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航空DG申告の“Excepted/Excepted Quantities”誤用を避ける判断基準

目次
はじめに:航空DG申告と現場のリアル
航空貨物の国際輸送を手がける製造業では、危険物(DG: Dangerous Goods)の適切な申告と運搬は責務の一つです。
なかでも“Excepted Quantities”や“Excepted”の取り扱いは、その規則の「穴場」ともいえる領域で、現場で誤用が発生しやすくなっています。
本記事では、昭和から続くアナログな業務風土も織り交ぜつつ、現場の判断ミスがなぜ起こるのか、どうすれば未然に防げるのか、バイヤーとサプライヤー両方の立場から「使える」判断基準と実体験ベースの知恵を解説します。
“Excepted/Excepted Quantities”とは何か
危険物申告の基本ルール
国際航空運送協会(IATA)の危険物規則(DGR: Dangerous Goods Regulations)では、危険物の種類や数量に応じて梱包や申告の方法が厳格に定められています。
基本的には、危険物を輸送する際には「危険物申告書(Shipper’s Declaration)」や「適合したパッキング」と、ラベルやマニュフェストなどが必要です。
その中で特例的に認められている緩和措置が、“Excepted Quantities”や“Excepted”の制度です。
“Excepted Quantities”の定義
“Excepted Quantities”とは、特定の危険物(UN番号ごとに定められている)のうち、量がごくわずかであれば、通常より簡易な梱包や表示で輸送できるというルールです。
例えば、劇物や可燃性液体でも、それぞれの包装単位や総量がIATAの定める“Excepted Quantities Table”内であれば、以下のような緩和措置が適用されます。
– 危険物申告書が不要
– ラベルも簡略化
– 貨物のマニフェスト登録も不要
ただし、“Excepted”に該当する全ケースが同様の扱いとは限りません。
“Excepted”の意味合い
“Excepted”のみの表記は、さらに広義で「この規則を例外的に免除する」という意味合いです。
UNリスト表の備考欄などにEXCEPTEDと書かれていた場合、その物質について特定条件を満たせば一般ルールから外れてよい、という指針となっています。
調達現場やサプライヤー現場では、ともすれば“Excepted Quantities”と“Excepted”を混同しやすく、手続きのミスや規則違反につながりやすい部分です。
現場で誤用が多発する背景:昭和的柔軟解釈と業界動向
業界のアナログ体質と「前例踏襲」
多くの日本の製造業では、調達購買や出荷の現場は今なお「昭和的」な体質が残っています。
先輩や上司の指示を重視し、「過去そうやってきたから…」という前例踏襲主義が根強いのです。
DG申告も「去年の資料コピーでOK」「先方が“Excepted”って言ってたから…」など、細かな規則の読み替えや短縮が現場判断で行われる傾向があります。
この雰囲気が、Excepted規則の誤用リスクを高めています。
調達側と供給側のコミュニケーションギャップ
バイヤー(調達側)とサプライヤー(供給側)で、危険物に対する認識や知識レベルにも差が出やすい点は見逃せません。
バイヤーは「書類上、ExceptedになっていればOK」と判断しがちですが、サプライヤー現場は実際の作業フローや現物の量を体感で把握している場合が多く、「この量ならいける」「でも本当に大丈夫?」と不安な揺れる心理も生じます。
このスキマが「暗黙の合意」「とりあえず現状維持」の温床となり、ミスの温床となります。
“Excepted/Excepted Quantities”誤用の典型パターン
1. 梱包単位や総量の計算ミス
IATA-DGR上のExcepted Quantities基準は、1内装容器当たりの上限量、外装容器当たりの上限量、1梱包あたりの上限数量など多岐にわたります。
たとえば、
– 「1瓶(5ml)×20本=100ml」ならOKだと思いラベルを簡略化してしまったが、実は外装容器の許容重量オーバー
– 総量だけでなく、内装容器の上限値も超えてしまっていた
このように、単純な掛け算だけでは規則に合致しないことが多々あります。
2. UNリスト記載の“Excepted”備考の誤解
UNリストで“EXCEPTED”と記載されている物質でも、各項目ごとに「この場合は通常規則適用」「この場合は例外」と細かい注記がついています。
例えば、「温度条件下ではExcepted対象外」「消費者パッケージのみ例外」など、条件付き緩和である場合が多いため、備考の細かな読込みが求められます。
現場ではここを読み飛ばして、安易に「すべて例外」と解釈してしまうことがあります。
3. 書類省略によるトレーサビリティ消失
Excepted Quantitiesの場合、本来は危険物申告書やラベルが不要になるケースが多いですが、全ての記録が不要になってよいわけではありません。
輸出入時に先方税関や航空会社から照会が入ることもあり、「なぜExcepted適用を選択したのか」「梱包内容の証明は?」と追加説明を求められる場合があります。
ここで記録が残っていないと、現場が混乱し、クレームやペナルティにつながる恐れがあります。
4. 更新規則のキャッチアップ漏れ
IATAや国際法規の危険物規則は毎年のように更新され、Excepted Quantitiesの量や対象物質も変更が入ることがあります。
現場では「去年やった方法」でそのまま流用し、新ルールを追従しないケースが頻発します。
現場目線の“Excepted/Excepted Quantities”誤用を防ぐ判断基準
1. 公式マニュアルの最新情報を必ず参照
現場判断で「たしか…」や「去年と同じ…」にならないためにも、
IATA-DGR最新版、もしくは国交省や航空会社が提示する最新版マニュアルを必ず手元に置きましょう。
担当者どうしで情報共有するExcel一覧表やチェックリストに、法規改訂日などを反映・明記する仕組みを心掛けます。
2. 内装・外装容器と数量のダブルチェック
Excepted Quantitiesでは、内装1容器の最大量(例えば1mlや30g)、外装1梱包の総量、同時に詰めてよい個数や重量など、現場的には「二重三重のチェック」が必須です。
バーコード管理や現場写真で、1梱包ごとに見える化し、担当同士でクロスチェックする体制も有効です。
3. “Excepted”備考の細部を必ず確認
UNリストや法令備考文はくどいほど細かく記載されていますが、必ず確認し、「例外を認めるジャンル」(消費者用、医療用、リチウムバッテリーなど)の限定を自社流のルール表でまとめておくと良いです。
新人や調達初心者も迷わず判断できる環境づくりが、属人化とミスを防ぎます。
4. 書類や記録の“必要最低限”を残す
省力化を過度に優先すると、有事のトレーサビリティ確保ができなくなります。
「○月×日、△△品出荷、Excepted Quantities適用、責任者□□氏」など、誰がどんな判断をしたか、Excel一覧や出荷日報の一角に記録しておくことを推奨します。
5. 年次の業界研修・規則勉強会の開催
危険物関連の法規は動的です。
調達担当やバイヤー、出荷現場が一緒になってIATA-DGR情報や現場事例の勉強会を実施し、外部講師や最新事例をインプットし直す文化を根付かせましょう。
これによって「前例」よりも「新基準」に重きを置くカルチャーへシフトできます。
バイヤー・サプライヤー視点でのメリットと注意点
バイヤーがExcepted Quantitiesを使うメリット
– コスト削減(梱包・ラベル・書類手間の大幅削減)
– リードタイム短縮(審査やチェックポイントの簡略化)
– 少量サンプル・試作品・試薬の柔軟な出荷が可能
サプライヤーが注意すべきポイント
– 年度・便ごとのルール変更(出荷ごとのマーチングオーダー要確認)
– バイヤー先の現地規則や航空会社ごとの独自規則(IATAだけでなく航空実務とのすり合わせ)
– 省略した書類や過去記録のトレーサビリティ維持
両者の間で、正しい適用範囲や現場のリスクを十分に議論・情報共有することが大切です。
まとめ:現場知と合理性の掛け合わせを
航空DG申告におけるExceptedやExcepted Quantitiesは、業務効率化に役立つ一方で、知識不足や横着による誤用リスクがついて回ります。
属人的なノウハウや昭和的柔軟運用と、日々アップデートされるグローバル法規――その両者をクロスオーバーさせ、判断基準を「見える化」する組織風土づくりが何より重要です。
新しい目線やラテラルシンキングで“前例の壁”を打ち破り、正しい規則理解とチームワークで、未来志向の現場運営を目指していきましょう。
製造業に関わるすべてのバイヤーやサプライヤーが、危険物輸送のプロフェッショナルとして輝く未来を応援しています。
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