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投稿日:2025年6月25日

人間中心設計プロセスで使いやすい製品を作るユーザビリティ評価手法と実例

人間中心設計プロセスとは何か ― 製造業現場の目線から読み解く

人間中心設計プロセスは、製造業において近年ますます重要視されてきている考え方です。

これは製品やシステムの開発にあたり、「使う人」を設計の中心に据えることで、より使いやすいものを作り出すための手法や考え方を指します。

英語ではHCD(Human Centered Design)やUCD(User Centered Design)とも呼ばれ、国際規格ISO 9241-210でも明文化されています。

「良いものさえ作れば売れる」という昭和的なプロダクトアウト型の発想から、「誰がどう使うのか」を徹底的に考えるマーケットイン、カスタマーインの視点への大転換が求められているのです。

では、なぜ今、製造業で人間中心設計プロセスがここまで注目されるようになったのでしょうか。

それは以下のような現場の大きな課題からきています。

  • 匠の技や現場経験頼みでマニュアル化が不十分、属人化から脱却できない
  • 海外市場や異業種の参入で、「使いづらい=選ばれない」現実が加速
  • IoT化やデジタル化により、現場以外にもユーザー層が拡大中
  • 顧客が求める価値が、“性能”や“品質”だけでなく“体験”へと変化している

これらを踏まえ、人間中心設計プロセスは、設計から製造、出荷後のフィードバックまで一貫して「使う人の視点」を重視することで、競争力のある製品づくりを実現します。

ユーザビリティ評価とは ― 製品を「本当に使いやすく」する検証ステップ

ユーザビリティ評価とは、対象となる製品やシステムが「どれくらい使いやすいか」を客観的に測定・分析する活動のことです。

単に「便利そう」「自分たちの想定した通りに動く」という設計側目線ではなく、「実際に使う現場ユーザー」がどんな体験をしているかを定量・定性で把握します。

世界標準であるISO 9241-11では、ユーザビリティ=「有効さ」「効率」「満足度」の3要素で測ります。

例えば、工場現場で使用する新しい検査装置の場合を考えてみましょう。

– 有効さ……期待した作業結果が、正確に得られたか
– 効率……作業に要した時間や手間は、現場の基準と比べてどうか
– 満足度……使ってみた主観的な感想、ストレスがないか

この3つの軸で評価することで、単なる「動くかどうか」だけでなく、現場に密着したリアルな課題を見える化できます。

代表的なユーザビリティ評価手法 ― 製造業現場で取り入れやすいものとは

ユーザビリティ評価には様々な手法があります。

製造業の現場にフィットしやすいものを中心に、いくつかご紹介します。

1. ユーザビリティテスト

実際のユーザー(例:現場オペレーター、検査員、保全担当など)に、試作品やモックアップ、β版を使ってもらい、その様子を観察・記録する方法です。

作業フローに従って実演してもらい、「どこで迷うか」「エラーが出やすいか」「どんな質問や不満が出るか」などを抽出します。

現場への出張やラインの稼働を中断してもらう負担はありますが、最も信頼できる一次情報を得ることができます。

2. ヒューリスティック評価

ユーザビリティの専門家やベテラン現場技術者が、「良い使い勝手」の原則(ヒューリスティック)にもとづいて対象物を評価します。

現場でありがちな「慣れ」「思い込み」に気づくきっかけとなり、新旧世代の視点のギャップを埋めるのに有効です。

ただし、実ユーザーの生の反応とは差が出ることもあるため、他手法との組み合わせがおすすめです。

3. アンケート・インタビュー調査

新しい導入機器やデジタルツールの試用後、使い勝手について定性的・定量的にフィードバックを回収する伝統的な手法です。

生産性向上や導入効果など、定量的なKPIとセットで継続的にデータを取り、市場投入後の改良サイクルにも活用できます。

この手法は、組織の現状や意識変革を測る「バーメーター」としても利用可能です。

4. タスク分析

作業者が行う一連の手順を観察し、それぞれの工程ごとに負荷やエラー発生状況を分析します。

見落としがちな“小さな手間”や“無意識のムダ作業”を抽出し、設計改善へ結びつけやすいのが特徴です。

これは古くから工程設計や改善で行われてきたIE(インダストリアルエンジニアリング)手法の延長線上にあるため、昭和型製造業の現場にも受け入れられやすいメリットがあります。

ユーザビリティ評価の現場実例 ― 製造工場の「使いにくい」を「使いやすい」に変える

現実の工場現場では、ユーザビリティ評価がどのように実践されているのでしょうか。

いくつかの代表的なケースをご紹介します。

事例1:新規導入の検査装置でのユーザビリティテスト

大手自動車部品メーカーでは、工程内検査の自動化装置を現場導入する前に、オペレーター数名によるユーザビリティテストを実施しました。

– スタートアップ手順で必ずミスが多発する操作が発覚
– 操作パネルの表記が曖昧で、現場用語とズレていた
– 小柄な女性作業者からは「画面まで手が届きづらい」「足場が高すぎて危険」といったフィードバック

この結果、タッチパネル表記やボタン配置の見直し、現場の多様な作業者体型に合わせた設計変更を実施。

高額な自動化投資で“使いにくい”装置を現場から忌避され、稼働率が上がらない、という投資失敗を防ぐ決め手となりました。

事例2:現場アンケートによる手順書のデジタル化改善

老舗食品メーカーの全国複数工場で、設備点検手順のデジタル化プロジェクトを推進した際、アンケートとグループインタビューを使ってユーザビリティ評価を実施。

– 紙の手順書と比べて、デジタル版では「どこの作業手順か分かりづらい」との不満
– タブレット操作に不慣れなベテラン層から「見辛い」「スクロールしすぎて手順を飛ばしてしまう」とフェードバック
– フォントサイズや画面切替、現場配布マニュアルの一致性を強く要求

現場の意見を迅速に反映させたことで、「現場に根付く」デジタル化へと転換できた成功事例です。

ユーザビリティ評価のポイント ― 変化を恐れない「現場ファースト」の文化を作るには

どのような良い評価手法や制度・ITツールを導入しても、最終的に「現場が忖度なく意見を出せる風土」が大前提となります。

現場第一主義を掲げていても、実際には「設計者の思い込み」や「上層部の意図」に現場が合わせさせられてしまう例もまだ多く見受けられます。

真に使いやすい製品・システムを形にするためには、以下のポイントが不可欠です。

  • 現場知見者も評価プロセスに必ず加える(管理職や外部だけで決めない)
  • 失敗事例やミスを“個人よりプロセスの問題”として分析する文化を作る
  • 定量評価と定性評価(現場の声)を両立し、バイアスを避ける
  • 製品・工程のライフサイクル全体で継続的なユーザビリティ評価を実施
  • 「昭和的な美学」に固執せず、新しい技術・意見にもオープンであること

特に属人的な現場知見を「公式言語化」して、組織全体で共有・改善のサイクルに取り込むことが、昭和から令和の現場へとアップデートするカギとなります。

サプライヤー・バイヤー視点でのユーザビリティ評価の意義

製造業の購買や調達、サプライヤー協力も人間中心設計プロセスから新しい姿へと変化しています。

  • バイヤー側は、最終的なユーザー(現場オペレーターやカスタマーサポート)視点で製品を選定・評価できることが重要
  • サプライヤー側は「現場目線でのユーザビリティ評価」を製品開発や改善提案の武器にできる

たとえばリードタイム短縮やコストダウンの提案以上に、「現場で“誰でも失敗せずに使える”」、「トレーニング不要で稼働できる」などのユーザビリティ訴求は大きな差別化要因となっています。

工場への装置納入前に「現場ユーザーによるテスト機会の提供」や、そのフィードバックを反映した「現場改善型バージョン提案」が歓迎される時代です。

まとめ ― 人間中心設計プロセスで現場に根ざした「使いやすい製品」を作る

人間中心設計プロセスとユーザビリティ評価は、単なる流行語ではなく、「現場で本当に使われる」「ヒューマンエラーや事故を未然に防ぐ」ための実践知です。

昭和時代から日本の製造業を支えた「現場第一主義」は、デジタル化・グローバル化時代にこそ、人間中心設計プロセスの中で進化し続けるべきものです。

本記事が、製造業の現場で日々戦う方や、バイヤー・サプライヤーの皆さまが“使いやすい製品づくり”に一歩踏み出すヒントとなれば幸いです。

人が主役のものづくりで、現場の未来をともに切り拓きましょう。

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