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自動制御・モデルベース制御の基礎と制御系設計への応用例

目次
はじめに:製造業の現場における自動制御・モデルベース制御の重要性
近年の製造業では、DX(デジタルトランスフォーメーション)やスマートファクトリーへの関心が高まり、自動制御やモデルベース制御といったキーワードが現場の会話に上ることが増えてきました。
とはいえ、長らく昭和の気風やアナログな慣習が根強く残る現場も多く、「何となく言葉は知っているが、本質はよく分からない」「自動化といっても、PLCとリレー制御の延長でしょ?」といった感覚が残っている方も少なくありません。
ここでは、現場での実体験や業界動向を交えながら、自動制御、モデルベース制御の基礎知識から、制御系設計への具体的な応用例までを分かりやすく解説します。
バイヤーを志す方、サプライヤーとしてバイヤーの考えを知りたい方、そして日々現場を支える製造業従事者の皆さんに役立つ内容を目指します。
自動制御の基礎:脱・昭和のための第一歩
自動制御とはなにか?
自動制御とは、機械や装置が人間の手を借りず、自律的に目標とする動作を行うための仕組みです。
たとえば、温度を一定に保つ恒温炉や、正確な位置決めを行う搬送装置、ラインスピードの自動調整などが代表例です。
この仕組みは、現場の生産性向上や品質安定に直結します。
人手による操作では微妙な“勘”に頼る場面があり、そのばらつきが不良や稼働率低下の原因となりがちです。
自動制御はそうした属人性から脱却し、現場力を底上げする鍵となります。
フィードバック制御の考え方
自動制御の根幹となるのが「フィードバック制御」です。
これは、目標値と実際の値(出力値)の差を絶えず監視し、その差(偏差)をもとに制御量を調整する方法です。
たとえば、エアコンの温度制御では設定温度と現在の室温との差から、冷房や暖房の強さを自動調整し、目標値に収束させます。
工場の例では、供給圧力や搬送速度の調整などもこの考え方で動いています。
このような仕組みを正しく理解し設計に取り込むことで、安定した生産や効率的な稼働に寄与できます。
モデルベース制御とは?〜見える化時代の新・現場力〜
モデルベース設計(MBD)とは何か
従来の制御設計は、「とりあえずやってみて動かなければ調整する」といったアナログな試行錯誤が主流でした。
モデルベース設計(Model Based Design:MBD)は、現象や装置の挙動を数理モデルで“見える化”し、シミュレーションを通じて論理的かつ迅速に設計を進める最新の方法です。
物理法則に基づく方程式や実測値を組み合わせ、プラントや装置の状態変化を数学的に再現します。
最適なパラメータや制御ロジックも、実機に触れる前に絞り込みが可能です。
現場感覚で言えば、「ぶっつけ本番・現場調整」から「理論先行・試行錯誤削減」への進化と言えるでしょう。
なぜ昭和的現場でもMBDが求められるのか
近年、量産化、小ロット多品種生産の拡大、カスタマイズ需要の高まりといった業界構造の多様化が加速しています。
一方で「現場にベテランがいなくなる」「ひとつの設備に詳しい人が偏在し、いわゆるブラックボックスになっている」といった課題が、全国の工場に共通して生じています。
モデルベース制御を取り入れれば、
・ノウハウを“見える化”し、ブラックボックス化を防ぐ
・熟練者がいなくても属人性を減らす
・設計・調整のリードタイム短縮とコスト削減
など、多くのメリットが得られます。
まさに昭和的現場を次世代へ橋渡しするための“道しるべ”となる技術です。
実践的な制御系設計:現場目線の応用例
応用例1:搬送ラインの速度制御
ある自動車部品工場では、従来の大量生産型ラインから小ロット・多品種対応への転換が求められました。
実際の部品ごとに適正な搬送速度、停止位置が微妙に異なり、従来のタイマーやセンサの組み合わせでは都度現場調整が発生していました。
そこで、各品種ごとに「投入から排出までの最適速度プロファイル」を数式モデル化(例えば移動距離×搬送重量など)し、モデルベース設計で最適制御を導入したところ、立ち上げや切替時の調整時間が大幅に短縮されました。
また、既存設備へのレトロフィット(後付け改修)でも適用でき、古いラインでの省人化にも大きな効果を上げました。
応用例2:成形機における温度・圧力制御
プラスチック成形品の品質は、成形温度や金型への加圧タイミングが精度良く保たれるかどうかに直結します。
しかし、環境温度や原材料の個体差により、安定した品質を出すのが難題でした。
モデルベース制御では、原料性状・金型温度・成形圧力などのデータをもとに「理想的な制御モデル」を組み立てておきます。
生産中は実測とモデル値の差を自動学習しつつ、プロセスをリアルタイムで最適化します。
こうした仕組みは、経験頼み・「気合と根性」の時代から、安定品質を量産するカイゼン現場への大きな武器となります。
応用例3:エネルギーマネジメントと全体最適制御
省エネ・コスト削減は全社的課題です。
工場全体の電力消費や冷暖房・工作機械などの使用状況を計測し、エネルギー消費モデルを元に、各装置の運転パターンをシミュレーション制御する取り組みも増えています。
例えばピーク電力の事前予測に基づき、複数の生産ラインや空調を段階的に稼働させて負荷分散したり、余剰電力を蓄電システムへ回すなど、全体最適化の自動制御が実現可能になっています。
現場あるある問題とモデルベース制御の“効き目”
現場では、「導入したはいいものの、うまく使いこなせない」「生産立ち上げが遅い」といった声がよく聞かれます。
モデルベース制御の導入経験からアドバイスできるのは、
・現場の“暗黙知”を必ず聞き取り、パラメータ抽出に反映する
・導入初期はシンプルなサブシステム(例:単一の温度制御)から始め、段階的に全体最適に広げる
・定期的なモデルアップデートとデータ再収集で“絵に描いた餅”化を防ぐ
この徹底が、机上理論とのギャップ解消、現場浸透のカギとなります。
また、「現場と開発部門が分断され、トラブル時の迅速な対応ができない」といった組織課題も多いのが実情です。
モデルベース導入では、現場とバックエンド(設計・開発)が同じ視点で“設計意図”を共有しやすくなるため、トラブル時のリカバリーも早く、現場の安心感につながります。
バイヤー・サプライヤーに求められる新しい視点
バイヤーの考えるモデルベース制御の導入意図
購買・調達現場では、コストダウンや品質の安定だけでなく、製造ラインの変化対応力やデジタルデータによる“見える化”を重視する傾向が強まっています。
モデルベース制御は、単なる自動化装置の導入のみならず、
・将来的な生産品目変更
・設備の長寿命化、効率運用
・過去不良や異常の再現性検証
こうした「投資対効果の最大化」を実現するための条件として重視されるようになっています。
今後のバイヤー職は、単に価格比較や納期確保のみならず、モデル設計による生産現場の“変化対応シナリオ”までをサプライヤーに求めることが増えていくでしょう。
サプライヤーから見たバイヤーの期待と差別化策
バイヤーが重視する“変化対応力”と“見える化”に応えるには、サプライヤー自身もMBDを使った設計提案能力や、データドリブンな運用支援体制が不可欠です。
また、納入後も定期的に制御モデルのバージョンアップや、現場の運用実態に応じたコンサルティングを提案するなど、単なる“物売り”から“共創パートナー”へのシフトが強い競争力となります。
昭和的な「安さ早さ」だけでなく、「柔軟な設計・納入」「データによる根拠ある提案」といった付加価値の高いサービスが選ばれる時代になっています。
まとめ:自動制御・モデルベース制御のこれから
製造業の現場は、依然としてアナログの“勘と経験”が重要視される一方で、DXへの流れはもう止まりません。
自動制御とモデルベース制御は、その橋渡し役を担い、現場目線とデジタル設計の融合による全体最適化、変化対応力の強化をもたらします。
バイヤーやサプライヤー、現場を担う全ての方にとって、これらの技術は新たな基準となりつつあります。
先入観や従来の延長線だけでなく、ラテラル思考で次の時代の“ものづくり”を切り拓いていきましょう。
今こそ、アナログからデジタル、属人から共有知への転換点です。
皆さんの製造現場、調達現場の明日がより良いものとなるよう、本記事が少しでもお役に立てれば幸いです。
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