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制御実験で学ぶPID制御の基礎とモデルベース設計による制御性能向上のポイント

目次
はじめに:制御技術の今と課題
製造業の現場において、品質や生産性の安定化は常に最優先事項です。
その中核を担う技術が「制御」です。
とりわけPID制御は、いまなお多くの現場で現役として活用され、機械設計や自動化、そしてAI・IoTが台頭する現代においても根強い基本制御手法となっています。
ですが、昭和時代から連綿と続くアナログ的アプローチでは、本来の制御性能を引き出しきれていない場合が多いのも、また現実です。
本記事では、制御実験を通して学ぶPID制御の基本、及び近年注目されるモデルベース設計を取り入れることで、どのように制御性能を飛躍的に向上させられるのか、現場目線で深く解説します。
PID制御の基礎を実践で理解する
PID制御とは何か?
PID制御は「比例(P)」「積分(I)」「微分(D)」の頭文字を取っており、制御対象の出力と目標値の誤差(偏差)を元に、その変化量を予測しながら操作量を調整する手法です。
現場で言えば、「温度」「流量」「位置」「速度」などの制御ループにおいて、現状値が目標値へ早く、かつ安定して追従できるように制御信号を自動で生成するのがPID制御の役割です。
現在でも多くのPLCやDCS、温調機、インバータ制御などに組み込まれています。
PID各項の働きと調整のポイント
P(比例)項は、誤差が大きいときに強く動作し、出力をすばやく目標に近づけます。
しかし、P項だけだと目標値への「行き過ぎ(オーバーシュート)」や「定常偏差(いつまでもぴったり一致しない)」が発生します。
I(積分)項は、誤差を積み重ねてゼロ方向に追い込み、定常偏差を解消します。
ですが、I項の利きが強すぎると応答が遅くなったり、振動(オシレーション)したりします。
D(微分)項は、誤差の変化速度に応じて素早くブレーキをかけます。
機械の“動き過ぎ”を抑え、急激な目標変化や外乱にも対応しますが、ノイズに弱くなります。
現場で使える調整の鉄則は、「Pから始めて、Iで追い込み、Dでブレーキを微調整する」ことです。
ただし、物理系の特性や制御対象の遅れ・摩擦・非線形性・外乱などによって最適値は異なるため、経験則だけでは追い込みきれないケースが多々発生します。
実験で確かめるPIDパラメータ調整
制御実験の重要性
管理職や技術者の立場では、カタログ値や計算だけではわからない「現場のクセ」「設備ごとの個体差」を体感することが大切です。
制御対象に実際にPID制御をかけ、パラメータを変化させたときの挙動を自分の目と手で確かめることで、初めて生きた知識となります。
例えば生産設備の温度制御の場合、加熱ヒーターが古くなっていたり、現場温度に季節変動や外乱が作用することで、机上のモデル通りには動きません。
実験結果を記録し、グラフ化して分析することで、どのパラメータが何に効いているのか、本質的な部分を掴めるようになります。
制御パラメータ調整の実用的アプローチ
1. 初期値を設定し、制御対象を安定状態にする。
2. P項のみを増減し、応答性と安定性のバランスを追い込む。
3. 定常偏差が大きい場合はI項を徐々に強くする。
4. オーバーシュートや振動が気になる場合はD項を加える。
5. 外乱(急な負荷変動)がある場合、その時だけの挙動も解析。
また、現場でよくあるのが「パラメータ適当に合わせて放置」されるケースです。
こうした“昭和的アナログ操作”から脱却し、パラメータを見える化し、根拠ある調整を推進することこそ、現場力の底上げに直結します。
進化する現場:モデルベース設計の実際
モデルベース設計(MBD)の概要
近年、制御技術の発展とともに「モデルベース設計(MBD)」という手法が脚光を浴びています。
MBDとは、制御対象の物理的・動的特性を数式モデルやシミュレーションとして構築し、その上で最適な制御アルゴリズムをソフトウェア的に設計する方法です。
従来型の「現物合わせ」「職人による勘・経験」に代わり、設計段階で複数パターンの制御ロジックやパラメータを事前検証できるため、手戻りや調整工数を大幅削減できます。
とくに、複雑な生産ラインや多軸ロボット、EVモータ等のダイナミックな制御に威力を発揮します。
モデル化による制御性能の向上事例
例えば、組立ラインのサーボ位置決め工程で、加減速中の“揺り戻し”や“振動”が品質不良の原因になっていたとします。
現物合わせでは対処しきれない微細な揺動も、MBDによるモデル化ならば原因追及と制御パラメータ最適化が高速に行えます。
同様に、温度制御の分野では、炉や加熱工程のサーモモデルを作ることで、季節や外乱の影響までを取り込んだ制御ロジックの設計が可能です。
これにより、従来はオペレータ頼みだった“勘の世界”から、“データに基づく最適制御”が実現します。
導入現場の声として、「誰が調整しても同じ品質が出せる」「設備立ち上げ時の制御調整期間が1/3になった」「解析結果をパートナー工場とも即座に共有できた」などのメリットが聞かれます。
アナログ現場へのMBD導入の壁と乗り越え方
なぜアナログ手法が根強いのか
製造業の現場では「ベテランの勘と経験」「現物重視」「安易なシステム化への懐疑主義」が根強く、急激なデジタル化やモデリング推進には必ず抵抗が生まれます。
パラメータ最適化も「一度動いたら触るな」「誰も責任を持ちたがらない」となることが非常に多いです。
成功現場の共通点:現場参加型アプローチ
MBDを効果的に現場へ根付かせるためには、IT部門や設計者だけで完結しない、「現場主体のモデル化活動」が不可欠です。
1. 現場スタッフが日々観察している“クセ”や“シチュエーション”を反映し、机上モデルをアップデートする。
2. シミュレーションと実物テストを反復的に行い、モデル精度と操作性を高める。
3. 結果を数値(グラフやレポート)で見える化し、モチベーションと合意形成を図る。
4. 若手育成のために、「ブラックボックスだった制御ロジック」を教育教材として活用する。
このように、現場と設計、IT担当者・保全・生産管理など部署間の“壁”を乗り越えたコラボレーションが成否を分けます。
バイヤー・サプライヤーの関係で重要となる制御性能の可視化
なぜバイヤーは制御手法に注目すべきか
製造業のバイヤーは、単なるコストや納期だけでなく、“そのサプライヤーがどんな制御技術を実装しているか”にも目を向けるべきです。
中長期的な品質の安定度、省人化・自動化のしやすさ、現場トラブル発生時の迅速な対応力などは、制御設計力の裏付けが重要な要素だからです。
サプライヤー側の視点:見える化と技術説明責任
サプライヤーとしては、自社の制御手法やパラメータ調整プロセスをオープン化・可視化し、「どんな環境変化にも安定した品質を提供できる」という技術力を明確に伝えることが取引継続の信頼獲得につながります。
MBDの活用事例や制御パラメータの最適設計手順、さらには実機でのテストレポートまでをバイヤーと共有することが、現代のグローバル調達市場では必須です。
まとめ:さらなる高みを目指す装置制御へ
PID制御はいまだ多くの現場で主流の制御技術ですが、現物合わせや昭和的調整慣習だけでは、安定かつ柔軟な品質確保は難しくなっています。
モデルベース設計(MBD)の導入によって、設計段階から最適な制御パラメータの予測と検証、データ主導型の改善サイクルが強化されます。
現場参加型の実験・解析サイクルと、サプライヤー・バイヤー間での制御技術に関する透明な情報共有は、今後の製造業における競争力の源泉です。
制御実験から始めて、現場の知見と最新デジタル技術を掛け合わせ、新たな地平線を共に切り拓いていきましょう。
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