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品質保証の“想定外”が一番事故を呼ぶ法則

目次
品質保証の“想定外”が一番事故を呼ぶ法則
はじめに:製造現場で繰り返される「想定外」
製造業において、「品質保証」は事業の根幹に関わる極めて重要なプロセスです。
長年製造現場に身を置く中で、幾度となく「想定外」という言葉と向き合ってきました。
この「想定外」は、現場の悲劇のきっかけとなることが多く、場合によっては会社の信用や存続すら脅かします。
なぜ“想定外”が事故を呼び起こしやすいのか。
その原因を掘り下げ、どのように向き合えばよいのかを現場目線で詳しく考察します。
「想定外」の本質とは何か?
“想定外”は、逃げ言葉か現実か
「こんなことは想定していなかった」と言うのは簡単ですが、製造のプロセスでは“想定外”こそが重大事故を誘発します。
現場で起きた多くのトラブルの根本原因をたどると、「設計者や作業者が考えもしなかった」「わかっていたが軽視した」といった、“見て見ぬふり”にたどり着くケースがほとんどです。
背景にある昭和的アナログ文化
昭和から続く製造業のアナログ文化が、“想定外”を生みやすい土壌になることは否定できません。
例えば、「経験と勘」に頼ったライン運用や、紙管理・口頭伝達など伝統的なやり方が、情報の抜け漏れや判断ミスへと繋がります。
現場の“習慣”が、想定外リスクの温床となっているのです。
なぜ「想定外」は防げないのか?
複雑化・多様化するサプライチェーンの罠
グローバル化により、サプライチェーンは複雑化しています。
取引先や調達先が増えることで管理範囲が一気に拡大。
微細なロット差や納期の遅れ、部材の仕様変更など、現地の“空気感”が読みにくくなり、「そんな事態が起こるとは思わなかった」という状況に直面しやすくなっています。
形式的な“想定”の落とし穴
マニュアルや規定を整えると「全てを網羅した」と安心しがちです。
しかし、現場での“運用実態”とマニュアルが乖離したまま進行することも珍しくありません。
チェックリストの“チェック”だけで済ませてしまう形式主義が蔓延すれば、現場固有の“気付き”や“違和感”が埋もれてしまい、「想定外」が発生する温床となります。
“人的要因”というブラックボックス
ヒューマンエラーもまた、“想定外”の主要因です。
特に30年以上のベテラン作業者が多い現場では、「昔からこうだった」「慣れているから大丈夫」といった油断が生じやすい。
その油断や慢心が、重大な異常や不適合の見逃し、または未然防止策の先延ばしにつながります。
品質事故を誘発する“想定外”の具体例
生産現場の混乱:設計変更の伝達漏れ
設計変更情報が工場まで伝わらず、旧仕様の部品がライン投入されて大量不良が発生した。
その裏には、情報伝達の“紙ベース”運用や、明文化されていない「担当者間通しの口約束」など、今も根強く残るアナログな文化が影響しています。
調達部門で起こるサプライヤートラブル
新たなサプライヤーによる試作で“熱処理工程”が不十分だったにも関わらず、「合格」と判断して量産投資を決定した。
サプライヤーとの認識齟齬や、現地チェックの形骸化が原因でした。
調達購買現場の「コスト優先」や「納期至上主義」が、品質保証上の“想定外”事故に直結するのです。
自動化の落とし穴:システムトラブル
工場の自動化が進んだ結果、センサーの誤動作を“自動修正”するプロセスが実際の製品異常を見逃していた。
人が直接「音」「振動」「におい」といった五感で感じてきた異変が、機械任せになることで見逃され、過去にはなかったタイプの事故が発生しています。
“想定外”を“想定内”に変えるための具体策
現場密着型のリスクアセスメントの徹底
書類上やオフィス内でのリスク評価ではなく、現場の“リアル”を徹底的にヒアリングし、抽出されたリスクを具体的な対策に落とし込むことが重要です。
現場で起きている“ちょっとした違和感”や“いつもと違う現象”を可視化する仕組みが不可欠です。
ダブルチェックとクロスファンクショナルな視点
一つの部門・人だけに任せるのではなく、部門横断で複数の目・視点で確認することが有効です。
例えば、購買部門と品証部門が一緒にサプライヤーチェックを行い、それぞれの立場からリスクを洗い出す取り組みは、当たり前ですが「組織を超えた守り」になります。
デジタルツールと現場の融合
紙管理や属人的なノウハウの伝承に頼らず、クラウドベースの品質管理システムやAIによる異常検知など、最新技術を適切に現場へ組み込むことも不可欠です。
ただし、完全自動化ではなく、人間の経験や感覚も同様に“システムへ記録・活用”することで、ヒューマンセンサーの再活用が進みます。
“もしも”の想像力を鍛える訓練
定期的なトラブル事例の共有会や、ワークショップ形式での“もしも会議”を開催し、過去に起こった事故、未然に防げた事例を徹底的に掘り下げましょう。
「この製品が最終的にどう使われるのか?」という“使う側視点”から遡ってリスクを徹底的に洗い出すことも、想定外を減らす王道です。
バイヤー・サプライヤー間での「想定外」対策
バイヤーの本音と課題認識
バイヤーの立場では、コスト・納期だけでなく、「品質保証の手間・情報量」にも目を光らせています。
いくら安価で納期が早くても、品質トラブルの対応や修理対応コスト、リスクプレミアムが跳ね上がれば意味がありません。
「目に見えない事故リスク」をどう管理するかが最大関心事となっており、サプライヤーを選ぶ際は「想定外リスク対応力」を重視する傾向が強まっています。
サプライヤーに求められる行動変革
サプライヤーの立場では、バイヤーがどこまで厳しく品質を見ているか、その基準や背景意図を正しく理解した上で、自社の品質管理体制を公開し、透明性高く改善サイクルを回すことが信頼構築の近道です。
「うちは今まで事故がなかったから大丈夫」と思っているのなら、それが最大のリスク要因となり得ます。
“原因追及”だけでなく、“未然防止提案”という付加価値も強く求められています。
昭和のアナログ業界でも変われる!「想定外」撲滅への地道な努力
トップダウンと現場巻き込みのバランス
経営層が「デジタル化」や「自動化」を推進するだけではなく、現場の「困りごと」「ヒヤリハット」を拾い上げ、新たな仕組みに活かすボトムアップ型の改善も重要です。
トップダウンと現場参加型の双方からのアプローチが、最も効果的に「想定外リスク」を封じ込めます。
“当たり前のレベル”を一段引き上げる
「どこにでもある凡ミス」「諦めてきたクセや習慣」こそが、将来の大事故の芽となります。
毎日の5S活動、KY(危険予知)活動を地道に続け、異常を「異常」と認識できる力を全員で伸ばすことが想定外撲滅には必須となります。
まとめ:想定外は“偶然”ではない、必然である
品質事故における“想定外”とは、言い換えれば「見落とし、油断、形骸化」の連鎖です。
「こんなことは考えていなかった」「見落としてしまった」と言うのは簡単ですが、それらは現場や組織の日々の行動や決断の積み重ねの結果に過ぎません。
製造業がこれからの時代も世界で生き残るためには、現場・調達・品質・自動化の全てのプロセスで“想定外”を“想定内”に変える努力が不可欠。
昭和から続くアナログ業界にこそ、今まさに新しい地平線が求められています。
この“想定外”撲滅への道のりこそ、製造業の未来を切り開く最前線であると私は確信しています。
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