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検査で拾えない不良が後工程で大事故につながる構造

目次
はじめに:製造業現場に潜む「検査で拾えない不良」
製造現場に長く身を置いていると、検査工程で不良品を発見できず、後工程で大きなトラブルに発展するケースにたびたび遭遇します。
この現象は、製造業に従事する誰もが一度は経験し、多くの現場リーダーや管理職を悩ませてきました。
なぜ、本来“最後の砦”となる検査工程で不良が見逃され、その結果として工程を遡る大事故へと発展してしまうのでしょうか。
本記事では、現場目線に立ち、検査で拾えない不良が後工程でどのような構造的なリスクをもたらすのかを深掘りし、業界に根付いたアナログな思考の弊害や、今後の新しい改善の糸口についても探っていきます。
昭和から続くアナログ業界が抱える「検査の限界」
目視検査の”限界点”
多くの日本の製造現場では、今なお人の目による最終検査(目視検査)に依存しています。
ベテラン作業者の「勘」や「経験」、あるいは「流れ作業」の慣れに頼る部分が多々あります。
しかし、目視検査には見逃しや見落としがどうしても発生します。
特に、不良の頻度が極めて低いレアケースや、微細な変化・予兆については検査でもスルーされてしまう場合が非常に多いのです。
図面・規格に表れない「使われ方や前提」のギャップ
図面や規格で求められる品質要件は一律に設定されます。
しかし、実際には使用される現場や用途、後工程によって「許される不良」と「許されない不良」の線引きは微妙に変化します。
検査基準に合格していても、その後の組み立てや溶接、あるいは最終ユーザーに届いた際に、意外な弱点やトラブルとなって表面化することは珍しくありません。
検査員も気付かない「工程変動リスク」
生産現場では材料ロットの変動や設備の経年劣化、気温・湿度など環境要因でも工程状態が変化します。
この工程変動に気が付かず、不良発生リスクが”隠れたまま”ラインアウトしてしまうケースでは、後工程や最終ユーザーで大規模な不具合・リコールへと繋がるリスクが高まります。
「検査で拾えない不良」が引き起こす大事故の構造
1. 現場での「暗黙知」・「現場都合」が本質的な問題を隠す
製造業の現場には「現場が一番分かっている」「このラインではいつもこうだ」といったローカルルールや慣習が根付いていることが多いです。
これが、「本来見つけるべき異常」が流れてしまう温床となりやすいです。
一見安定しているかに見えるが、根本原因が温存されたまま工程が進みます。
その結果、後工程や顧客で想定外の使用環境下で脆弱性や欠陥が顕在化し、時には人命やブランドを揺るがすような事故に発展します。
2. 「分業構造」による責任の分散と隠れたリスク
調達、製造、検査、出荷まで縦割り・分業が徹底される日本の製造業。
「この工程がOKなら自分の責任は果たした」という意識が、危機の”ほころび”を誰も気づかない温床となっています。
特に後工程で初めて気付かれる「検査で拾えなかった不良」は、責任の所在が曖昧になりがちです。
根本原因の真の所在を突き止めることが後手に回り、同様の事故が繰り返されやすいという負のループに陥ります。
3. 「困難な再現」と「隠れたコスト」
検査でスルーされた不良は、性質上「再現性が低く、再発防止策の構築が困難」です。
後工程や納品後のトラブルでやっと発覚し、現場へ遡って原因を調査しても「必ず再現するわけではない」ため、対策が打ちにくい。
その調査や対策に費やす膨大な時間・コストは間接的な損失(隠れたロス)として積み上がっていきます。
バイヤー・サプライヤー視点:なぜ検査だけで安心できないのか?
バイヤーの本音:「安心・安全」は検査合格=保証ではない
バイヤー、すなわち購入者側に立つと、「出荷前検査でOK」と聞いても、100%安心できるものではありません。
なぜなら、突発的な設備変動や作業者のヒューマンエラー、または検査自体の制度疲労などの多様なリスク要因が常に存在するからです。
大手メーカーやグローバル調達が進めば進むほど、サプライチェーン全体の安定性・一貫性が問われるため、検査の合格だけでは評価が不十分な時代に入っています。
サプライヤーの立場:「本当のバイヤー要求」はどこにある?
サプライヤー側にとっても、「出荷検査合格」と「顧客の求める品質」は必ずしも一致しません。
本当に心掛けるべきなのは、顧客の後工程や用途、最終ユーザーまで理解し、「そのまま問題なく使える」状態にして届けることです。
顕在化しないリスクを自ら見抜き、未然に防ぐ姿勢が信頼に直結します。
現場のラテラルシンキング:抜本的な改善へのヒント
属人化・属人的感覚を可視化する
…職人気質を否定せず、目利きや気付きの「感覚」をデータ化する努力が求められています。
例えば、微細な変色や触感など、ベテランが感知する「違和感」をAI・センシング技術に置き換えていく動きが加速しています。
小さな違いも見逃さない多眼カメラや、振動・音波解析などの自動化技術は、隠れた不良の検出精度を飛躍的に高めます。
工程全体を俯瞰する「シナリオ思考」
工程ごとの直前・直後だけでなく、「どの段階でどんなリスクが残存し得るか」を時系列で整理し、対策する「シナリオ型の生産設計」が重要です。
分業志向から「工程横断的なリスク感度」を養うことが、事故の未然防止に直結します。
後工程はお客様、の原点回帰
昔から言われる「後工程はお客様」の思想は、分業化した現代ゆえにあらためて見直されるべきです。
工程ごとの「自分だけ責任」ではなく、全体を見渡して品質を保証し合う“連携力”が、安全・安心と信頼構築の根源となります。
まとめ:昭和的アナログの落とし穴から抜けるために
「検査で拾えない不良」は、現代の高度なデジタル生産ラインでも、思いがけない形で姿を現します。
昭和から続く分業とアナログ主義、現場任せの感覚に頼った属人化のままでは、大事故・大損失を繰り返すばかりです。
サプライヤーもバイヤーも、「検査工程は最後の砦」と思い込まず、全工程を俯瞰した多角的な視点をもつことが差別化につながります。
現場の微細な“違和感”を新技術とデータで補完し、シナリオ型で全体に責任を持つカルチャーづくりへと地平線を切り拓くべきでしょう。
時代が変わっても「品質は現場がつくる」と言われるように、自分の工程が後工程にどう影響するかを意識して、製造業の真価をともに高めていきたいものです。
この知見が、現役の現場作業員、未来のバイヤー、そしてサプライヤー各位の新たな気付きとなり、日本の製造業がさらに進化する糧になれば幸いです。
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