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はんだ規格の過剰要求を外し手直し工数を減らすアッセンブリ設計

目次
はじめに:製造業の現場が抱える「はんだ規格過剰要求」の課題
ものづくりの現場、とりわけ電子機器や基板実装の現場では、「はんだ付け」に関するトラブルが絶えません。
多くの場合、その根底には“規格の過剰要求”があります。
顧客や設計部門から「厳しすぎる規格」を押し付けられた結果、現場は手直し・やり直し・追加の検査・余計な書類作成に追われ、本来の生産効率を大きく損なっています。
昭和時代から連綿と続く「守りすぎた品質管理精神」が、令和の現場では足かせになっているのです。
一方、グローバルな現場では「市場要求が満たされていればOK」という合理的な思想が強く、適切な規格設定と設計連携によって、無駄な手直しや工数の増大を防いでいます。
本記事では、実践現場目線から“はんだ規格の過剰要求を外すアッセンブリ設計”について深く掘り下げ、人手不足時代・コスト競争時代を生き残るための実効性の高いノウハウを解説します。
はんだ付けに苦労している現場作業者、品質管理者、調達・バイヤー職、さらには部品サプライヤーの皆さま必見です。
はんだ規格の現状:なぜ“過剰”になるのか
JIS規格、IPC基準、顧客独自基準…氾濫する多重基準の落とし穴
はんだ付けの品質規定には主にJIS、IPC-A-610、日本溶接協会規格、さらには自動車OEMの独自ガイドラインなど、さまざまな規格があります。
ところが、実際の現場では「複数の規格が同時に適用される」「グレーゾーンの吸収力がなくなっている」といった事象が発生しています。
たとえば、IPC-A-610で「OK」とされるはんだフィレットの大きさも、自社・顧客の基準ではNGになってしまうケース。
「とりあえず厳しめにしておけば安全」という心理から、設計や品質部門が追加の要求を積み重ね、どんどん基準がハードルアップしていきます。
その結果、はんだ職人でさえクリアできないような基準が現場に押し付けられ、(本来不要な)はんだの手直し作業が増大してしまうのです。
昭和型ものづくり文化の弊害~“とにかく厳重に”という思考停止
「良いものを丁寧につくる」日本的ものづくり精神自体は誇るべき伝統ですが、変化の激しい現代市場・短納期要求・人手不足時代には通用しません。
今までなら「はんだのクラックが10年後に発生したら大問題だ!」という声に従い、規格上の全項目をMAX値で設定することもありました。
しかし、こうした“工場の安心追求”は手直し工数や検査コストを増やし、肝心の「利益・納期・開発スピード」の妨げになっています。
現場で働く人が「誰のための規格か?」と自問し、「本当に市場要求か?それとも会社の保身か?」を考える習慣は希薄であり、これが不要な手間の温床となっています。
本当のゴール:顧客/市場要求に“適合”する品質設計とは
品質とコストの最適バランスが現代の強い工場
現代のグローバル製造業では「適度な品質」「必要最小限のコスト」「高い現場柔軟性」の三つを両立できるかが勝敗の分かれ目です。
顧客が最も望んでいるのは「市場での必要性能」と「想定利用期間中の安心」です。
実際いくつかの大手企業(欧米・中国系を含む)の事例を知る者として申し上げると、「ユーザーが許容できる範囲を明確にし、その範囲内で規格設定する」のがグローバルスタンダードです。
国内でも、特に新興メーカーや車載部品の一部では、「最低限これだけ守れば、寿命も信頼性も顧客満足も十分」と割り切った商品設計を取り入れています。
そのためには「はんだ過剰品質」ではなく、「何のために・どこまで必要か」を明快に定義することから始めなければなりません。
誤解されるべからず:きちんと仕様管理を行う勇気
「規格を緩める=手抜き、安売り→不良品」と恐れる向きがありますが、適正なスペック管理と、信頼できるアッセンブリ設計・製造技術があればこれは誤りです。
むしろ「なんとなく厳しい値にしておけば安心」「クレーム対策」という精神こそ、“思考停止”であり、企業の競争力を弱めてしまいます。
本当に顧客・使用環境・想定寿命から導き出した条件で設計し、製造・検査工程に明確に反映させることで、無駄な手直しや追加工数は軽減できます。
アッセンブリ設計の最適化:規格過剰を外すための具体的アプローチ
工程ごとに“なぜ”を突き詰める:設計-製造-検査のディスカッション
過剰なはんだ仕様が現場負担になる最大の要因は、「設計・品質部門」と「実際の製造現場」との断絶です。
設計時点で下記を整理することが重要です。
- 実装部材ごとの使用環境別に“本当に必要な耐久性/寿命”を割り出す
- データシートやベンダー提供値だけで流用せず、現場・品質・製造と活発なディスカッションを行う
- 量産スタート後の初期立上げで「どこが実際の足を引っ張るのか」をフィードバックし、規格値・検査項目を再検討できるループを取り入れる
この“あいまいゾーン”を無視して妄信的に厳しい規格に縛られることが、付帯工数の増大と“昭和の囚われ”に繋がります。
電子部品サプライヤーとの連携がカギ
はんだ付けが関わる製品・部品の多くは、多層基板、表面実装(SMT)、ハイブリッド実装、特殊端子など多様な条件下で生産されています。
部品サプライヤーと連携し「推奨はんだ量・ランド形状・温度プロファイル」を事前に合意形成し、「この範囲でOKなら手直し不要」というラインを引いておきましょう。
また、設計側が現場で「なぜこの規格が必要なのか」を説明できるよう、根拠データやシミュレーション・信頼性試験結果もセットで共有し、現場との共通認識を高めておくことが欠かせません。
手直し工数をここまで減らす!実践的テクニック
手直し発生点・発生理由の見極め
現場において、どのような項目ではんだ手直しが多発しているか、統計的に分析することから始めてください。
たとえば、
- フィレット高さ・長さ・幅の規格外(過度な高さ要求)
- ウェットスルーホールに対する浸透率(IPC要求を超える独自規格)
- 外観検査作業者ごとの差異・教育レベルへの依存
こうした「手直しポイント」は月次でデータ化し、現品確認や工程監査ミーティングの議題として取り上げると効果的です。
現代のアナログ現場におけるQA・自動化併用のすすめ
AIや画像認識による自動外観検査装置は、“学習済み画像から現実的な合格基準”を作り込むことができます。
初期段階では現場目線で「妥協できる外観・最低限必要な物性」を機械学習させましょう。
取引先・顧客とも合意を取り、「AI判定による合格品=市場要求を満たす製品」と公認し、手直し負担が大幅に減るケースも増えています。
これに併せて「ヒューマン部分検査」についても、教育資料や動画で判断ポイントを“可視化”し、感覚的ではなく合理的な基準設定・伝承を推進しましょう。
設計部門-現場-検査部門の三位一体によるPDCAループ
一度決まった規格を絶対視するのではなく、生産開始後も「現場で想定外の手間・歩留まり悪化」が発生した場合は、設計部門・品質部門・現場でPDCAサイクルを徹底しましょう。
具体的には、
- はんだ量・ランド形状を現場ヒアリング/逆提案でリデザインする
- 品質部門も“独自運用ルール”を避け、設計・現場と対等な協議体をつくる
こうした見直しを繰り返す企業では、手直し工数が3割・4割規模で削減され、総生産リードタイムも1日~2日短縮できた例があります。
調達購買・バイヤーの視点:規格運用の注意点と交渉ノウハウ
バイヤー/調達として部品サプライヤーと折衝する場合、“闇雲な規格厳格化”を要求すると、調達コストの上昇や納期リスクの原因となります。
必要なのは「エビデンスにもとづいた妥当な基準の合意形成」と「量産の安定維持を優先する現場目線」です。
例えば
- はんだ付け条件や検査項目は、書類ベースだけでなく現場での物理検証をセットで行う
- 小ロット・カスタム品では“可能な範囲で”標準工程に近づくよう、サプライヤーに歩み寄る
- 手直し/歩留まり悪化が発生した場合は、設計へのフィードバックループを早期に回す
このように、“バイヤーにしか見えない現場負荷”も含めた条件交渉が、調達力の真骨頂となります。
また、サプライヤー側の方は「どこまでを現場で許容し、どこからは設計(顧客側)に戻すべきか」に意見を持ち、データや現場テストで説得力ある逆提案を行いましょう。
まとめ:はんだ規格最適化が現場力と競争力を生む
はんだ規格の過剰要求を取り除くことは、単なるコストダウンではありません。
- 現場負荷の軽減=働き方改革・多様人材活用
- 全社的な生産リードタイム短縮=受注生産・即納対応
- 市場要求に応じた品質保証=無駄な過剰投入の排除
- 調達交渉力の向上=サプライヤーとの持続的パートナー関係
どれも、今求められる“強い現場力”の土台です。
昭和型の「厳格一辺倒」から脱却し、真の“最適品質”を追求したアッセンブリ設計・調達現場を目指して、積極的に現行規格・運用の見直しに取り組みましょう。
現場の知恵と、バイヤー・サプライヤーの協調的なノウハウが、必ずや日本のものづくりの新たな競争力を生み出します。
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