月間83,046名の
製造業ご担当者様が閲覧しています*

*2025年5月31日現在のGoogle Analyticsのデータより

投稿日:2025年6月10日

ユーザビリティ評価ユーザー調査手法の基礎とそのノウハウ応用事例

はじめに:製造業におけるユーザビリティ評価の重要性

現在、製造業はグローバル競争や市場の多様化など、大きな変化のうねりに直面しています。

この中で、品質やコストはもちろん、製品やサービスの「使いやすさ」、すなわちユーザビリティの重要性が、かつてなく高まっています。

特に、調達購買や生産、品質管理の現場では、ユーザー視点に立った仕組みや道具立ての開発が、現場力を大きく左右します。

この記事では、製造業現場で培った知識と実体験をもとに、ユーザビリティ評価とユーザー調査の基礎、そして実践的なノウハウや応用事例を、業界特有の事情も交えながら詳しく解説します。

ユーザビリティとは何か?現場目線での定義

ユーザビリティとは、製品やシステム、サービスが「どれだけ使いやすいか」「目的を効率的かつ満足度高く達成できるか」を示す指標です。

これは、単純な「操作の簡便さ」だけでなく、エラーの発生しにくさ、学習のしやすさ、ストレスフリーな体験など、現場で働く人々が安心して作業を進められる状態を指します。

特に昭和型アナログ文化が根強い製造現場では、「使いにくさ」の声が現場に埋もれやすい傾向があります。

この点の課題を浮き彫りにし、改善につなげるためにユーザビリティ評価やユーザー調査は欠かせません。

現場から見た“使いにくさ”の実例

例えば、購買管理システムの導入後に「画面が複雑すぎて発注ミスが減らない」「帳票への転記作業が手間」「バーコードリーダーの反応が鈍い」といった現場の声が頻出するのは、ユーザビリティ評価が不十分だった典型例です。

こうした“生の声”を体系的に分析し、改善アクションへつなげるのがユーザビリティ評価の本質的な役割です。

製造業におけるユーザビリティ評価・ユーザー調査手法の基礎

ユーザビリティ評価にはいくつかの代表的手法が存在します。

ここでは、製造業ならではの現場目線や環境も踏まえて、主要な手法と実施のポイントをご紹介します。

観察調査(フィールドワーク)

“百聞は一見に如かず”という言葉通り、現場でのユーザーの動き・作業手順・つまずきポイントなどを実際に観察します。

工場現場では、熟練工と新人で作業手法が異なる場合が多く、両方の視点で観察することが極めて有効です。

観察では、“なぜそこで手が止まるのか”“手順書ではなく、なぜメモを読んでいるのか”といった現象を掘り下げてヒアリングも組み合わせます。

インタビューとユーザーアンケート

現場担当者・システム利用者の間でヒアリングやアンケートを実施し、使い勝手や課題・要望を収集します。

これらは数値や文章だけでなく「作業中の心理的ハードル」や「そもそも声に出せなかった困りごと」も含めて深掘りするのがコツです。

とくに調達購買やサプライチェーン管理の分野では、「外部サプライヤーから見て使いやすいか」にも着目することで、より幅広い改善点を発見できます。

タスク分析とエラーログ解析

実際にシステムやツールを使ってもらい、その一連の工程(タスク)を分解して分析する手法がタスク分析です。

加えて、エラーやトラブルの発生ログ・事象記録を体系的に集めて解析することで、定量的な裏付けを得ることができます。

この組み合わせは「感覚」だけでなく「事実」に基づく改善策の策定に有効です。

ペーパープロトタイピング・ラピッドプロトタイプ

大掛かりなシステム開発前でも、簡単な紙の設計図や模擬画面(プロトタイピング)を使って、現場メンバーに実際の操作をシミュレーションしてもらう手法です。

アナログ文化が色濃く残る工場現場では、こうしたシンプルな方法が特に効果的で、「机上の空論」を防ぐことができます。

ユーザビリティ評価が現場で失敗しやすい理由と乗り越え方

現場でのユーザビリティ評価が形骸化したり、改善に結び付かない理由にはいくつかのパターンがあります。

「声なき声」が拾いきれない

現場の作業者は、問題を指摘して不利益を被った経験や、忙しさから率直な意見を遠慮しがちです。

特に日本の製造業では“コミュニケーションの壁”が目立ちます。

ポイントは、信頼関係の構築と「小さな気付き」に寄り添う姿勢です。

直接ヒアリングを行い「どんな些細な困りごとでも歓迎」という雰囲気づくりが、現場目線のユーザビリティを引き出します。

形式的な調査・評価に流れる

ユーザビリティ評価が“ISOのためだけ”や“監査対策”だけに形骸化すると、現場改善には結びつきません。

大切なのは現場代表を評価チームに参加させ、当事者視点での評価を実践することです。

現場からのフィードバックを、設計・開発・管理部門に速やかにフィードバックループさせる仕組みも重要です。

現場を動かす“こだわり”の伝承が抜け落ちる

現場には、多くの“暗黙知”や“べからず集”がノウハウとして蓄積されている一方、それを新たな仕組みに反映できないまま古い慣習が残り続ける傾向があります。

ユーザビリティを高める最大のポイントは、現場ベテランの微妙なニュアンスや体感的な不満点を、視覚化・言語化して仕組みに落とし込むことです。

ユーザビリティ評価・ユーザー調査の応用事例:実践的シナリオ

以下に、著者が実際に経験した、または業界で評価の高い応用事例をご紹介します。

事例1:調達業務システムの刷新 ~現場ベテランの声を反映~

ある中堅製造業では、調達システムを一新する際、設計段階から調達部門のベテラン社員を巻き込んだワークショップ形式を採用しました。

各機能ごとに“使い勝手の良いシナリオ案”を持ち寄り、プロトタイプ段階で何度も仮運用と改善を繰り返しました。

結果として、従来比40%の作業時間短縮、新人教育期間の半減、さらに「発注ミス件数半減」という効果につながりました。

事例2:工場自動化機器のUI改善 ~外部サプライヤーとの共創~

生産現場向けの自動化機器を導入するプロジェクトで、ユーザー調査を行ったところ、外部サプライヤー(メンテナンス担当者)が「警告表示が多すぎて本来注視すべき異常が埋もれる」という課題が浮上しました。

そこで、サプライヤーも含めたプロジェクトチームを組成し、「一目でわかる色分け」「履歴ログと照合できるお知らせ一覧」など改善案をUIに反映。

サプライヤーからも「トラブル原因の特定時間が短縮し、誤操作が激減した」と評価され、現場とも強い信頼関係を築きました。

事例3:品質管理帳票のデジタル化 ~アナログ現場の“腹落ち”を優先に~

紙のチェックリストで品質管理を行っていたある工場では、急速なデジタル化の波に押されて一気にWeb管理システムの導入を決定。

しかし、最初は現場に戸惑いが広がりました。

そこで、ユーザビリティ調査として“徹底観察”+“ヒアリング”+“ペーパープロトタイプ”の徹底反復を複数回実施。

「紙の気軽さ」「手書きの自由度」、こうしたアナログ文化が根付く現場特有のメリットをデジタルにも再現できるよう「手書き入力」「押印欄」も敢えてシステム側に実装した結果、「紙からの移行」が現場で一気に進み、紙の業務が6ヶ月で90%削減した成功事例があります。

今後の展望:デジタル×昭和の現場力で製造業ユーザビリティは進化する

製造業全体にDX(デジタルトランスフォーメーション)の波が押し寄せ、現場にもAIやIoT、RPAなどのITソリューションが続々登場しています。

一方で、昭和から続く“現場の知恵と工夫”や「納得感を大事にする文化」も、ものづくりの底力を支えています。

ユーザビリティ評価・ユーザー調査は、その両輪をつなぐ橋渡し役と言える存在です。

今後、バイヤーやサプライヤーを志す方々、また現場を改善したいすべての製造業関係者にとって、ユーザビリティを高める取り組みは必須となります。

まとめ:ユーザビリティは製造業の“現場力”を最大化する武器

ユーザビリティ評価やユーザー調査は、単なる「使いやすさ確認」の側面だけでなく、現場と設計・管理部門の意見をつなぎ、アナログ・デジタル両面の改善を加速させる強力な手法です。

現場での小さな気付き、ユーザー視点での課題抽出、その改善による“現場力”の底上げ。

バイヤーを目指す方は「サプライヤーや現場担当者と本音で語れるか」、サプライヤーは「バイヤーが真に何を求めているか」、そこに“ユーザビリティ思考”を乗せていけば、製造業は今よりずっと働きやすく、持続的に発展していくことでしょう。

ユーザビリティ評価を、ぜひ皆さんの現場改革に活用してみてください。

資料ダウンロード

QCD管理受発注クラウド「newji」は、受発注部門で必要なQCD管理全てを備えた、現場特化型兼クラウド型の今世紀最高の受発注管理システムとなります。

ユーザー登録

受発注業務の効率化だけでなく、システムを導入することで、コスト削減や製品・資材のステータス可視化のほか、属人化していた受発注情報の共有化による内部不正防止や統制にも役立ちます。

NEWJI DX

製造業に特化したデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指す請負開発型のコンサルティングサービスです。AI、iPaaS、および先端の技術を駆使して、製造プロセスの効率化、業務効率化、チームワーク強化、コスト削減、品質向上を実現します。このサービスは、製造業の課題を深く理解し、それに対する最適なデジタルソリューションを提供することで、企業が持続的な成長とイノベーションを達成できるようサポートします。

製造業ニュース解説

製造業、主に購買・調達部門にお勤めの方々に向けた情報を配信しております。
新任の方やベテランの方、管理職を対象とした幅広いコンテンツをご用意しております。

お問い合わせ

コストダウンが利益に直結する術だと理解していても、なかなか前に進めることができない状況。そんな時は、newjiのコストダウン自動化機能で大きく利益貢献しよう!
(β版非公開)

You cannot copy content of this page