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医療現場医学部機器開発研究経験基づく医療機器ヘルスケア機器開発ポイント成功例失敗例既存技術活かし方

目次
はじめに
医療機器やヘルスケア機器の開発は、近年ますますその重要性が高まっています。
人口の高齢化や医療ニーズの多様化、新型ウイルスの流行といった社会的変化が背景にあります。
特に現場での製造経験がある方にとっては、医療分野という普段馴染みの薄い世界に進出する際、どのような開発プロセスが求められ、何に注意すべきなのか気になるところではないでしょうか。
この記事では、筆者が大手製造業で20年以上にわたり培った実践経験、現場目線での知見、医療現場や医学部との共同開発、そして成功例・失敗例のリアルな体験を交えながら、製造業のノウハウをいかに医療機器・ヘルスケア機器の開発、実装、量産へと活かしていけるのか、その具体的なポイントをご紹介します。
医療機器・ヘルスケア機器開発とは何か?
医療機器と一般機器の「見えない壁」
医療機器の開発現場に初めて足を踏み入れると、多くの製造業出身者は、一般機器の開発との間に「見えない厚い壁」を感じるものです。
この壁の正体は、規制・倫理・安全・臨床との連携・エビデンス重視という特有のカルチャー、そして開発サイクルの長さや関与する専門家の多さにあります。
一方、既存技術やノウハウの移植、応用こそが医療機器分野のイノベーションの主役でもあります。
法規制・ガイドラインの特殊性
医療機器は薬機法(旧薬事法)をはじめ、ISO13485、QMS(品質マネジメントシステム)といった多層的な規制に準拠しなければなりません。
さらにクラス分類(一般的にはI~IV)があり、リスクに応じて求められる開発プロセスや審査内容が大きく変わります。
これらは、工場のラインで日々扱う一般工業製品とは全く異なる厳格さ、透明性、文書作成の重要性があります。
現場で役立つ「製造業的な強み」
品質管理、トレーサビリティ、工程管理といった製造現場で当たり前となっている習慣や考え方は、医療機器でも極めて重要な要素です。
特にデータの記録が重視されるため、日常的にPDCAをまわすオペレーションができる方はそのまま即戦力になります。
また、生産準備やサプライチェーン構築といったバイヤー・調達の視点も、医療向けであっても本質的には変わりません。
現場目線で考える開発のポイント
「現場の声」と真摯に向き合う
医療機器開発に成功するチームは必ず、医療現場で実際に使う医師・看護師、さらには患者の意見を徹底的に掘り下げています。
製造業ではエンドユーザー(顧客)がメーカーや設計者であることが多いですが、医療機器では「現場の課題」をどれだけ肌で感じられるかが、成功を大きく左右します。
「作りやすさ」だけでなく「使いやすさ」の徹底追求
量産やコストダウンに目が行きがちな製造業出身者は、「使いやすさ」「安全性」「メンテナンス性」への感度をさらに高める必要があります。
医療の現場は、秒単位ですべてが動き、安全が確保されていることが大前提です。
たとえば、スイッチの大きさや配置、色分け、洗浄性まで、徹底的に「現場目線」で詰める習慣が重要です。
既存技術の活用と枯れた技術のリバイバル
新しい医療機器の背景には、必ずしも最新鋭の技術ばかりがあるわけではありません。
高信頼の制御回路、耐久性抜群の部品、FA(ファクトリーオートメーション)で実績のあるソフト・ハード技術、安全系のインターロックなど「枯れた技術」が応用されることが多くあります。
逆に言えば、既存の製造業技術をどう「医療に適用する形」にアレンジできるかが鍵となります。
成功例に見る開発現場のリアル
量産技術の転用でコストダウンに貢献
ある中堅部品メーカーは工業用レーザー溶接のノウハウを活かし、眼科手術器具のコア部品量産に乗り出しました。
当初は仕様要求に苦戦しましたが、自動車部品で培ったPoka-Yoke(ポカヨケ、安全防止)対策や冗長設計、熟練技能者の教育手法を応用することで、競合より高品質かつ低コストな製品づくりを実現。
ここでは「現場改善力」が大きな武器となりました。
QMS導入で信頼性向上とバイヤー評価アップ
別の精密加工サプライヤーでは、ISO13485取得を機に社内のQMS構築を徹底しました。
新規顧客となる大手医療機器メーカーのバイヤーから「安心して委託できるパートナー」と評価を受け、その後長期取引に発展しています。
中でも、どの現場の誰が・いつ・どの作業を・どんな管理点で監視していたかまで記録するトレーサビリティの徹底は、医療業界特有の要求に直結しています。
工程自動化と標準化でヒューマンエラー防止
生産ラインの自動化(FA)を推進してきたファクトリー出身者が、医療機器組立の現場で自動ネジ締め装置やバーコードシステムを持ち込みました。
結果、組立ミスやパーツ取り違えのヒューマンエラーが激減し、現場からの「作業負担が軽くなった」「安心して次工程に回せる」という声が上がるようになりました。
失敗例に学ぶ、製造業流アプローチの落とし穴
コストミニマム志向がユーザー価値を減じた例
コスト削減に執着するあまり、使い勝手や手順の「安全マージン」を抜いてしまった事例があります。
現場では、微妙な操作違いや場所ごとの使い勝手の違いが生死を分けるケースが多く、この場合は現場からのクレームで設計の手戻りとなりました。
安易な「この部品で十分」は危険信号です。
現場・市場理解のなさが致命的エラーを生む
他の失敗事例では、製造側の論理で設計を進めたところ、臨床現場で「想定外の使い方」「複数患者連続利用」「厳しい衛生管理」といったニーズが無視されていたため、結局現場でほとんど使われず市場から消えていきました。
「製造側の常識」という狭いフレームワークでは、医療機器の真のユーザー満足には繋がりません。
過剰品質がコスト・納期リスクに直結
「医療向けだから超高品質にしないと」とスペックを盛り込んだ結果、必要以上に手間やコストがかかる設計になり、量産段階で技術者リソースが枯渇。
バイヤーからもコスト割れを指摘され、最終的に競合他社へ切り替えられたこともありました。
「目的とリスクのバランス」を見誤ると、良かれと思った品質追求がネガティブ要因にもなり得ます。
バイヤー目線で価値あるサプライヤーとは
安心できる「見える化」と「レスポンス」
医療機器メーカーのバイヤーは、長期・高額・クレーム対応の厳しさから、トレーサビリティの見える化・即応体制・柔軟な設計変更対応を重視しています。
製造業で培った工程可視化やリアルタイムな進捗共有、QCD(品質・コスト・納期)のわかりやすいレポーティング能力は大きな武器になります。
開発パートナーとしての提案力
単なる「物売り」ではなく、「他社で実現できない独自技術」「異業種で培った工夫」「現場の困りごとに合わせたカスタマイズ」などの提案力が重要視されます。
バイヤーは「いざという時に頼ることができる知見豊富な助っ人」として評価しますので、現場起点での提案や、実機デモ・プロトタイプのスピード提供に力を入れましょう。
不透明なアナログ取引文化とどう付き合うか
実際の現場では、昭和スタイルの口約束や、長年の顔見知り関係が今なお強く残っています。
この業界文化とどう付き合うかは悩ましいですが、「書面」「データ」のダブル管理、「言った」「言わない」のリスクを避けるための確認フローを徹底することで、次世代バイヤーからの信頼を獲得できます。
今後に向けて:ラテラルシンキングで新たな地平線へ
変化を恐れず、業界の「壁」を越える発想を
医療機器開発は「守り」のイメージが強い分野ですが、既存製造業技術の応用、異業種コラボ、現場体験からのボトムアップ提案、AIやIoT活用による生産現場革命など、「業界の壁」を超えたラテラルシンキングが強く求められています。
デジタル化×現場力=付加価値への道
昭和のアナログ文化に染まる業界ほど、データ活用・自動化・DX化と現場改善の融合が効きます。
工程管理のデジタル化、小型IoTセンサーによる新しいモニタリング、安全データロギングなど、既存工場で培ったノウハウを医療分野で最大化しましょう。
まとめ:既存技術を活かす、現場発イノベーション
医療機器・ヘルスケア機器開発には、一般製造業で培った品質・工程管理力、現場改善マインド、量産化・自動化のノウハウが極めて有効です。
一方で、法規制、エビデンス、現場適性という厳しい要求も正しく理解しましょう。
成功例・失敗例の両面を踏まえ、「現場の課題に即した価値提案こそが最大の競争力」であることを念頭に、昭和の知恵とDX時代の新発想を融合させて、「次の医療機器開発」を切り拓いていきましょう。
製造業界で働きながら、今後バイヤーやサプライヤーを目指す方、あるいは現場から異分野へ越境してみたい方の一助となれば幸いです。
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