投稿日:2025年8月17日

梱包仕様の再設計で輸送損傷ゼロと運賃低減を両立

梱包仕様の再設計で輸送損傷ゼロと運賃低減を両立

はじめに:梱包の本質を問う

製造業の現場において、「梱包」と聞くと地味な裏方作業と捉えがちです。

しかし梱包の良し悪しは、輸送時の損傷リスクやコスト、社会的責任にまで直結します。

私自身、工場長として多くの苦い経験をしてきました。

「輸送中の破損品連絡」「納入先クレーム」「想定外の運賃値上げ」など、梱包を再設計せずに放置した場合、企業ブランドや利益を簡単に毀損する危険性があります。

今回は、梱包仕様を再設計することで、「輸送損傷ゼロ」と「運賃低減」という一見トレードオフに思える課題の同時解決に迫ります。

昭和のアナログ時代から続く悪しき慣習を打ち破り、サプライチェーン全体の競争力を高めるヒントをお届けします。

なぜ今「梱包仕様再設計」が必要なのか

1. 輸送損傷による隠れコスト

梱包破損による返品・再納入・現地補修費など、表面化しにくいコストが積み重なっています。

表向きの運賃や材料費だけでなく、「損傷で失う信用とビジネス機会」の深刻さを見逃してはいけません。

また、損傷が発生すると社内現場の負担が増え働き方改革にも逆行します。

2. 物流コストの急騰

燃料や人件費の高騰、運送キャリアの需給バランス悪化により、運賃・梱包材費が年々上昇しています。

従来型の過大梱包、非効率なパレット設計、箱形状の無駄は大きな問題です。

持続的な利益改善のためには、運賃削減と損傷防止の両立が必須です。

3. SDGs・環境規制の拡大

脱プラスチック、資材削減、リサイクル資材へのシフトなど環境負荷の低減は今やグローバルスタンダードとなっています。

コストメリットと環境対応を同時達成させる設計思想が求められる時代です。

梱包仕様見直しの具体ステップ

1. 現状分析(As-Is)

まずは現状の梱包仕様・使用資材・損傷率・運賃データを可視化します。

どうせなら最大手運送会社から「最も高いランクの梱包状態」をヒアリングしても良いでしょう。

現場ヒアリング・物流パートナーからの情報収集・損傷発生箇所の徹底分析が重要です。

梱包設計担当者・現場作業者・運送会社、全ての視点を統合しましょう。

2. コストと品質のバランス目標を設定

「損傷ゼロ」を本気で目標に据え、例えば「返品率0.1%以下or年間10件以下」など定量的目標を設けてください。

同時に「パレット1枚当たりの積載効率」「1回あたりの輸送コストKPI」も設定します。

品質・作業性・リードタイム・環境負荷・在庫保管効率を同時に俯瞰しましょう。

3. 梱包材と形状の最適化

従来の「とりあえず段ボール+緩衝材増量」から脱却します。

製品特性・用途・輸送距離・取扱状況に合わせ、箱サイズ・仕切り形状・積層方法を再設計しましょう。

・緩衝性が必要な箇所は構造材やリサイクル紙材を適用
・製品同士が干渉しない設計
・最小限かつ剛性ある外装(ダブルウォール段ボール、樹脂コンテナの活用)
・パレット積載時の隙間ゼロ化、段積み強度最大化

CADやシミュレーションツールで最適形状を設計するのも有効です。

4. 物流現場での実証実験(PoC)

小ロット・少数サンプリングで輸送テストを実施します。

工場から倉庫、倉庫から顧客納入先まで、実際のルートで耐久性や作業効率、積み付け効率を試験します。

ここで現場の声=「開梱作業が簡単」「現場が混乱しない」を最優先しましょう。

5. データ分析・フィードバックループ

テスト時の破損率・作業時間・輸送コストなど多角的にデータを集め、結果をKPIと比較します。

問題点は「現場写真」や「動画」で記録し、再設計へ即反映します。

このフィードバックの早さこそ、アナログ業界の暮れ残る課題解決に直結します。

バイヤー・サプライヤー双方から見る梱包最適化の視点

バイヤー目線:品質とトータルコストのバランスを図る

バイヤーで重視すべきは「安さ」だけでなく、「輸送商品不良率」「対応コスト」「納期遅延リスク」なども含めたトータルコストです。

また、複数サプライヤー間での梱包統一化による物流合理化も鍵となります。

取引先ごとに標準規格を推奨したり、複数品目混載可能なパレット設計に切り替えると、運賃削減に直結します。

サプライヤー目線:バイヤーの期待値を超える提案

サプライヤーは従来の「言われたままの梱包」から脱却して、「こうすれば御社コストも下がりますよ」と能動的に提案する姿勢が評価される時代です。

物流会社とのパートナーシップを活用し、「実際のドライバー負担減」「積み下ろし工数削減」「3R(リユース・リデュース・リサイクル)」など、バリューアップもアピールできるでしょう。

バイヤー視点を先回りして考えられるサプライヤーは、JIT体制やSDGs調達も勝ち抜けます。

現場目線で考える!アナログからの脱却術

1. 標準化を味方に

過去の「現場ごとバラバラの梱包仕様」を「グローバル標準サイズ・仕様」へ収斂させます。

事例:A社は生産拠点別に3種類あった段ボールサイズ・梱包方法を統一し、作業効率25%アップ・原単位15%コスト削減に成功

2. IT&自動化技術の活用

梱包手順書を動画やタブレットで標準化、AI画像診断による損傷分析、自動梱包機導入など、最新技術を積極導入しましょう。

安価なIoTセンサー・加速度計で輸送中の「揺れ」「衝撃」を可視化し、最適な緩衝構造を設計した事例も増えています。

3. 「現場の知恵」と「サプライチェーン全体最適化」の両立

多くの現場では「これまで通りで問題なかった」と言う声も根強いですが、顧客の業種・用途が変われば最適解も変わります。
 
工場から物流、営業、顧客現場の声まで「Gemba to Gemba」=現場を多層でつなぐことで視座が広がります。

輸送損傷ゼロに向けた梱包再設計の成功事例

【ケーススタディ1】産業機械部品メーカー

従来:裸同然でパレット積により部品同士が干渉、凹み・破損多数

施策:
・製品周囲にトライウォール段ボールで仕切り追加
・荷重分散のため外周に専用発泡成型輸送パーツを導入
・パレット寸法と段ボール外形サイズを1mm単位で最適設計

結果:
・破損率ゼロ、返品削減により再送・再作業費用年間1200万円減
・1パレット荷量が従来比1.3倍、運賃実質20%削減

【ケーススタディ2】電子機器サプライヤー

従来:緩衝材を詰めすぎて梱包が巨大化、空間比率50%も無駄に

施策:
・製品形状ぴったりの段ボール設計とエアピローによる緩衝
・混載対応できる外装に統一し、複数品目の同時パレット化
・顧客開梱作業の手間減も同時に考慮

結果:
・運賃15%低減、梱包材投入量30%削減
・納入先現場作業工数も15%減

まとめ:「梱包の改革」が工場とサプライチェーンの未来を変える

梱包仕様の再設計は、「輸送損傷ゼロ」と「運賃低減」を同時達成し、製造現場の負担軽減・サプライチェーン全体の競争力強化につながります。

昭和から続くアナログ業界であっても、小さな現場の気づきやデジタル技術の活用、現場の知恵を全社的に統合することで新しい地平線が開かれます。

「現場目線」と「全体最適思考」で、あなたの工場、サプライチェーンに新たな価値を創出しましょう。

梱包に悩む製造業の皆さま、商社・バイヤー・サプライヤーの皆さま、今日から1歩ずつ改革を始めてみてはいかがでしょうか。

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