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機械における振動トラブルと具体的な対策・改善事例

目次
はじめに:製造現場における振動トラブルの重要性
機械が振動することは、製造現場においてよくある現象です。
しかし、単純な「振動」と軽視していると、思わぬ生産トラブルやコスト増、品質劣化を招く可能性があります。
昭和時代から令和に至るまで、多くの現場ではアナログな手法で振動への対応を行ってきました。
しかし、昨今ではIoTや自動化技術を活用した新たなアプローチも登場しています。
本記事では、20年以上の現場経験を踏まえ、振動トラブルの発生要因と、その具体的な対策事例を実体験も交えながら体系的に解説します。
調達購買、生産管理、サプライヤーといった各立場からの視点も盛り込んでいますので、自社の工程改善やトラブルの未然防止に役立ててください。
機械の振動トラブルはなぜ起こるのか?
1. 振動の発生メカニズム
機械は動くことでエネルギーを伝達、消費します。
その過程で、「アンバランス」「摩耗」「ゆるみ」「軸ずれ」など、さまざまな要因によって物理的な振動が発生します。
たとえば、モーターの回転軸がわずかでも曲がっていると、遠心力の影響で周期的な振動が発生します。
ギアやベアリングの摩耗、ベルトの伸びなども主要な振動源となります。
2. 現場でよくある振動トラブル
私の経験上、次のようなトラブルが頻繁に発生しています。
– 生産ラインの搬送ローラーが異音とともに異常振動
– ポンプやコンプレッサーの台座が振動してボルトが緩む
– 加工機の振動による製品不良や精度低下
– 振動が元凶の不具合が外注サプライヤーの品質問題に発展
これらのトラブルは、一見すると発見が遅れがちですが、長期的には設備の故障や突発的なライン停止に繋がる深刻なリスクです。
振動トラブルの原因究明:現場の「三現主義」で切り込む
振動対策の基本は「現場(現物)で、現実を見て、現状を把握する」ことに尽きます。
バイヤーや調達担当であっても、実際に現場に足を運ぶことを推奨します。
現場観察のポイント
– 振動の発生場所、タイミング、周期
– 振動と同期して発生する異音や温度上昇
– ボルトやナットの緩み、割れ、外観異常
– 設備保全履歴や過去修理箇所の特定
現場での観察結果を基に、「何が、いつ、どうして振動を起こしているのか」を特定することが改善活動の第一歩です。
測定機器の活用
アナログな現場でも活躍するのが、工業用の振動計です。
最近は、工事現場で使えるポータブルタイプや、定点設置型のIoT振動センサまで多様化しています。
データロガーで振動波形や周波数解析を行うことで、「どの回転数・負荷領域で異常が起きているか」を数値で明確にできます。
振動トラブルの具体的な対策方法
1. 部品の交換とメンテナンス
最も基本的な対策が、摩耗・変形した部品の交換および定期的なメンテナンスです。
– ベアリング交換
– シャフトの芯出し、バランス取り
– ナット・ボルトの再締結
– 搬送用ベルトの適正張力チェック
アナログ管理の多い業界では、メンテナンスが形骸化しがちですが、定期チェックの徹底がトラブル抑止に直結します。
2. 構造の見直し・設計改善
機械本体や台座の構造が振動を増幅しやすい場合、設計そのものを再考することも有効です。
– 台座や架台の補強、アンカーボルト増し締め
– 振動吸収ゴムやダンパーの設置
– 重心バランスの調整や配線ルートの見直し
現場視点では、これに伴う設備停止やコスト増を懸念しがちですが、中長期的には歩留まり改善やトラブル減少につながります。
3. 予知保全とIoT活用
最近注目を集めているのが、設備の振動データをIoTセンサーで常時監視し、「振動の変化から故障予兆を事前に察知する」という方法です。
– 汎用設備への無線振動センサー装着
– AI解析による異常予兆の自動通知
– モバイル端末でのリアルタイム監視
現場に馴染みやすいのは、後付けの小型センサーや、簡易レポート機能付きのソリューションです。
難しく考えず、まずは1台の重要設備から導入するのがおすすめです。
改善事例に学ぶ:失敗と成功のリアルストーリー
事例1:搬送ラインの異常振動でベアリング焼き付き
食品工場の搬送ローラーで「定期的な異音とガタつき」が報告されました。
従来は音が大きくなってからベアリングを交換していたため、突然のライン停止が頻発。
そこで、ローラー1本ごとの振動を計測、振動値のしきい値を設けることで、「異常兆候が出た時点で計画交換」へ切り替えました。
結果、突発停止はゼロに。
工数も20%削減でき、計画的なメンテナンス移行の効果が現れました。
事例2:ポンプ台座のボルト緩み→大型ナットの緩み止め化
化学工場のポンプ台座が、半年サイクルでボルト緩みによる振動増大を引き起こしていました。
当初は通常の「増し締め」対応だけでしたが、専門技術者と協議し、ナットに緩み止めパーツを追加。
さらに定期的なトルクチェックポイントを現場点検に組み込みました。
年間停止回数は従来5回から1回に大幅減。
バイヤーからも「部品コストは上昇したが、トータルコストと信頼性が改善」との評価をもらいました。
事例3:外注サプライヤー製品の精度不良にIoT振動監視導入
サプライヤーが納入した加工品に周期的な精度不良が発生。
現場検証で、加工機械の高速運転時にだけ異常振動が発生していることを突き止めました。
本社主導でサプライヤー工程にIoT振動センサーを導入、加工時の振動データを逐次可視化。
トラブルの「真の要因」が共有され、サプライヤーも主体的な設備保全・修理へ乗り出すきっかけとなりました。
振動トラブル対策のポイント:バイヤーとサプライヤーの連携が不可欠
現場経験から痛感するのは、振動トラブルを「現場任せ」「サプライヤー任せ」にしていると根本的な解決には至らないという点です。
バイヤー・調達担当がやるべきこと
– サプライヤーの現場を見て一次情報を吸い上げる
– 振動関連の異常現象を「見える化」する
– 設備保全体制や予算化の仕組みを検討する
時には「多少コストが掛かっても品質・安定稼働を優先してほしい」と経営層に掛け合う役割も重要です。
サプライヤーの視点
– バイヤーが何に困っているのか、現場で一緒に確認する
– 工場のアナログ習慣から抜け出し、新しい改善提案を積極的に出す
– 小規模設備でもIoTやエビデンス取得を試みる
外部からの新しい視点が、「当たり前の中のムダやリスク」を発見するきっかけになります。
まとめ:昭和的アナログ現場からの進化を目指して
機械の振動トラブルは、「ちょっと気になるけど忙しくて後回し」にされがちです。
しかし、現代のグローバルなモノづくり現場では「設備トラブルの未然防止と、その成果の見える化」が競争の大きなカギとなります。
アナログな手法の良さを生かしつつ、IoT時代の新しい振動対策や管理体制を“現場の納得感”とともに導入する。
これが、真の現場力向上と、強い製造業の持続的発展に欠かせないポイントです。
ぜひ、自社の設備管理や外部サプライヤー選定の現場で、この記事で紹介した考え方や具体例をヒントとしてご活用いただければ幸いです。
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