にTPO素材での部品供給を強く指示するケースが増えているのはこのためです。
加工性と設計自由度の向上
TPOは多色化や多形状化も容易です。
これまでのEPDM系ウェザーストリップより、意匠性の高い設計が可能となります。
車体デザインと調和したパーツ設計、ひいてはユーザー体験の向上にも貢献しています。
レーザー溶着:アナログから次世代生産技術へ
従来の接合技術の課題
ウェザーストリップの製造現場では、従来、加硫接合や接着剤併用によるジョイント方法が使われていました。
しかし、溶剤の危険性や均一な接合部の確保、生産スピードの限界などの課題も抱えていました。
現場の生産管理者にとっては、“もっと綺麗に、速く、安全に”というニーズが常に存在します。
また、品質管理部門からも「接合強度がバラつく」や「外観不良が後工程で発覚する」といったクレームは絶えず起きていました。
これらの課題を根本から解決する技術として、レーザー溶着が脚光を浴びています。
レーザー溶着の仕組みと強み
レーザー溶着とは、レーザー光を照射し、材料同士を局所的に加熱・溶融し、圧着する方法です。
TPO材料はレーザー光の吸収性が高く、溶着プロセスにおいて高い親和性を発揮します。
メリットとしては、
・高い寸法精度と外観品質(バリやムラが発生しにくい)
・高速な生産性(1ジョイントあたり数秒)
・溶剤などの消耗品コスト削減
・非接触加工による機械トラブル・メンテナンス低減
などがあげられます。
特に、デジタル制御が可能な点は、従来の“職人の勘”に頼ったアナログな工程から、再現性・トレーサビリティ重視の現代工程へ進化している証拠です。
レーザー溶着導入現場のリアル「昭和の壁」
レーザー溶着は理論的には理想的な技術ですが、現場にはいくつもの壁が存在します。
既存のラインへの導入コスト・スペース確保。
スタッフのスキル切替。
溶着条件設定のノウハウ不足。
「不良は必ず現物確認」などのアナログ主義の壁―。
ここを、設計/生産/品質/購買の各部門が一丸となり突破しなければなりません。
また、レーザー溶着は90年代後半から技術自体はありましたが、「部品一点物生産」→「大量安定生産」で量産に耐える工程として広がったのはここ5〜10年です。
最新技術を古い現場に馴染ませる、その難しさと面白さを現場の多くの担当者が味わっています。
無溶剤プロセスの実現とSDGs
有機溶剤使用のリスク・規制強化
従来のジョイント工程では、溶剤系接着剤を使うことが当たり前でした。
しかし、有機溶剤は爆発・火災等の危険性や、作業者の健康被害、VOC(揮発性有機化合物)の大気放出といった環境問題を抱えています。
日本国内はもちろん、欧米や中国でも溶剤使用に対して年々規制が強化されています。
調達購買の視点では、「環境に優しい工場で作られている部品か」というCSRの観点が、取引先選定や監査時の必須条件になってきています。
無溶剤化のメリットとは
レーザー溶着による無溶剤化は、
・溶剤コストゼロ
・作業環境の安全性向上
・溶剤備蓄/管理/廃棄の手間が不要
・エネルギー効率の向上(ピンポイントでの熱投入)
を実現します。
現場生産者にとっても、臭いや有害性を気にせず、クリーンな職場を維持できます。
これは、従業員満足・採用強化にも確実にプラスです。
取引先選定基準の変化
取引先メーカーにとっては「無溶剤化=環境対応圧力」ととらえられがちですが、ここを逆手に取れば、溶剤レス=高生産性・高品質な工程を確立している証として、“競争優位”にもなります。
サプライヤーはバイヤーから“当たり前”に無溶剤プロセスを求められる時代です。
逆に、現場からノウハウを磨き上げて逆提案ができると、粘り強い信頼関係構築にもつながります。
現場実践・導入時のポイント
品質保証体制の再構築
新旧の技術を切り替えるタイミングで、品質保証体制や検査方法もアップデートする必要があります。
レーザー溶着では、外観や接合強度の自動検査装置を導入する工場が増えています。
また、トレーサビリティ確保のためのデータ管理や、設計変更時の品質リスクアセスメント。
こうした仕組みは現場担当者の“地道な改善努力”の積み重ねで初めて成り立ちます。
生産ラインの自動化との連携
レーザー溶着技術はロボットとの親和性も高いです。
これにより、ウェザーストリップの組立ライン全体を自動化する事例も増えています。
人手不足、熟練作業者の高齢化といった業界課題の解決にもつながります。
導入にあたっては、既存ラインのボトルネック分析から、無駄な作業工程の見直し、工程間ロスの最小化まで、ラテラルシンキングを駆使して全体最適を追求しましょう。
バイヤー/サプライヤーが知っておくべき「現場の本音」
変化を嫌う現場、コストコントロールを死守したい購買部。
この両者をつなぐ視点が重要です。
第一線の担当者が「なぜ今この技術変更をしなければならないのか」を納得できる、論理的かつ情熱的な説明が欠かせません。
また、サプライヤー側は納入部品の生産プロセス(=工場力)そのものが、バイヤーにとっての最強のセールスポイントとなることを常に意識しましょう。
調達・購買は“値段競争”だけでなく、“ものづくりの哲学”にも目を向けています。
これからのウェザーストリップ開発と製造業への提言
高機能材料であるTPOの活用、レーザー溶着や無溶剤プロセスの導入は、単なる技術革新にとどまらず、現場・部門横断の組織変革にも直結します。
「変化への耐性」は業界文化ごと異なりますが、現場では一人ひとりが“新たな当たり前”を作る担い手です。
今後は、材料・接合技術・環境対応の“三位一体”での差別化がますます求められます。
加えて、バイヤー・サプライヤーの双方が「どんな現場力で作られているか」「持続可能性へのコミットの度合い」によってパートナー選定が行われていきます。
20年以上の現場経験から痛感しているのは、「ものづくり力」と「時代適応力」を両立させている現場こそが、最終的に選ばれ続けるという事実です。
ウエザーストリップという小さな部品からでも、日本のものづくり全体がアップデートしていくことが、必ずや新たな市場と価値創造につながると、私は確信しています。
まとめ:「アナログ脱却」×「技術刷新」×「現場主導」の新時代へ
・TPO(熱可塑性エラストマー)× レーザー溶着 × 無溶剤プロセスは、自動車部品製造の現場で急速に拡大している
・材料の進化、工程の自動化、環境負荷低減の3つを満たすことで、調達購買から設計、生産、品質保証まで全方位的にメリットがある
・昭和型アナログ生産の壁を乗り越え、現場主体での改善・自動化が今求められる
・購買バイヤーは値段だけでなく、現場力・環境意識を重視したサプライヤー選定が重要
・サプライヤー現場も「自社の工場がどんな価値を提供しているか」を徹底訴求し、共創型関係を築く必要
今こそ業界を横断し、現場・設計・購買・上層部が連携し、「ものづくり新時代」を切り拓きましょう。
ウエザーストリップという一隅を照らしながら、未来型製造業の地平線をみなさんと一緒に開拓していければ幸いです。
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