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撚糸不均一による光沢ムラを抑える回転制御と糸経時安定化技術

撚糸不均一による光沢ムラを抑える回転制御と糸経時安定化技術
はじめに
製造業現場で糸や繊維を扱う方にとって、撚糸の不均一性が与える影響は日常的な課題です。
糸の光沢ムラは最終製品の見栄えや品質評価に直結し、下流工程・バイヤー・エンドユーザーの満足度を左右します。
本記事では、長年製造業の現場で経験を重ねてきた筆者の目線から、撚糸工程で顕著になる「光沢ムラの抑制」とそれに寄与する「回転制御技術」「糸経時安定化技術」に焦点をあてます。
撚糸不均一が生み出す“光沢ムラ”とは
光沢ムラとは、製織後や染色後の生地表面に現れるムラ状の反射の偏りや色調ずれを指します。
特に光沢糸や人工繊維では顕著で、「高級感がなくなる」「歩留向上が図れない」「クレームや返品が相次ぐ」といった二次的リスクにも直結します。
ムラの主な原因は次の通りです。
・撚糸の撚り数(TPI:Twist Per Inch)のバラつき
・糸の張力不均衡
・湿度、温度による物理特性の変化
・機械的な摩耗や経年劣化、センサー・ローラーの異常 など
昭和期の生産現場では、ベテラン作業者の“勘”に頼る部分も大きく、現代でもその名残が色濃く残っています。
しかし、グローバル調達への流れとともに、再現性や品質均一化の要求も高まっており、「見える化」と「根拠ある制御」が求められる時代です。
回転制御技術の進歩と現場応用
撚糸機械は、糸を連続的にひねりながら糸強度や見た目の質感を高めます。
ここの「撚り数」を均一に制御することが安定した光沢を実現する土台となります。
従来は、主モーターや補助モーターの回転をベルト駆動で伝達し、間接的に回転数を設定していました。
しかしベルトの伸びや摩耗、プーリーの滑りといった“人間の管理しにくい要因”で実際の撚り数が変動するのが現実です。
近年は次のようなテクノロジーの導入が進んでいます。
・インバーター制御による正確なモータースピード制御
・エンコーダやロータリーセンサーによる撚り数のリアルタイム監視
・IoT連携で異常値検知やトレーサビリティの確保
・機械学習を用いた“自動微調整”機構の導入
たとえば、実際に私が関わった現場では、各スピンドルごとの撚り数をセンシングし、クラウドへデータを集約。
過去のロットの状況や作業気象の履歴と照合させることで、機械の摩耗や各種パーツの寿命を「見える化」することに成功しています。
この仕組みによって、「うちの機械はクセがある」といったベテラン職人の“暗黙知”を「形式知」に変換し、若手作業者でも安定した撚糸品質を保てるようになりました。
糸の「経時安定化」が与えるインパクト
撚り数の均一化と並んで重要なのが、糸自身の「経時安定性」です。
製造過程や保管中に糸内部に余分なテンションやねじれ応力が残ると、後工程で“暴れ”や“戻り”が発生しやすくなります。
この現象は「リラクゼーション現象」とも呼ばれ、染色や織布後の光沢ムラや寸法不安定、風合いの劣化の原因となります。
対策としては次の点が挙げられます。
・撚糸直後の「静置」または「加湿・加熱処理」
・テンションコントロール一貫化の徹底(ラ米・巻取・パッケージングまで)
・原糸の選定時点での規格統一やベンダー管理の強化
最新の現場では、保管エリアの温湿度管理システムを導入し、糸の「エイジング」を数時間〜数日にわたりコントロール。
データ記録に基づく品質トレーサビリティも強化され、従来の「どこで劣化したのかわからない」を解消しています。
このような長期視点に立った工程設計が、最終的な光沢ムラ低減につながるのです。
アナログ業界に根付く現場力とデータの融合
昭和時代の製糸現場を知る私からすれば、昨今のデジタル化は隔世の感もあります。
しかしいまだに中小工場や外注先では、「経験値頼み」の部分が強く、個人の熟練度に品質が大きく左右されている現状も見過ごせません。
だからこそ今こそ、アナログの「現場力」とデジタルの「見える化・自動制御」とを融合させることが最重要です。
・ベテランのノウハウを一つひとつ工程パラメータにブレークダウン
・IoTで細かな工程データを蓄積・活用
・現場での仮説検証サイクルを繰り返し、仕組みそのものを進化させる
このような“ラテラルシンキング(水平思考)”に基づいた現場改善が、今後の安定供給や国際競争力UPに不可欠となります。
サプライヤー・バイヤーどちらにも役立つ知見とは
サプライヤー側は、工場の事情や現場の苦労を「見える化」し、バイヤーへ透明性ある品質保証を伝えることが必須です。
バイヤー目線では、「なぜ同じスペックでもロットごとに品質バラツキがあるのか?」という問いに、プロセスの透明化で応えることができます。
場合によっては、原糸仕入先やアフターサービスまで巻き込んだ協業体制を構築し、品質安定・コスト適正化など双方のメリットにつなげましょう。
グローバル調達時代に問われる“QCD+E”視点
今や撚糸・繊維生産もグローバルで展開され、「QCD(品質・コスト・納期)」はもとより「E(環境配慮・社会的責任)」も取引条件となっています。
光沢ムラ低減のためには、安定した生産体制だけでなく、省エネ設備やサステナブルな素材選定への視点も不可欠です。
プロセス改善を通じて無駄な再加工や廃棄を減らすことが、同時に環境への配慮にもつながります。
まとめ
撚糸不均一による光沢ムラの課題は、現場に根強い“アナログ文化”と最新技術の間に立ちはだかる現代的テーマです。
要点を整理すると──
・撚糸の正確な回転数制御が安定生産の根本
・糸自体の経時安定化で後工程の不良を未然に防ぐ
・現場経験値とデータテクノロジーを融合し仮説検証を繰り返す
・サプライヤー・バイヤー双方の透明性と協業体制を重視
・QCDに加えE(環境)も視野に、長期視点で工程設計を行う
明日からできる小さな改善こそが、大きな差別化を生む礎となります。
現場での「気づき」と、ささいな「声」にこそ、未来を切り拓くヒントが隠されているはずです。
製造現場で日々奮闘する皆さまに向け、“現実に根ざした生きた情報”として、本稿が少しでもお役立ていただければ幸いです。
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