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近接センサー部材が鍛造環境で壊れやすい理由

目次
はじめに――なぜ「近接センサー」は鍛造現場で苦戦するのか
製造業の現場、とりわけ鍛造工程では、自動化や品質管理においてセンサー類の役割が増しています。
しかし中でも「近接センサー」は、現場改善や自動化プロジェクトで挙がる“困ったちゃん”であり、“消耗品扱い”の典型とも言える存在です。
この記事では、なぜ近接センサーが鍛造現場で破損しやすいのか、その現場目線ならではの本当の理由を深掘りします。
さらにバイヤーやサプライヤーの立場から意識すべきことも具体的に紹介。
アナログとデジタル、昭和の知恵と令和のテクノロジーの狭間で生きる全ての製造業従事者に向けた、リアリティ溢れる内容です。
近接センサーの基本構造と“理想的な”使い方
近接センサーとは?
近接センサーとは、物体が一定距離まで近づいたことを非接触で検知する電子部品です。
誘導型、静電容量型、磁気型などがありますが、鍛造工程で主に使われるのは《誘導型近接センサー》です。
鉄やステンレスなどの金属ワークが機械工程内の所定位置にあるかを検出するのに利用されます。
理想と現実のギャップ
メーカーのカタログやデータシートを眺めると、「防塵」「防水」「耐ノイズ」といった頼もしい表記が並びます。
しかしプレス・溶接・鍛造のようなハードな現場で、そうした“理想値”がそのまま当てはまることはまずありません。
多くの現場担当者が認識しているように、メーカーの想定する“理想的な使い方”は、生産現場の現実と大きなギャップがあるのです。
鍛造現場特有の環境――強烈な三要素
高温・スパッタ・振動の三重苦
鍛造現場は、一般的な工場と比べても特にセンサーにとって過酷な環境です。
主な理由は次の三つです。
- 炉や加熱ワークに起因する《高温》環境
- 加熱金属や潤滑剤、または打撃による《スパッタ(飛散物)》の多発
- 大型プレスやハンマー機構から発生する《激しい振動や衝撃》
高温は電子部品の絶対寿命を縮めます。
スパッタや油煙によりセンサー検知面が被膜されれば “検知精度” が劣化し、最悪回路がショートすることも。
振動は内部の半田や基板部品の結合を緩め、断線や誤作動につながります。
現実的なメンテナンスサイクル
現場では「メーカー仕様上、防塵・耐熱」表記を信じて導入しても、ひどいと数週間で故障します。
多くの工場では、定期点検サイクルを設けて“壊れる前提で交換”しています。
つまり近接センサーは完全な消耗品。
この文化が“割り切った運用”と“属人化”を助長し、根本対策から遠ざかってしまう一因になっています。
なぜ壊れるのか?本当の原因を現場視点で解き明かす
要因1:部材レベルでの耐熱限界
近接センサーの多くは基板樹脂、シール材、コイル、ICなど数多の部品から成り立っています。
特に家庭用や事務機器とは異なり、「鍛造対応」の部品は価格も高騰しがちです。
また、筐体が金属製の場合でも“内部の配線やはんだ部の耐熱性”は構造によって大きく異なります。
表面温度が一時的に150℃を超えるような工程では、“耐熱グレード”を謳っていてもあっけなく劣化します。
要因2:スパッタや油・鉄粉による誘導異常
鉄粉や潤滑剤にまみれた現場では、検知面に“誘導ロス”が発生します。
センサー表面が被膜やスパッタで覆われ、正常な磁界を発生できず、ついには「ONしっぱなし」「OFFしっぱなし」の誤作動となるのです。
この現象は、たとえ外観がきれいでも内部では進行しているケースがあります。
要因3:強振動・衝撃による故障のメカニズム
鍛造現場では、打撃機構の起動・停止の際に激烈な振動が生まれます。
この振動エネルギーが近接センサー内部に蓄積すると、コイルやはんだ部、ICへの微細な“クラック(亀裂)”が発生します。
最初は“たまに誤作動して自己復帰”するだけでも、繰り返しで永久ショート・断線を引き起こすのです。
アナログ文化が根強い現場――昭和の知恵は必須か?
なぜ“完全自動化”は根付かないのか
鍛造現場の平均年齢は依然として高めで、設備も昭和や平成初頭のものが多く稼働しています。
機械本体の更新サイクルが長い分、センサーだけ“最新鋭”にするのは難易度が高いのが実状です。
現場では「外部センサーが壊れるなら、手元で音や感覚で判断しろ」「困ったら電線たぐって直接センサー部だけ替える」。
こうした伝統的なメンテナンス技術や“冗長性のある仕組み”が根強く残ります。
安易な交換文化の落とし穴
一定の定期交換は現場の知恵ともいえる一方、「どうせ壊れるもの」という思い込みが、本質的な改善意欲を減退させる場合があります。
コストダウン要請で「ノーブランド品」や「偽物部材」に切り替えれば、交換頻度やトラブルによる“隠れコスト”が急増し、結果的に損をする場合も少なくありません。
サプライヤー・バイヤーとも、“手間コスト”を含めて総合コストを意識する視点が重要です。
バイヤー・サプライヤーが考えるべき観点
バイヤー:調達可否とコストバランス
鍛造現場における近接センサーの調達では「納期」「廉価」を重視する傾向があります。
しかし並行して、機械やラインごとの実使用温度や設置環境に合った“環境適合性”も吟味すべきです。
たとえば防水防塵の規格(IP67以上)だけでなく、温度上限やスパッタ対策外装、さらにはメーカーのアフターサポート体制も大切。
交換用だけでなく“設計段階からの現場ヒアリング”が、隠れたコストカットやトラブル削減に効いてきます。
サプライヤー:現場の使い方とアップセルの視点
サプライヤーサイドは、顧客現場の“実際の設置状況”を詳細にヒアリングし、それに最適化した提案が重要です。
たんなる型番切り替えだけでなく、現場独自の“防護カバー追加”や“冷却手段セットの提案”など、トータルでパッケージすることで付加価値を生み出せます。
また、「安価な汎用品」だけでなく「予知保全用の高信頼監視センサーを組み合わせる」ようなソリューション提案も、他社との差別化につながります。
現場レベルでの破損対策――今すぐできること
- 定期メンテナンスに「外観・動作」両面でチェックする項目を追加する
- 破損履歴・交換履歴のデータを蓄積し、現場内で「壊れやすい設備のランキング化」を実施してみる
- 設置高さや配線経路、防護カバーの有無を見直し、“現場流”のカスタマイズを積極的に行う
- 本当に高温域で使う場合は、ワイヤレスや光学センサー等への置き換えも検討する
- サプライヤー・メーカーと連携し、「現場見学→提案型改善」をセットで試みる
まとめ――「壊れる理由」を知れば、次の一手が見える
近接センサーが鍛造現場で壊れやすい理由は、単なる“部材スペック不足”だけではありません。
高温・スパッタ・振動という苛烈な環境要因、現場文化としての「割り切り」「属人化」、コストダウン競争といった複合要因が絡み合っています。
だからこそ、メーカー・現場・バイヤー・サプライヤーそれぞれが、“本当に求められる運用”と“破損リスクの予兆”を深く理解することが重要です。
今後も製造業はアナログの知恵とデジタルの力を両輪で回していくことでしょう。
現場目線から原因を探り、具体的な改善アクションを積み重ねることで、昭和から令和へ――製造業が一歩先を見据える土台づくりに貢献することができます。
この知見が、貴社やあなたの現場改善へのヒントとなれば幸いです。
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