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投稿日:2026年1月19日

IEC 61000が求めるEMC対策とは何か

はじめに – 製造業にとってのEMC対策の重要性

近年、製品や機器が高度に電子化・デジタル化される中で、EMC(Electromagnetic Compatibility:電磁両立性)対策の重要性がますます高まっています。

特に自動車、工作機械、産業機器、家電など、多数の電子部品を組み込む製造業では、EMC基準への適合が市場参入の前提条件となることがほとんどです。

その基準の中でも、IEC 61000は世界的に認知度が高く、多くのグローバルメーカーおよびサプライヤーで採用されています。

本記事では、IEC 61000に基づくEMC対策とは何か、そしてその実践的なポイントと現場目線の課題、最新動向までを掘り下げて解説します。

IEC 61000とは何か – EMCの国際的な基準

IEC 61000の概要

IEC 61000は、国際電気標準会議(IEC)が制定したEMCに関する国際規格です。

この規格は主に、電子・電気機器が外部からの電磁的な妨害を受けにくいこと(イミュニティ)、および逆に周囲へ電磁的な障害を発生させないこと(エミッション)の2つの観点から要件を定めています。

特に工場の組立ラインや自動化装置、計測制御機器など、多岐にわたる産業分野でIEC 61000への準拠が求められており、グローバル調達やバイヤーとのやりとりでも欠かせない基準となっています。

各パートの構成

IEC 61000はパートごとに、イミュニティ試験(静電気、ファストトランジェント、サージ、電圧ディップなど)、エミッション試験(伝導、輻射)、EMCマネジメント、計測方法など、細分化された規格群として構成されています。

現場でよく耳にする「IEC 61000-4-2」は静電気放電イミュニティ試験、「IEC 61000-4-4」はファストトランジェント/バーストイミュニティ試験、という具合に用途別で明示されている点も特徴です。

なぜIEC 61000が重要なのか – グローバル市場の要求

取引条件と調達バイヤーの視点

グローバルな調達バイヤーや欧米企業との取引では、IEC 61000準拠が必須要件となるケースが多々あります。

この理由は、各国・各業界での法規制や、事故・クレーム時のリスク管理において、EMC基準への適合が最も汎用的な安全担保手段だからです。

従って、サプライヤーの立場でバイヤー視点を理解するには、「IEC 61000に合格している製品かどうか」を最初に問われること、そのための試験体制や設計能力が問われることを強く認識すべきです。

顧客・ユーザーにも直結する品質要素

EMC対策が不十分な製品は、ノイズによる誤動作・通信エラー、計測ミス、最悪の場合は周囲機器の故障や火災という重大事故につながります。

したがってバイヤーにとって、製品の信頼性・ユーザー安全保証の観点からも、IEC 61000は避けて通れない品質要素です。

IEC 61000が求めるEMC対策 – 現場で必要な基本動作

1. 設計段階でのEMC考慮

EMC対策で最も基本となるのは、設計段階でのノイズ経路の排除です。

現場感覚で言えば、「あとから部品フィルターや金属シールドを追加する」よりも、「初めからノイズを出しにくい/受けにくい回路レイアウトにする」ことが抜群に有効です。

配線取り回し、プリント基板のグラウンド設計、機構のアース処理、ケーブル・コネクター選定、不要輻射の抑制部品配置など、“昭和の現場叩き上げ”でも重視していた基本が、今もIEで求められている王道です。

2. EMC試験の現場実施

IEC 61000規格への適合を証明するためには、実際の製品で「規格に従ったEMC試験」を受ける必要があります。

現場でよくあるのは、最初の設計サンプル品がEMC試験に一発合格せず、何度も対策・再試験を繰り返してしまうパターンです。

大手メーカーでは早い段階から“擬似環境”でのノイズチェック治具やプリEMC評価を導入することで、「設計→試作→改善」の無駄なループを短縮しています。

3. 工場・量産現場の管理体制

EMC対策は設計部門の専任業務と思われがちですが、実は量産立ち上げや保守時の現場管理も非常に重要です。

たとえば、量産中の部品仕様変更やサプライヤーチェンジがEMC特性に影響しやすく、「過去に試験パスしていたのに、現行ロットで不合格」ということが生じる場合もあります。

このような“現場トラブル”を未然に防ぐために、「試作品・量産品での継続的なEMC再確認や抜き取り試験」「サプライヤーマネジメント」といったプログラム化が現場では有効です。

アナログ文化からの脱却とEMC対策の実務

なぜ日本の製造業はアナログ志向になりやすいのか

日本の“昭和的ものづくり”では、「職人技」「現場の勘」「手作業での調整」などのアナログ文化が強く残っています。

EMC対策に関しても、いまだに「リード線にフェライトコアを巻く」「ケースをアルミホイルで包む」という応急処置的な対策に頼る現場も少なくありません。

しかし、IEC 61000の試験は厳密かつ再現性が求められるため、「勘」や「経験値」に頼るだけではグローバル水準の品質保証には辿り着きません。

デジタル設計・シミュレーションの導入

EMC課題をデジタルで“見える化”するために、設計段階でのEMCシミュレーションソフトウェア、回路エミュレーター、ノイズスペクトラム解析などのITツール活用が普及しつつあります。

これにより、設計初期に“ノイズ源”や“伝搬経路”を定量的に把握し、設計修正コスト、量産トラブル、出荷後クレームの発生を大幅に抑えることが可能となっています。

調達・バイヤー、サプライヤー間で知っておきたいEMCの実践ポイント

バイヤー視点でのサプライヤー評価基準

調達やバイヤーの立場では、単に「EMC試験合格証」の有無だけでなく、「どのような設計プロセスと工程管理でEMC品質を保っているか」「部品変更時の再評価プロセスは組まれているか」という“体制”が重視されます。

なぜなら、目に見える試験結果は一過性でも、日々の現場改善や設計教育、認証取得フローがしっかりしていないと、再発やロットバラツキなど後工程で必ず問題化するからです。

サプライヤー視点で理解すべきEMCリスク

サプライヤーの立場では、バイヤーが「なぜIEC 61000まで求めるのか」を理解し、単なる“規格適合”ではなく「トータル品質」としてプロセスに組み込むことが大切です。

また、EMC改善提案・事例共有・共同開発体制の構築などによって、バイヤーからの信頼を獲得し、相互に“品質向上パートナー”となる姿勢が現場での新たな価値創出につながります。

アナログ×デジタルのハイブリッド戦略

現場の熟練ノウハウ(アナログ)と、設計段階の解析や自動化ツール(デジタル)を組み合わせて最適解を探ることが、昭和から令和への製造業発展のカギです。

いわゆる「手当たり次第の検証」「出荷段階での付け焼き刃」に頼るのではなく、組織全体でPDCAを回す仕組みへ移行することで、サプライチェーン全体の競争力も飛躍的に高まります。

最新動向 – IoT・5G・自動化時代におけるEMC対応強化

ここ数年でIoT機器、5G通信、自動化ロボット、EV車両など、従来より高周波帯・高密度実装の電子機器が工場現場に急増しています。

このためIEC 61000にも新たな要求項目が追加され、「周辺インフラや他機器との共生」および「ソフトウェア制御系への影響」など、EMC対策の守備範囲が広がり続けています。

現場でも、EMCスペシャリストの社内育成、外部ラボや認証機関との連携強化が必須となりつつあります。

まとめ – 製造業現場でのIEC 61000対応の本質とは

IEC 61000が求めるEMC対策は、単なる「規格適合チェック」ではありません。

設計から量産、調達・バイヤー取引、現場改善まで、全ての製造プロセスで“EMC目線”を常に組み込むことが、これからの強いメーカーの条件です。

アナログ現場の叡智を活かしつつ、最新のデジタルツールと成果主義的な体制づくりを推進し、全員がEMC品質向上の担い手となる。

バイヤーとしてもサプライヤーとしても、IEC 61000を「他社への差別化武器」に変えることが、今後の製造業サバイバルの分かれ目になるでしょう。

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