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非接触給電の原理を理解し自動車分野で活用する応用技術のノウハウ

目次
非接触給電とは何か:その原理を基礎から解説
非接触給電(Wireless Power Transfer, WPT)とは、電線などの物理的な接続を用いずに、電力を遠隔地に伝送する技術です。
すでに身近な例でいうと、スマートフォンのワイヤレス充電器や電動歯ブラシなどがありますが、現在では自動車分野、特に電気自動車(EV)の充電インフラとして非常に注目されています。
非接触給電技術の成り立ちは、電磁誘導や磁界共鳴といった物理現象をベースとしています。
これにより、給電側と受電側が直接触れ合うことなく、安全かつ効率的にエネルギーを伝送できます。
昭和時代から現代にかけて、日本の製造業がたどった「有線から無線」へのシフトの最前線が、この非接触給電技術なのです。
本記事では、非接触給電の仕組みをわかりやすく説明し、それがどのように自動車業界に導入・応用されているのか、また実際の導入現場や生産プロセスの変革においてどのようなノウハウやポイントがあるのか、現場目線で深掘りしていきます。
非接触給電の仕組み:なぜ電気が“飛ばせる”のか
電磁誘導方式
最も広く使われている方式が「電磁誘導方式」です。
この方式では、送電コイルと受電コイルの双方に電磁界を発生させ資格的に結合させます。
コイルに交流電流が流れると、その周囲に磁場が発生します。
この磁場の変化を受電コイルが受け、電流に変換することで電力が伝送されます。
このしくみはトランスフォーマー(変圧器)の原理と同じですが、違いは「空気」などを介して伝送する点です。
高効率化のためには、コイル同士の位置ずれや距離、周波数の最適化が肝となります。
磁界共鳴方式
もう一つの先進的な技術が磁界共鳴方式です。
こちらは送電側と受電側の共振回路を同一周波数に合わせて共鳴させることで、効率良く電力を比較的長距離に伝送できます。
同一面に複数の機器があっても給電できる場合があるため、工場内で複数の無人搬送車(AGV)や台車の同時充電などに応用されています。
なぜ今、製造業とくに自動車業界で注目されるのか?
有線給電の限界と革新性
従来の自動車ラインでは、充電用ケーブルやプラグを使った有線給電が主流でした。
しかし、年々高まる生産効率化と自動化の流れ、さらに人や装置の安全性向上を追い求める流れの中で、有線給電の次の課題が浮き彫りになってきました。
・ケーブルの着脱による工数増加やメンテナンス負荷
・ケーブル自体の破損や劣化によるダウンタイム
・プラグの差し込みミスや異物混入による事故
・ライン全体のクリーン化・見える化の遅延
非接触給電は、これらの問題を根本から覆す可能性を秘めています。
地味に思われるかもしれませんが、昭和的なアナログ工場から脱却するための大きな武器となり得るのです。
電気自動車(EV)充電のイノベーション
自動車業界、とりわけEVの充電インフラでは、利便性・安全性、そして自動運転との連携が求められます。
ケーブルをつなぐというアクションそのものが、自動運転・無人運転の普及とは相性が悪いのです。
・停車と同時に自動で充電が始まる
・駐車位置が多少ずれていても問題なく充電できる
・露天、屋外の厳しい環境下でも安定的に作動
・車体や構内床に埋め込み可能で美観・安全性も確保
これらを実現しうるのが非接触給電です。
すでに世界中の完成車メーカーやサプライヤーで活発な実証実験が進んでいます。
自動車分野への応用事例と実現ノウハウ
生産現場での導入:AGV・自動搬送システムへの適用
工場の自動化において、AGV(Automated Guided Vehicle)は欠かせない存在です。
従来、AGVのバッテリー充電は有線でも手動でも大きな手間でした。
非接触給電を使えば、AGVが決められた停車位置に自動で乗り入れるだけで充電が始まるため、生産ラインの停止時間を大幅に短縮できます。
メンテナンス工数も減り、作業員の誤操作や事故も防げます。
メーカーによっては“走りながら充電する”方式を開発中で、工場全体の省人化に拍車がかかっています。
自動車車両自体への応用:EV用ワイヤレス充電
EVへの非接触給電導入は今最もホットな話題です。
例えば駐車場やガレージの床に設置した送電パッドに車体を駐車するだけで、充電がスタートします。
バイヤーから見れば、従来のスタンド設置やケーブル管理の投資・保守コストを抑制可能です。
一方、サプライヤー側としてはパッドの耐久性や給電効率、電磁波漏洩への対策ノウハウが受注獲得のキーファクターとなります。
導入に際しては「駐車のずれに対する給電正確性」や「異物混入時の安全制御」など、現場感覚で実用性を徹底検証する必要があります。
また、OEM各社が異なる仕様を求める傾向が強いため、汎用性とカスタマイズ性の両立が重要です。
バイヤー・サプライヤーが押さえるべき要素技術
異業種混成の要素技術習得が求められます。
例えば、
・EMC(電磁両立性)対策
・制御通信系との連携技術
・安全認証規格(ISO、IEC規格等)への準拠
・高効率/高出力コイル設計と材料開発
・過酷環境での耐久試験データ
これらはサプライヤーの製品仕様精度や、バイヤーの評価能力として非常に大切です。
業界標準化と日本メーカーの立ち位置
非接触給電技術は世界中で規格化が進行中です。
Qi(チー)規格やSAE J2954規格(EV向けワイヤレス充電)などが存在していますが、日本の自動車OEMや部品メーカーはこれに先んじた独自技術を保有しつつ、グローバル規格策定にも積極的に関与しています。
日本の「ものづくり現場精神」から生まれた高度な品質管理や改善技術が、非接触給電システムの高信頼運用にも生きており、これが今後の日本ブランドがグローバル競争で差別化するポイントです。
現場での課題と今後の展望
給電損失・発熱・安全性の確保
非接触給電においては給電効率(ロスの最小化)が最大の課題です。
昭和の「なんでもOK」な時代と違い、厳密な評価基準が要求され、発熱の抑制や異常発生時の自動停止など、安全性の担保なくしては社内承認されません。
現場ノウハウとしては、「ライン停止時のリスク評価」や「フェールセーフ設計」「誤動作・ノイズ対策」といった“もしも”への備えが重要になってきます。
コストと導入ハードル
「初期投資が高い」「導入先ごとに適合設計が必要」などの課題も存在します。
この点については、部品共通化やパッド設置一体型ラインの標準化、OEMとの仕様すり合わせの効率化がカギです。
アナログからデジタル、さらには“ノンコンタクト”への躍進を支えるのは、現場の改善活動やVE(バリューエンジニアリング)が大きな役割を果たします。
今後の応用分野の拡大:バイヤーとサプライヤーに求められる姿勢
自動車分野以外にも、搬送ラインや医療機器、インフラ分野への応用が急増しています。
バイヤーには既成概念にとらわれない「アウトオブボックス」での評価視点や、ライフサイクルコストの全体最適化視点が必須です。
サプライヤーには「納品して終わり」ではなく、導入後のアフター機能や現場密着の改善力が問われています。
現場主義、現物主義、問題解決型アプローチ——いわば日本製造業のDNAが、非接触給電の発展を後押しするのは間違いありません。
まとめ:現場目線で進化する非接触給電の未来
非接触給電は、単なる配線の省略ではなく、現場・生産性・安全性・自動化すべてを変革する技術です。
アナログで守りの強い業界だからこそ、現場の声や実運用データが今後のイノベーションのカギとなります。
今後、自動車分野や工場の自動化プロジェクトで本技術が果たす役割はますます大きくなります。
バイヤー、サプライヤー双方がこの技術の本質を正しく理解し、現場改善や次世代製造業の競争力強化につなげていくことが、日本の“ものづくり”の真の発展につながるのです。
今こそ昭和から令和への転換点として、非接触給電の応用と現場主導の進化に積極的に取り組みましょう。
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