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センサとマイコンを活用したメカトロ制御技術の基礎と応用ノウハウ

目次
はじめに:センサとマイコンを活用したメカトロ制御が拓く製造業の新時代
製造業が直面している大きな壁のひとつが、従来のアナログ自動化から脱却し、デジタル時代の本格的なモノづくり体制へとシフトすることです。
昭和の時代から根付いてきた「熟練工頼み」「現場の勘・経験・度胸(KKD)」が通用しなくなる中、工場の現場ではロボット、センサ、マイコン(マイクロコントローラ)といった先進技術の導入が進んでいます。
これらの技術は従来の設備にデジタルの血を通わせ、現場のカイゼンを次々と生み出す原動力となっています。
本記事では、特にセンサとマイコンを組み合わせたメカトロ制御技術に焦点を当て、その基礎から実践的な応用例、導入における留意点までを分かりやすく解説します。
バイヤーを目指す方やサプライヤーの皆さまも、現場で今何が起きているのかを把握できる内容ですので、ぜひ現場改革や技術提案のヒントにしてください。
メカトロ制御の全体像と、センサ・マイコンが果たす役割
メカトロニクスとは?
メカトロニクス(Mechatronics)は、機械工学(Mechanical)と電子工学・情報工学(Electronics)を融合した造語です。
自動車、産業用ロボット、半導体製造装置、家電品など、私たちの身の回りの多くの製品や設備がメカトロニクス技術で動いています。
本記事では製造業の現場で特によく用いられる、センサで“状態”や“変化”を感知し、マイコンで信号処理や制御演算を実行し、アクチュエータ(モーター・シリンダー等)を動かす流れに着目します。
構成要素と全体フロー
メカトロ制御の典型的な流れは以下の通りです。
1. センサが対象を計測する(位置・速度・温度・圧力・流量・光・音・変位など)
2. センサ信号をマイコンが受信し、必要な変換・処理・判断を行う
3. マイコンの出力に応じて、アクチュエータやリレーが機械やラインを制御
この一連の流れにより、「決められた動き」から「外乱に強く、誤作動が少ない柔軟な制御」が可能となり、安定的で高品質な生産を実現できます。
センサの種類と特徴:現場でよく使われる選定ノウハウ
代表的なセンサの種類
製造現場で使われる主なセンサを以下にまとめます。
– 近接センサ(物体の有無を非接触で検出。食品・包装・自動車分野で多用)
– フォトセンサ(光を利用し検出。位置決め、搬送品の通過検出など)
– エンコーダー(回転角度や回転速度を検出。サーボ制御やロボットの関節に)
– 温度センサ・サーミスタ(成型機など熱管理工程で必須)
– 圧力センサ(空圧・油圧ラインの監視、異常検知)
– 加速度・振動センサ(モーターや設備の異常兆候を検知、予知保全)
現場選定のポイントは、「求める精度」「設置環境(温度・湿度・粉塵)」「応答速度」「コスト」「メンテナンス性」などのバランスを見極めることです。
現場のトラブルあるある:設置・誤作動・保守の落とし穴
筆者が工場長として現場改善に携わってきた経験からの実際の失敗例をいくつかご紹介します。
– フォトセンサがオイルミストの付着で誤動作した
– 近接センサの設置角度がズレて、検出できたりできなかったり不安定になった
– エンコーダのノイズ対策不足で、誤った回転信号が入った
– センサケーブルが長すぎて、信号減衰・遅延が生じた
こうした“昭和から学ぶ”痛い経験こそ、現代の自動化高度化でも極めて大切です。
設置環境の事前リサーチと、メンテナンスしやすい配線計画、トラブル発生時の信号ロギング体制を整えることが鉄則です。
マイコンの基礎:なぜ“現場の頭脳”になれるのか
マイコン(マイクロコントローラ)の進化
昔は制御盤の中にPLC(プログラマブルロジックコントローラ)が鎮座していましたが、近年は小型安価なマイコン(Arduino、Raspberry Pi、PICなど)を現場で積極的に使う流れが加速しています。
マイコンはセンサからのアナログ・デジタル信号を高速で処理し、複雑な演算や複数出力制御を小さな基板一つでこなせます。
付加価値の高い「多点監視」「データ記録」「異常検知」などのカスタム制御にも柔軟に対応できます。
昭和と令和の現場比較:一品一様からスマートへ
昭和の自動化は「決められた順番」「繰り返し同じ動き」がメインでした。
PLCに繋ぐボードは大規模かつ高額で、設計変更のたびに配線職人が集結していました。
一方、令和の現場はマイコン化により、
– ハード面が小型化・低コスト化
– ソフト改修が容易(プログラム変更で仕様変更が簡単に)
– データロギング、IoT連携、遠隔監視まで柔軟に拡張
– オープンソースや既存プロジェクト流用で開発コスト削減
など、劇的な進化を遂げています。
「製造現場はデジタル化が進まない」と言われがちですが、部分最適から始めて一歩ずつ“頭脳のある工場”に近付ける手段として、マイコン活用は導入ハードルも低く大きな効果を発揮しています。
現場で役立つセンサ×マイコンの応用ノウハウ
応用例①:自動搬送ラインの停止ロス低減
搬送ラインで品物の詰まり・流れ不良をどう検知し、最小限のダウンタイムに抑えるかは現場の大課題です。
従来は作業者の目視・巡回で異常を把握していましたが、最新の現場では下記のような流れが増えています。
– ライン各所にフォトセンサを配置し、通過時間・個数をリアルタイム検知
– マイコンが各ポイントの通過・停止時間を管理
– 異常値(滞留・流れすぎ)を即時アラート、表示灯・メール通知・自動停止
作業者への負担軽減はもちろん、不良ロス・トラブル発生の“初動”を早め、高稼働率・高品質化に大きな威力を発揮します。
応用例②:予知保全による設備ダウン対策
生産設備の故障や摩耗部品の異常 “前兆” を予兆できれば、突発停止とダメージを回避できます。
具体的には、回転部分の異音・振動・温度上昇を
– MEMS加速度センサ・温度センサで常時監視
– マイコンが普段のパターンと比較したリスク値を演算
– 一定値を超えた場合のみ、スマホ・遠隔モニタに警告表示
この仕組みは、部門間・拠点間の“勘”や“担当の経験差”を平準化し、若手作業員や多品種少量生産でも安定再現性を確保できます。
応用例③:製造現場のペーパーレス化&実績把握
日本の現場ではいまだに「作業日報」「検品記録」を紙に書いている現場が多いです。
その場合、記録抜け・転記ミス・集計コストが膨らみます。
ここでバーコードリーダとマイコンを連携させることで、
– 各作業ステップ通過時にバーコード入力+タイムスタンプ自動記録
– 作業者の個別ID、品目、合否判定を即データ化
– 終業時に本部サーバーへ一括データ送信、自動帳票化
「紙からの卒業」が現場業務のDX推進の第一歩であり、サプライチェーン全体の信頼性向上にも直結します。
導入時の注意点と、現場活用で押さえるべきコツ
成功する現場DXのためのポイント
– 機械・ラインごとに状況や要件がまったく異なるため、まずは“困りごとベース”で目標設定する
– いきなり全部を自動化せず、部分的なセンサ設置→マイコン導入→アクチュエータ制御と、“スモールスタート”を繰り返す
– トラブル・誤作動時は「ヒューマンエラー」だけでなく、機器の設置条件や結線状態、ノイズ環境なども再確認する
– 安価な部材でも、品質評価・耐久評価は怠らない(特に商用化時は要注意)
– 保守・トラブル時に誰でも対応できるよう、配線・プログラムはシンプル&現場にフルオープンする
「現場にイノベーションを起こすために、最新技術が必要」と思いがちですが、現状の困りごとを見える化し、小さな自動化を積み上げていくことが最短ルートです。
まとめ:メカトロ制御は現場力こそ成果を生み出す
センサとマイコンを活用したメカトロ制御の本当の価値は、「現場の困りごと=見えないムダ」を数値化し、“デジタルの力で誰でも再現できる成果”につなげる点にあります。
DX、スマートファクトリー、インダストリー4.0――こうした言葉が流行しがちですが、重要なのは現場で“手が届く具体的な一歩”を踏み出すことです。
アナログな現場文化が根強く残る工場こそ、小型・安価なマイコンと各種センサを活用した現場主導型の自動化で、持続的なカイゼンサイクルを回していきましょう。
バイヤーの皆さんは、サプライヤー提案や現場改善の場面で、こうした具体的なセンサ・マイコン活用事例を積極的に提示することで、発注側との信頼関係を構築できるはずです。
今まさに工場の新世代へのシフトが始まっています。現場でしか見えない課題、現場だからこそ生み出せるアイデアを大切に、共に日本の製造業の未来を創り上げていきましょう。
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