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超音波の基礎と接合技術および製品への応用

目次
はじめに:超音波技術が製造業にもたらすイノベーション
現代の製造業は、かつてないほどに効率化、自動化、そして高付加価値生産が求められています。
このような中で「超音波」という技術は、古くは昭和の時代から利用されてきたものの、今なお進化を続ける重要な基盤技術です。
生産現場、調達購買、品質管理、そして自動化の全領域で、その存在感が増しています。
本記事では、超音波技術の基礎から接合(溶着)への応用、さらには最新の現場動向、バイヤーおよびサプライヤー視点での実践的な活用ポイントを、現場・管理職での20年以上の経験をもとに詳しく解説いたします。
超音波とは?――基礎から理解する
超音波の定義と性質
超音波とは、20kHz(キロヘルツ)以上の人間の耳には聞こえない高周波の音波です。
「振動」という物理現象そのものを巧みに制御・利用する点が、超音波技術の原点です。
製造現場では、超音波の持つ「エネルギーの伝播」と「高精度な非破壊検査」という2つの特長が、さまざまな用途で活用されています。
超音波の発生メカニズム
超音波は主に「ピエゾ素子」や「磁歪素子」と呼ばれる部品に高周波電圧を加えることで発生します。
ピエゾ素子は圧電効果により、電気的な入力を機械的な振動エネルギーに変換します。
これを「ホーン」や「ソノトロード」と呼ばれる増幅装置を介して、必要な対象物に届けるのが一般的な方法です。
製造現場での超音波の利点
超音波は「非接触」「精密制御」「低温加工」といった性質を持ちます。
素材や部品に物理的負荷を与えず、最小限のダメージでエネルギーを伝達できる点が、大きなアドバンテージになります。
特に樹脂・プラスチックの溶着、金属の接合など、熱や圧力だけで困難な加工工程で真価を発揮します。
超音波接合の原理と種類
超音波接合の基本原理
超音波接合とは、「超音波振動による摩擦熱」で部材同士を一体化させる技術です。
高周波振動(例えば20~40kHz)が接合部に伝わり、微細な振動運動による発熱で材料が局所的に柔らかくなり、加圧下で分子レベルで結合します。
溶剤や外部加熱を必要とせず、短時間で安定した接合品質を実現できます。
超音波接合の種類
主に、以下のような方式があります。
- プラスチック溶着(ウェルディング):樹脂部品同士の結合。自動車の内装部品や家電筐体などで普及。
- 金属接合:銅やアルミなど薄板金属の電極接合、リチウムイオン電池やコネクタ端子の製造など。
- リベット加工(リベッティング):樹脂ピンを軸にした結合など、特殊形状部品への応用。
用途や材質、現場の課題に応じて最適な方式を選定するスキルが、バイヤーや技術者の腕の見せどころです。
超音波接合のメリットと注意点
メリット
- 加工スピードが極めて速く、量産性が高い。
- 溶剤、ねじ、ボルトなどの追加部品や化学薬品が不要。
- 接着面の強度が高い。
- 気密・水密性が確保しやすい。
- 省エネ・低コスト運用が可能。
注意点・課題点
- 素材や形状のマッチングが重要。設計段階から接合可否を検討する必要がある。
- 高精度な機械調整・治具設計が要求される。
- 樹脂なら添加剤成分や充填剤の影響、金属なら酸化膜・油分残渣の影響など品質管理上の注意点がある。
- 昭和的なアナログ現場では「ひずみ/針状割れ」「不良融着」を見落としやすい。
現場でのトラブル事例と対策
現場目線では、「毎日同じ条件でやっているのに、なぜか不良発生率が上がる」といった課題がしばしば顕在化します。
これは素材ロットのばらつき、機械の微細な消耗、現場作業者の治具装填精度といった「人為的かつアナログな要素」が絡むことが多いです。
日々の点検・データ記録をしっかりと行い、現場で異常値が出たタイミングで即座に検証と対策(トラブルシュート)を打つ習慣が極めて大切です。
製造現場での応用事例
自動車分野
自動車業界は、超音波溶着の一大ユーザーです。
バンパー、インパネ、ドアトリムなど大型の樹脂部品接合から、ワイヤーハーネスやバッテリー電極の金属接合まで多様に利用されています。
近年はEV(電気自動車)のバッテリーセル接合など、新たな応用が拡大しています。
家電・電子機器分野
スマートフォンやPCなどの小型筐体の気密接合、フレキ基板やセンサーモジュールの製造でも不可欠な技術です。
携帯電話の防水性能も、超音波接合による一体成型が大きく貢献しています。
医療機器分野
使い捨て注射器や検体容器、さらには血液バッグ等の滅菌・衛生要求のある製品でも、超音波接合は高く評価されています。
加熱・薬剤レスで異物混入リスクを低減できる点が決め手です。
最新動向と業界が直面する課題
“昭和から抜け出せない”現場での変化
日本の製造業はコスト管理や職人の技術で品質を守る「昭和的現場力」が強い一方、徹底したデジタル化や自動化までは踏み切れない現場も多いです。
超音波接合機の最新モデルでは、AI/IoTによる「自動条件設定」や「異常検出」が導入されつつあります。
しかし多くの現場では、材料の取り扱い、日常点検、熟練者からの引き継ぎ口伝など、人の経験によるノウハウ継承が主流です。
そのため「なぜ不良が起こるのか」「どうやって接合条件を最適化すべきか」といった課題は今なお現場に根強く残っています。
バイヤー・サプライヤーから見た超音波技術の選定ポイント
バイヤーとしては、単なるスペックや価格だけでなく、
- 将来的な生産量変動に柔軟に対応できる汎用性・拡張性
- IoT/AIとの連携可否、将来の自動化投資のしやすさ
- 現場作業者のスキルレベルに合った作業しやすさ
- サプライヤーの保守対応・技術サポート体制
こうした現場実態を深掘りした選定が、より重要になっています。
サプライヤー側も、単なる装置提供ではなく、「最適条件の立ち上げサポート」「量産試作段階でのパラメータ管理ノウハウ提供」など、価値提供型の提案が求められます。
超音波技術応用で現場が変わる――実践的アドバイス
現場のラテラルシンキング事例
例えば、自動車部品の生産で「従来はネジ止めだった工程」を、超音波接合へと置き換えることで省工数・不良削減に成功した事例があります。
さらに、狭所や複雑形状で従来治具が使いづらかった場面でも、カスタムホーン開発により接合の自動化・省人化を実現したプロジェクトもあります。
「いま目の前ある課題を、全く異なる視点や異分野技術で解決できないか?」
こうしたラテラルな発想が、現場革新の原動力です。
これからの製造業が求める人材像
超音波技術を実運用できる現場力はもちろん、設計段階から「モノづくり全体」を見通し、最適な工法・装置・パートナーをスピーディに選定できるバイヤー・エンジニアがこれからますます必要になります。
さらに、AIやIoTなど新技術との融合を進め、現場目線、ユーザー目線で「イノベーションの推進役」たることが「選ばれるサプライヤー」「頼られるバイヤー」への近道です。
まとめ――超音波技術を使いこなし次世代の現場を切り拓く
超音波技術は、決して新しいだけの流行り技術ではありません。
昭和から令和へ、現場の課題を解決し続けてきた知恵と工夫の集大成です。
バイヤー、サプライヤー、現場作業者、それぞれが「現場目線で本質を見抜く力」と「変化を楽しむマインド」を持てば、超音波接合技術はますます製造業の競争力を高めていくことでしょう。
立ち止まらず、常に新しい現場課題と向き合い、超音波技術の可能性をともに広げていきましょう。
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