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オープンアカウントとL Cとコレクションの比較で最適な決済条件を選ぶ貿易金融

目次
はじめに:貿易取引における決済条件の重要性
海外とのビジネスは、いまや多くの製造業で当たり前のものとなっています。
数十年前は「海外調達は大企業だけ」と言われていた時代もありましたが、今や中小企業でも海外サプライヤーとの取引は珍しくありません。
こうした取引において大きなテーマとなるのが、「どのような決済条件を選ぶか」です。
昨今は、オープンアカウント(Open Account・OA)、信用状(Letter of Credit・L/C)、コレクション(Collection)という3つの代表的な決済手法が、取引の現場で併用されています。
決済条件は、単なるお金の受け渡し方法にとどまりません。
信用リスク、資金繰り、商取引全体の効率―そして何より、自社とサプライヤーのパワーバランスや信頼関係をも大きく左右する、まさに現場の「成功のカギ」といえるものです。
本記事では、20年以上現場で調達・購買を経験した筆者が、それぞれの手法のメリット・デメリットを実例とともに解説します。
さらに、昭和から続くアナログ文化が残る業界のリアルにも触れつつ、どのように最適な決済条件を選ぶべきなのかを、ラテラルシンキング的に掘り下げていきます。
オープンアカウント(OA)決済とは何か
定義と仕組み
オープンアカウントとは、買主(輸入者)が商品を受け取った後、一定の支払期限に従って売主(輸出者)に代金を支払う方式です。
銀行を挟まず、商取引上の信頼関係に基づいて行う「後払い」が基本です。
期日は30日、60日、90日など双方合意で決定します。
メリット
・事務手続きが圧倒的にシンプルです。
・銀行を介さないため、手数料がほぼ不要でコストが安く済みます。
・入出金のタイミングを柔軟に調整できるため、キャッシュフローの最適化が可能です。
・納期や出荷スケジュールの自由度も高くなります。
デメリット
・バイヤー(買主)側の支払不履行リスクがすべてサプライヤー(売主)に集中します。
・新規取引や信頼関係が構築されていない場合は、サプライヤーが強い不安を感じます。
・急激な景気悪化や倒産が発生した場合、売掛金回収不能のリスクを最大限に背負うことになります。
信用状(L/C)決済とは何か
定義と仕組み
信用状(Letter of Credit)は、買主の依頼で銀行が発行する「支払保証状」です。
売主は、信用状の条件通りに船積書類を揃えれば銀行から確実に支払いを受けることができます。
国際貿易では最も伝統的かつ安全性の高い決済手段です。
メリット
・サプライヤーは「銀行からの支払保証」を得られるため、売掛リスクを最小限にできます。
・取引開始初期や高額案件でも安心してビジネスが可能です。
・商社など中間業者を挟んだ取引や、国をまたぐ長距離輸送の場合にも活躍します。
デメリット
・信用状発行・変更・通知など、銀行関与のため事務手続きが煩雑です。
・銀行手数料が高額で、取引コストが大きくなりがちです。
・書類不備の場合、支払いが大幅に遅れる場合もあり、現場でトラブルの元になることが多々あります。
コレクション決済とは何か
定義と仕組み
コレクション(Collection)は、売主から買主へ、荷為替手形や船積書類を銀行経由で送付し、買主が代金支払い後に商品を引き取れる仕組みです。
「書類渡しと引き換えに支払う」D/P(Documents against Payment)、「期日で支払う」D/A(Documents against Acceptance)の2つのパターンがあります。
メリット
・現物引き渡しと代金支払いが連動しているため、支払いの安全性が一定程度担保されます。
・L/Cに比べ事務コストが低く、手続きも簡素です。
・比較的信頼関係ができつつある取引先との中規模ビジネスに適しています。
デメリット
・銀行の保証が無いため、バイヤーの信用が決定的に重要です。
・開封後に支払いを拒否されるなど、状況次第で回収難となるリスクは残っています。
・新興国や法制度が未整備な国との取引だと、手形不履行のリスクがつきまとうことも。
現場経験に基づく使い分けの実態
「安心」と「効率」の間で揺れる現実
実際の製造業の現場で、どの決済条件を選ぶかは非常にシビアな判断となります。
例えば私の経験では―
1. 新規・高額取引/信用度不明な相手 → L/C必須
2. 継続的取引/中規模案件/相手国制度がしっかり → コレクション
3. 長年の付き合い/国内や韓国・台湾など → オープンアカウント
というように段階的な使い分けをしていました。
起業間で「昭和」的な“信用”重視の文化や、「義理と誠実」による取引慣習が色濃く残る業界では、「先代の付き合い」「親会社の決定」など、現場判断以外の要素も大きく影響します。
現実には、「L/Cって正直古臭い!」「銀行手数料が無駄!」という声もありますが、一度未回収問題を経験した現場では、安心料としてL/Cを選ぶ経営判断も多いのです。
コスト比較のリアル、キャッシュフローへの影響
コスト面ではオープンアカウントが圧倒的に優位です。
特に少ロット・多頻度の部品取引などは、L/Cやコレクションの手数料が相対的に重くなります。
キャッシュフロー面では、バイヤー視点ではOA(後払い)が有利ですが、売主には資金繰り負担を強いるため、早期回収を狙う売主との攻防がしばしば起きます。
このような現場のやりとりは、「カネの流れ=サプライチェーンの体力」とも言え、購買担当者・サプライヤーともに神経を使う部分です。
グローバル化・自動化・DX時代の選び方
デジタル化で変わる決済条件の最適解
紙の船積書類や煩雑な手続きに頼るのはもはや時代遅れです。
電子L/Cやオンラインバンク決済、電子インボイスなどの新たな決済方法も登場し、スピードと透明性において大きな進歩が見られます。
また、与信調査会社や取引先審査のクラウドサービスも進化しつつあり、海外新規業者でも与信データを取りやすくなる時代です。
こうしたツールを使いながら、「現場の判断」と「会社としてのリスク管理」のバランスを取ることが、一層重要になってきます。
調達戦略と決済条件―サプライヤーとバイヤーのWin-Win構築
決済条件をめぐる攻防は、単なる「条件闘争」だけではありません。
むしろ、サプライヤーとバイヤーがWin-Winとなるような調達戦略が、グローバルサプライチェーン時代では求められています。
たとえば、
・初回数回はL/C、信頼構築後OAへ移行
・一部早払い割引や保険付きのOA導入
・与信限度枠を設けたコレクション運用
など、「安全性と効率性」のバランスを探る方法は多様にあります。
昭和から続く“保守的体質”だけにとらわれず、現場と経営層が共にリスクとコストを正しく評価し、「ビジネスを成長させる最適な仕組み」として決済条件を活用する発想が必要です。
まとめ:最適な決済条件の選択はコミュニケーションから
オープンアカウント、L/C、コレクション―どの決済手法も一長一短があります。
取引の安全性、コスト、現場の柔軟さ、サプライチェーン全体の協力関係…これらをすべて加味し、自社にとって「今、最適な条件」を見極めることが、現場目線の実践的な強みです。
そして、最終的にものを言うのは現場同士の「コミュニケーション」―取引先とどう信頼を構築し、誠実に情報共有し合い、困った場面で協力できる関係をいかに築けるかです。
貿易金融の現場に身を置く皆さんには、単なる条件設定だけにとどまらず、「現場の目で判断し、継続的なパートナーシップをどう紡ぐか」に知恵を絞っていただきたいと思います。
これが、長きにわたる製造現場の実学としての私の答えです。
現場でしか得られない“生きた知恵”を活かし、皆さんの調達戦略・貿易実務がより盤石なものとなりますように。
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