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レーザー切断のケラ幅と公差を理解し後加工の過剰を止める図面ルール

目次
はじめに:製造現場で見落とされがちな“ケラ幅”の意味
製造業の現場では、日々さまざまな材料や形状の部品が加工されています。
その中で、レーザー切断は今や欠かせない加工技術のひとつです。
しかし、いまだ昭和時代から続く図面作法や“いつも通りのやり方”によって、本来不要な後加工や手直しに多くの時間とコストが割かれている現実もあります。
レーザー切断でしばしば話題となる“ケラ幅”と“公差”。
これを正しく理解し、図面や指示に反映することが、工場全体の生産性を劇的に向上させる鍵なのです。
この記事では、実践的な現場目線からケラ幅・公差の基礎と、現代ならではの効率的な図面ルールを解説します。
生産管理・調達担当者・バイヤー・サプライヤー各立場の方にもヒントになる内容です。
レーザー切断の基礎:ケラ幅とは?なぜ無視できないのか?
ケラ幅=切断の“余白”
レーザー切断における“ケラ幅”とは、レーザー光で材料を切断したときに素材から削り取られる部分の幅、いわば「切りしろ」のことです。
一般的には0.1mmから0.5mm程度ですが、材料の厚み・種類・機械性能により幅が異なります。
このケラ幅を図面で見落として寸法を指定してしまうと、切断後の実寸法が要求とズレてしまいます。
たとえば、±0.1mmの精度が求められる部品で、ケラ幅を考慮しないCADデータを使ってしまえば、いくら最新鋭のレーザー装置でもアウトな仕上がりとなるのです。
レーザー切断の特徴と限界
レーザー加工は、高精度・高効率が強みですが、同時に独特な切断面の形状や焼き(熱影響)も発生します。
また、形状によっては“シャープコーナー”や“微細穴”の切断でケラ幅の差が顕著に現れる場面も。
現場では
– 「レーザーなら何でも思い通り切れる」
– 「とりあえず余裕見て仕上げ加工すればいい」
などの“昭和的発想”も根強く残っていますが、これこそがムダな後加工とコストの温床になるのです。
“必要以上の後加工”が現場を蝕む理由
なぜ“仕上げありき”の発想が捨てられないのか
従来、プレスやせん断、溶断などによる加工では“仕上げ面をきちんと出す”ため2次加工が当たり前でした。
その名残で、いまだに
– タップ孔の追加面取り
– 必要以上のバリ取り
– 精度自体は不要な部分への研磨工程
といった“お約束の後加工”が図面や現場指示で自動的に盛り込まれてしまうケースが多くあります。
そして、バイヤー・調達担当者の側も「今までこうだったから」と安易な依頼になりがちです。
その結果、現場では
– 本来は省略できる仕上げ工程で余計な時間がかかる
– 無理に精度を出そうとして部品が高額になる
こうした負のスパイラルが生まれるのです。
“ケラ幅を意識した設計・図面”がもたらす効果
逆に言うと、レーザー切断のケラ幅と公差を前提にした図面・設計があれば、そのまま部品として使える割合は飛躍的に増えます。
実際、ある大手メーカーの現場で
– ケラ幅見込みをCAD上で反映
– 必要公差内に納まるなら仕上げ加工レス化
– 設計部門から現場への“過剰品質”指示の撤廃
を徹底しただけで、“後加工ゼロ”の部品化率が20%アップした例もあります。
現場が得する“新しい図面ルール”の設計方法
1. ケラ幅値の明記と設計への反映
図面の注記や備考欄に、レーザー切断の想定ケラ幅値を明記しましょう。
例:「レーザー切断時、ケラ幅0.2mm相当見込」
また、CADデータにもその数値を織り込み、切断ラインが正しい出来寸法になるよう設計段階で配慮します。
2. “必要十分な”公差指定
ミクロン単位の精度が本当に必要な部位でなければ、公差を下手に厳しく設定するのは逆効果です。
むしろ“±0.2mmで十分”“相手部品との重ね合わせが前提”など設計意図を明記し、現場の仕上げレス化に繋げましょう。
3. 加工工程ごとの“面品質”分類
図面内に「この面はレーザー切断そのまま(仕上げ不要)、この面だけバリ取り」など、具体的に仕上げ指示を分類記載します。
これにより、無駄な全域面取り・全域研磨などの工数を激減させることが可能です。
4. バイヤー・サプライヤー間の“目線共有”を促進
バイヤーや設計者が、サプライヤーの実加工環境を把握し、図面仕様や納入条件を一緒にすり合わせる場を持つべきです。
「この材料で、ここの公差はレーザーそのままでもOK」「バリについては現場基準で」など、現物感覚での共通認識作りが重要です。
図面ルール見直しがもたらす現場の進化
コストダウンだけでなく“現場の余裕”を創出
– 不要な加工が減る→加工リードタイム短縮
– ケラ幅・公差前提の部品化→歩留まり向上
– 図面を見ればバイヤー・調達・現場みんなが納得・理解可能
実際、某工場の調査では、“レーザー加工+仕上げなし”の比率が増えた結果、仕掛品の棚卸資産が15%減り、生産スペースや人員の余裕も生まれました。
属人化と暗黙知の“デジタル化”が進む
「〇〇さんしか知らない」「昔からこのやり方」という慣習を、図面ルールや設計データとして形式知化することも、次世代の製造現場には不可欠です。
AI・IoT時代の“現場カルチャー刷新”にも直結します。
アナログ現場だからこそ実践できる“現場巻き込み型”の工夫
– ケラ幅・公差のサンプル提示会を行い、現物を見ながら“どこまで加工が必要か”体感共有
– 調達バイヤーが現場に足を運び、“本当に必要な品質と納期”をすり合わせ
– 現場オペレーターから「この図面指示だとここはムダな加工になる」というフィードバック制度を構築
こうした「昭和型現場」の長年の経験値を“場の知恵”として活用すれば、むしろアナログ現場の底力が発揮されます。
まとめ:レーザー切断のケラ幅・公差見極めが工場全体の武器に
レーザー切断は、切断だけでなく工場全体の“後始末”をどう最適化するかに関わっています。
今この瞬間も、無意識のうちに“無駄な仕上げ工程”が積み上げられていませんか?
現場目線でケラ幅・公差を捉え直し、実情に沿った図面ルールへ刷新することで、
– 本質的な品質向上
– リードタイム短縮
– コスト削減
– オペレーター・バイヤー間の相互理解深化
まで実現することができます。
昭和から続くアナログ的な現場でこそ、足元の“ケラ幅理解”を武器に、製造業の地平線を切り拓いていきましょう。
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