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沿岸諸費用ドレージとピック料金を抑える内陸輸送の最適化

目次
はじめに:製造業現場から見る物流コストの本質
製造業における調達から生産、出荷までのサプライチェーン全体で、物流コストは常に重要な管理指標です。
特にグローバル調達が一般化した近年、沿岸部の港湾で発生する諸費用(ドレージ費用やピック料金)に頭を悩ませている工場や調達購買部門が多くあります。
一方で、内陸輸送の工夫や最適化によって、これらの諸費用を大きく圧縮できる可能性も存在します。
本記事は昭和から続くアナログな物流慣行とデジタルシフトの狭間で求められる“本当に現場に効く”内陸輸送最適化のポイントを、長年現場を歩いてきた目線から現場目線で深掘りします。
バイヤー志望やサプライヤーの方にも物流コストの裏事情をお伝えします。
ドレージ費用とピック料金の現状
ドレージ費用とは?
ドレージ費用とは、コンテナ貨物を港のターミナルから指定の倉庫や工場など、内陸の配送先までトラックで輸送する際に発生する輸送料金のことです。
大型船が港に到着した後に輸送される、いわば海上輸送と陸上輸送の“つなぎ目”部分で発生しやすいコストです。
港湾混雑や運転手不足、規制強化、燃油価格高騰、荷待ち時間の長期化などの影響もあり、ドレージ費用は年々高騰傾向にあります。
昭和期の“その日に来たトラックにお任せ”といった場当たり的慣行がいまだに残っているため、無駄が温存されやすい領域とも言えます。
ピック料金とは?
ピック料金(ピックアップ料)とは、指定されたヤードやデポで貨物やコンテナを引き取る際に追加で発生する料金です。
これもドレージ費用の一部ですが、荷主側がヤードで直接引き取りなどを要求する場合や、特定時間帯で指定がある場合にも発生します。
ここの部分をどう効率化し、コストを抑えるかはサプライヤー・バイヤー双方の課題です。
内陸輸送最適化の重要性
なぜ今、内陸輸送の最適化が注目されるのか
従来、多くの工場や商社では「物流費=海上運賃がメイン、内陸は付随コスト」と捉えがちでした。
しかし、物流現場での実コストの内訳を見ると、特に都市圏の工場や物流拠点ではドレージ費用やピック料金が全体のコストの中で相当な割合を占めていることが少なくありません。
また、荷主都合による荷待ちや不定時の到着の乱発が慢性化しており、トラック会社にとっても非効率な状態が常態化しています。
このため昨今では、「港から工場までの陸送パートをいかに効率化するか」「余計な追加諸費用を抑制するか」がサプライチェーン最適化の鍵となりつつあります。
グローバルサプライチェーンのデジタル化がもたらす変化
近年、輸送管理や在庫管理のIT化・可視化が進み、従来の「紙と電話とFAX」が主役だった体制に大きな変化が起こっています。
・複数案件を一括でトラッキングしやすくなる
・どのルートがコスト安・スピード優先に有利か迅速算出
・荷待ち・滞留の発生状況をリアルタイムで把握
この結果、旧来的な「慣習に従って運ぶ」から「最適ルート&最適運行によりコストを抑える」への変革が進んでいます。
内陸輸送の最適化施策:現場ですぐ活かせる7つのポイント
現場で即効性を発揮しやすく、結果的にドレージ費用やピック料金を抑えられる工夫を紹介します。
1. 港〜工場近辺の複数コンテナを一括引き取り
一回のトリップで2個以上のコンテナをまとめて引き取れる仕組み(ダブル・トリプルトレーラー配送等)を活用することで1本あたりの搬送コストを圧縮できます。
引き取りスケジュール調整や工場側の受入能力強化も同時に検討しましょう。
2. ピックアップ指定時間の“幅”を柔軟に設定
港湾やデポでの荷待ち(待機)による割増料金発生を防ぐために、可能な限り時間指定を緩和し、搬送業者の配車を効率化します。
どうしても時間厳守が必要な場合と、そうでない場合のメリハリをつけましょう。
3. コンソリデーション(混載便)活用で小口化対策
ロットが小さい場合や各地工場で分納が必要な場合は、複数荷主で混載便に組み込んでもらいコストの割勘を狙えます。
古くは「自社便絶対主義」でしたが、最近は混載便ネットワークの質が上がっているため、積極的に検討すべき有効策です。
4. ICタグ・GPSの活用でリアルタイム管理
昭和時代は「到着したら電話」でしたが、今やICタグ管理で港引取〜搬送〜工場荷下ろしまでリアルタイム位置管理が容易です。
遅延やトラブルを事前感知でき、無駄な追加費用(“混乱割増”)を抑えられます。
5. 港湾ごとの諸費用比較と拠点再配置検討
意外と見逃しやすいのが、同じ品物でも「どの港で引き取るか」でドレージ費用やピック料金の設定が大きく異なる点です。
距離や混雑度、港湾労働環境、自治体による規制差異によって大きなコスト差が生まれるため、年に一度は港選定ロジックの見直しも行いましょう。
中長期的には拠点再配置も検討に値します。
6. サプライヤー・バイヤー間での費用分担&情報共有
“調達先頼み”のケースが多いですが、サプライヤー側で「どこまで配送するのか、誰が費用を持つのか」を現場レベルでも明確化し、“見えないコスト”の押しつけ合いを減らします。
定期的に搬送トラブル・コスト増原因の情報を双方で開示し、都度対策を練る仕組みが重要です。
7. 週単位での運行スケジューリングと事前予約強化
突発発注を極力減らし、トラック便の事前予約枠を上手く押さえることで、割高となる緊急配送やピックアップ対応が不要になります。
SCMや生産計画との連動が成否を分けます。
アナログ慣行の課題とデジタルシフトで開く新地平線
昭和のアナログから脱却できない根本要因
なぜ今なお、内陸輸送領域はアナログ文化が根強いのでしょうか。
・FLC/LLC(貸切/小口混載)の判断が“経験頼み”
・配車や引取指示が電話と紙ベースで煩雑
・異常発生時の対応経路や連絡網が不透明
・生産・調達サイドと物流現場の部門間壁
こうした現場の“非効率の温床”が、結果的にコスト高騰を招いています。
デジタルツールとデータ活用で現場が変わる
今は配車システム、物流管理SaaS、位置情報プラットフォーム、可視化されたKPIダッシュボードなど、現場でも使いやすいツールが着実に浸透しています。
バイヤー側も、調達段階から「最適船積み・最適港・最適輸送手段」をセットで発注条件に加えることが、有力なコストダウン策です。
デジタルデータを活用し、“大手と中小が同じプラットフォームで競争できる時代”となった今、内陸輸送も「価格」だけでなく「可視化」「柔軟性」「リスク見える化」で選ぶ視点が求められます。
工場現場で内陸輸送コスト低減を実現した事例
・A社(自動車部品メーカー):港~工場の間で定期的な混載便活用を進め、年1,200万円のドレージコスト低減を達成。
・B社(家電メーカー):SCMとトラック配車システム連動化によって、ピックアップ指定時間の緩和と待機料削減で、月100万円近くのコストを削減。
・C社(化学品メーカー):港選定見直しとサプライヤーとの諸費用分担明確化により、例年比15%のコストダウンを実現。
いずれも「現場目線」「アナログ文化の見直し」「デジタル活用」がキーワードです。
バイヤー志望・サプライヤー双方が今できる3つのこと
1. 自社品目/取引エリアの“物流コスト構造”を書き出して、どの部分にドレージ費用・ピック料金の“無駄”が潜んでいないか実態を可視化する。
2. 荷主/サプライヤー問わず「なぜ今この方法か」「より安価・効率的な代替がないか」を定例会や業者ヒアリングで提案&情報アップデートしていく。
3. 最低でも年1回は、内陸輸送における「最新IT活用事例」や「規制・市場環境変化」といった外部情報を収集し、社内/関係者間の共有会や勉強会を実施する。
まとめ:内陸輸送の最適化が製造業の競争力を高める
ドレージ費用・ピック料金など、従来は“見えにくかった”内陸輸送コストの最適化は、もう待ったなしです。
アナログ文化を一つずつ見直すこと、その上でデジタルツールや業者ネットワークの力を現場で使いこなすことで、調達担当・サプライヤー・現場リーダー全員が「価格競争力」という新しい武器を手にできます。
現場目線で徹底的にコスト構造を「見える化」し、業界の最新動向にアンテナを張りながら、根強い昭和の“慣行”さえも一歩一歩アップデートしていくことが、21世紀の日本製造業発展への道だと、私は20年以上の現場経験から確信しています。
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