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投稿日:2025年7月7日

漏れゼロを目指すシール技術とメカニカルシールトラブル対策

はじめに:漏洩がもたらす製造現場のインパクト

製造業の現場で「漏洩ゼロ」は永遠のテーマとも言えるほど、重要かつ根深い課題です。

シール技術の進化はめざましく、メカニカルシールも多様化しています。
しかし、あらゆる業界で昭和から続く「とりあえずパッキンでなんとかなるだろう」という現場感が、いまだに根強く残っているのは事実です。

シール部からの漏洩が生じると、製品の品質低下や安全性のリスクはもちろん、設備停止による生産ロスや膨大な補修コストを引き起こします。
特に食品・医薬・化学など、安全規制が年々厳しくなる中、微量な漏洩すら許されない状況が増えています。

本記事では、20年以上の現場・管理者経験から、最新のシール技術のトレンド、現場目線でのトラブル実例、さらには「なぜ漏れはなくならないのか」「昭和的な発想から抜け出すにはどうするか」といった根本課題まで掘り下げていきます。

シール技術の基礎知識:ガスケット・パッキン・メカニカルシールの違い

ガスケットとパッキン:アナログとデジタルのはざま

シールと言えば、パッキンやガスケットがまず頭に浮かぶ方は多いでしょう。
これらの部品は、液体やガスの漏洩を防止する最も基本的かつ歴史ある方法です。

パッキンは捻じ込み部や回転部などに多用され、コストも安く手軽です。
しかし、経時劣化や締め付け不良で漏洩リスクを抱えています。
一方、ガスケットはフランジ継手など平面の接合部に使用され、こちらも材料の選択や施工精度が大きく性能を左右します。

昭和的な現場だと「とりあえず厚めのガスケットでガッチリ締めておけばOK」という感覚がいまだ抜けないことも珍しくありません。
しかし、現代のグローバル競争・高付加価値化のもと、もう一歩グレードアップしたシール技術が求められています。

メカニカルシール:生産現場の心臓部を守る要

メカニカルシールは主にポンプや攪拌機など、軸が回転する箇所のシールに使われます。
構造は精密で、固定子と回転子の摩擦面がきわめて平滑になっているのが特徴です。
高温・高圧・高回転といった過酷環境下でも安定したシール性能を持ち、Oリングや一般パッキンでは防げない微細な漏洩にも有効です。

ただし、取り扱いに専門知識を要し、組付け・調整・メンテナンス工程での「ヒューマンエラー」が頻発するのも現実です。

現場あるあるのメカニカルシール・トラブル事例

組付け不良:昭和な作業手順から抜け出せない現場

メカニカルシールのトラブル原因で最も多いのが「組付け不良」です。
現場では「分解整備してみたけど、元通りに戻したのに何故か漏れる…」という悲鳴を何度となく耳にします。

とくに見落としがちなのが以下のポイントです。

– シール面の異物・ゴミ残り
– 取付角度のズレ、偏芯
– グランドパッキンやスリーブのサイズ違い
– 潤滑油(封液)の給油ミス
– 予備品ストックの経年劣化(パッキン材質硬化、Oリングひび割れ等)

昭和的な「現場の勘・経験」で何とか片付けようとするあまり、手順書無視や部品共用の横行が根深い課題となっています。

メンテナンス頻度:やりすぎも、やらなさすぎもNG

「設備保全」と「生産効率化」のバランスは永遠の悩みどころです。
メカニカルシールなど高精度部品は、過度なメンテナンスでかえって寿命を縮める場合もあれば、逆に定期交換を怠ると突発トラブルに発展しやすいという難しさがあります。

現場のヒアリングをした結果、多くの企業で「年1回の定期交換が社内ルール」となっていますが、現実には運転条件や流体特性によって寿命は大きく変わります。
適切な診断・モニタリングなく形式的に部品交換していると、ロスもアクシデントも減らず、現場からは「また無駄な交換か…」という不満も。

流体・運転条件の変化:設備投資の落とし穴

新製品立ち上げや生産ラインの刷新、原材料の変更など、設備運用条件が変わるときに思わぬ漏洩トラブルが起きるケースは少なくありません。
典型的なのは、現場が「これまでと同じ材料・同じ手順でいける」と過信することです。

たとえば、粘度の高い新材料を使い始めた途端、シール部に凝集物やスラッジが詰まり、短期間で摩耗やシール面損傷を招くケース。
他にも、冷却水の流量が十分でないまま高荷重運転した結果、シール摩耗の急速進行や動作不良が起こりがちです。

最新シール技術とIoTによる革新:アナログからデジタルへ

自己修復型シール・低摩擦素材の最前線

素材技術の進化により、自己潤滑性や耐熱・耐薬品性に優れたシール材が続々と登場しています。
ナノ粒子や特殊樹脂を複合化した次世代素材を活用することで、従来より大幅に長寿命化・高信頼化が実現できています。

また、自己修復型シールとしてマイクロカプセル素材を応用した「自己癒着パッキン」も一部で実用化され、メカニカルシール連続運転時のマイクロ損傷にも対応可能となりました。

IoT活用による状態監視・予兆保全

現代はセンサーによる状態監視で、「シールの劣化具合」や「リーク量」などをリアルタイムでモニタリングできる時代です。
振動・温度・圧力・流量の多点センサデータをAI・ビッグデータ解析にかけることで、従来は“経験と勘”でしか読み取れなかったシール寿命が、数値で予測可能になっています。

例えば、「この振動パターンが出たら、2週間以内にリーク発生リスクが上昇」というアラートを受け取り、計画的な予防保全が行えます。
これにより、予備品の在庫最適化や不要な分解作業の削減、突発停止の未然防止につながっています。

漏洩ゼロを実現するための具体的アクション

組付け・保全マニュアルの再構築

メーカー各社のシール部品には、必ず推奨組付け手順が存在します。
しかし、多くの現場で「独自作業」「ベテラン職人頼み」になりがちです。

漏洩ゼロを目指すには、技術メーカー推奨の組付け手順を標準化し、「現場の暗黙知」をデジタル化・マニュアル化していくことが絶対条件です。
ベテランのノウハウを若手へ、さらにはIoTデータと融合することで、属人化を排しながら標準精度を底上げできます。

サプライチェーン連携の強化

シールパーツ調達では「バイヤー」視点も極めて重要です。

調達・設計・製造・保全部門まで一気通貫で課題を共有し、サプライヤーから漏洩事例の情報やメンテ技術を積極的に吸収しましょう。
部品メーカーとの定期的な情報交換や共同勉強会は、現場目線のQCD改善だけでなく、最新トレンドのキャッチアップにも役立ちます。

その結果、材料ロットや品質異常の早期発見、全体最適型のコストダウンへつなげられます。
また、バイヤーを目指す方や、サプライヤーの方もバイヤー視点から現場のニーズ・改善要望を正しく理解することは、顧客満足度や取引拡大のカギを握るポイントです。

アナログ現場のデジタル化推進

昭和的な感覚から今後抜け出すため、「漏洩記録の電子化」や「作業履歴の見える化」を一歩ずつ試しましょう。
「紙の点検簿」は徐々に廃止して、写真・動画記録、IoTデータによる異常監視を標準化していくのが望ましいです。

現場の抵抗感をなくすには、「これがあるとメンテが楽になる!」「急な夜間対応が減った!」など、小さな成功体験を積み上げ、地道に省力化・省人化を進めていくことが肝心です。

まとめ:シール技術高度化の先にある価値とは

20年以上の現場経験から断言できるのは、“漏洩ゼロへの挑戦”は尽きることがないということです。

シール技術は、単なる「部品」ではなく、工場の品質・生産効率・安全の心臓部です。
メカニカルシールのトラブル一つで、数千万円単位の損失やブランド失墜に直結するリスクもあります。

昭和の現場スピリットをリスペクトしつつ、IoTや新素材という武器を取り入れて「理想のシール環境=漏洩ゼロ」に一歩近づきましょう。

最後に、製造業に携わる皆さま、バイヤー志向の方、サプライヤーの皆さまがそれぞれの立場から現場改善の輪を広げて、業界全体がより安全・快適で魅力的なものになっていくことを心から願っています。

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