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投稿日:2025年7月5日

設計の見える化による手戻りゼロ化と品質向上メソッド

はじめに ― 設計の「見える化」が求められる背景

製造業の現場では、設計とは単なる図面づくりや仕様決定に留まりません。
納期遅れ、コスト超過、品質トラブルといった問題の多くが「設計段階での手戻り」に起因しています。

特に昭和時代から長く続くアナログな業務プロセスが根強く残る業界では、設計情報の共有不足や仕様変更への対応遅れが頻発し、現場を悩ませてきました。
これを打開する一手が「設計の見える化」です。

本記事では、20年以上現場で培ったノウハウをもとに、設計の見える化が手戻りゼロ化と品質向上をどのように実現するのか、実践的なメソッドを紹介します。

なぜ「手戻り」が発生するのか ― 現場のリアルな課題

情報のサイロ化がトラブルの温床

製造業の設計現場では、設計部門と購買・生産・品質管理部門、さらにはサプライヤー間の情報の分断が大きな壁となっています。
設計意図や仕様変更が十分に伝達されないことで、変更された設計データをもとに部品を発注してしまったり、量産段階で図面と現物が異なる事態が起こります。

このような「情報のサイロ化」が、手戻りの主因です。

アナログ文化の影響

根強く残る紙図面や電話・口頭伝達も見えないコストを生みます。
例えば、設計変更の最新情報が紙ベースで現場やサプライヤーに届くまでタイムラグが発生し、その間に古い図面で加工・組立作業が進行し、後で「やり直し」が発生することも珍しくありません。

設計の見える化とは何か ― 具体的な定義と狙い

設計の見える化とは、設計情報(意図・仕様・進捗・変更履歴)をリアルタイムかつ視覚的に全関係者が共有できる状態を整えることです。

設計部門だけではなく、調達購買、生産、品質管理、現場、サプライヤーまで、設計情報を「同じ絵」を見て「同じ判断」ができる状態が理想です。

見える化の狙い

– 設計ミスやヌケモレの早期発見
– 情報伝達ロスの解消
– 部門間・企業間での協働促進
– 納期遵守・品質向上・コスト削減の両立

現場で実践する設計見える化メソッド

1.設計進捗と課題を「可視化」する

設計作業の「どこまで進んだか」「どこにリスクがあるか」を見える化するために有効なのが「設計進捗管理ボード」や「デジタル設計WBS(Work Breakdown Structure)」です。
物理的なホワイトボードや付箋も有効ですが、DXの流れに乗りクラウド型のタスク管理ツールに移行すれば、社外サプライヤーとも情報共有がしやすくなります。

各設計タスクの担当者・期限・進捗率、懸念事項(例:仕様未決定、承認待ちなど)を一覧化することで、「今どこが詰まっているのか」が直感的に分かります。

2.設計意図・変更理由の「見える化」

手戻りの大半は「なぜそう設計したか」の説明不足から生まれます。
単なる図面や仕様書だけでなく、設計意図や過去の変更理由、判断根拠を設計書や共有フォルダに併記します。

たとえば、設計図面に「このリブ形状は剛性確保のため追加」「この穴は後工程で使用」といったコメントを残す習慣を全社で徹底します。
OneNoteやGoogleスプレッドシート、3D-CADに搭載されている「コメント機能」も強力な武器になります。

3.設計レビューの定期開催と「チェックリスト化」

設計段階での見落としを防ぐには、設計レビューが不可欠です。
昭和的な「口頭指摘」や「人任せ」から脱却し、チェックリストを用いた客観的なレビューを組み込みます。

例えば「部品形状は金型仕様に合致しているか」「量産工程で特殊治具が不要か」などを漏れなくチェックリストに落とし込み、WR(ウォークスルーレビュー)や設計FMEA(故障モード影響解析)も実施します。

そこにサプライヤーや現場担当もオブザーバーとして加えると、現実的なフィードバックが設計段階で反映できます。

4.設計変更管理の「履歴可視化」

設計変更の記録を「いつ」「誰が」「何を」「なぜ」変えたのか、クラウド型のPLM(製品ライフサイクル管理)システムや設計ドキュメント管理ツール上で一元化します。
設計変更通知(ECN, Engineering Change Notice)を必ず電子化し、全関係者に即時通知する仕組みを作りましょう。

履歴を残すことで「変更理由が分からず、元に戻すべきか迷う」といった現場トラブルも激減します。

5.情報共有の「ワンストップ化」

設計に直接関わる図面・仕様書だけでなく、工程表、部品表(BOM)、原価見積書、リスク分析シート、QC工程表などを、一元的なデジタルプラットフォームで共有します。

これにより、購買・現場・サプライヤーも「どれが最新情報なのか」「どこが更新されたのか」を迷わず判断できます。

昭和的アナログ文化からデジタル化へのシフト、その注意点

「人が主役」のスタンスを維持することの重要性

見える化を推進するデジタル技術はあくまで「手段」です。
本質的には、名前やパスワードの入力さえ面倒に感じてしまう現場のリアルな心理も無視できません。

効果的な導入には、設計者・現場担当・調達担当・サプライヤーの巻き込みと、導入理由の「腹落ち」が必須です。

システム選択のポイント

– 既存のアナログ帳票との親和性を確保(例:手書き図面のPDF化やOCR自動登録)
– 権限管理・アクセス性(社外サプライヤーまで共有できる範囲設定)
– モバイル対応や現場端末でもストレスなく利用可能か

設計の見える化とバイヤー・サプライヤー視点

バイヤーにとってのメリット

設計の見える化は、調達購買部門にとって「現場と一体化したコスト管理」「進捗リスクの早期発見と対策」に直結します。

購買担当者は、最新設計情報や設計変更履歴がリアルタイムで把握できることで、部材発注のタイミング判断やサプライヤーへの交渉も先手を打つことができます。

サプライヤーの立場から見たバイヤー心理

サプライヤーからすれば、バイヤーが何を重視して設計情報を管理しているかが把握できれば、品質・納期・コストの観点でバイヤーの要求に先回りした提案ができます。

たとえば「この機構変更は現場工数増につながる」「この部品共通化提案で全体最適が図れる」といった本質的な提案力が磨かれ、パートナーシップ強化につながります。

見える化成功事例 ― 現場での劇的変化

1.設計変更手戻り、年間50%以上削減

大手自動車部品メーカーA社では、設計進捗・改訂履歴の可視化に取り組んだ結果、購買側の「発注間違い」や「現場での手戻り」が劇的に削減されました。
特にサプライヤーとリアルタイムで設計情報を共有することで、後工程での仕様不一致による再加工費用、廃棄ロスが半減しました。

2.品質トラブルの未然防止

精密機器メーカーB社では、FMEAレビューとタイムライン管理を導入。
設計変更理由を必ず残す運用をルール化した結果、不良発生時の原因究明も迅速化。
クレーム対応工数が1/3に圧縮され、サプライヤーからの設計提案も増加しています。

今後の設計現場に求められるマインドセット

設計の見える化は単なるデジタル化の問題に留まりません。
「現場の知恵」と「新しい道具」をかけ合わせた“協働”のあり方そのものです。

自工程完結の発想から、バリューチェーン全体での情報連携・最適化を最優先とすること。
「自分ごと」として設計内容をすべての工程で語り合う現場文化に変革することが、手戻りゼロと品質向上の鍵となります。

そして、バイヤー・サプライヤー双方が“見える化”された設計情報を起点に、全体最適の視点で本質的な現場改善に向き合うこと。
これが、今まさに製造業の新しい地平線を切り拓く第一歩になると確信しています。

まとめ ― 設計の見える化で未来を変える

設計の見える化は、単なる現場効率化策に留まりません。
部門・世代・企業の壁を越え、「ものづくり」の現場と未来を根本から変えるイノベーションです。

今がまさに、アナログ文化に根差しつつもDXへ大きく舵を切る好機です。
本記事で紹介した実践メソッドを、自社やお客様との協働現場でぜひ試してみてください。

現場を知る者同士、愚直に、しかし愉しく、変革を続けていきましょう。

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